鍵

あなたの運命を握る「キーパーソン」は誰だ!?

「では○○さんが急変した場合は心肺蘇生はしますか?自然な形にしますか?」

 今日は誰しもが誰かの命運を握ることになる……というお話。

1 病院で聞かれる連絡先≒キーパーソン

 家族や知人が入院したことがある方は、医師や看護師から「患者様のことで連絡する時の連絡先を教えてください」と言われ、連絡先を記入することがあったかもしれません。

 そして連絡先は二人以上を求められ、そして最優先に誰に連絡するかも決めなければならかったかと思います。病院側としては連絡をする際に連絡先は一人ですと、その方が連絡がつかなかった場合に困ってしまうので二人以上をお願いしています。

 そして最優先に連絡する方のことは病院側は「keyperson」、「キーパーソン」として認識することになります。
 ウィキペディアでは「キーパーソン」は特定のグループ(家族、職場、学校など)で何かを決定して行動する時、意思決定などに強い影響力を持つ人物を指す……とあります。

 さて、病院側にとって「キーパーソン」はとても重要です。なぜなら「キーパーソン」には患者様に代わって、治療方針を決めていただくことになる可能性があるからです。

2 キーパーソンは責任重大?

 基本は患者様ご自身と医師が話し合って治療方針が決まります。しかし患者様ご自身が決めきれない場合や、幼い患者さんや認知症の患者さんなど現状を理解してしっかりとした意思を表せない場合などは「キーパーソン」に判断を委ねることがあります。

 例えばガンであれば治療をするのかしないのか、治療するとしたら手術なのか放射線なのか抗がん剤治療にするのか……といったことを「キーパーソン」に尋ねることがあります。

 なぜなら方針が決まらなければ、病院側も動けないのです。
 そしてさらに言えば『命の終わり方をどうするか?』を「キーパーソン」に決めてもらうことも多々あります。

3 キーパーソンを巡る一場面


 今私が働いている療養病棟という場所はいわゆる寝たきり、という患者様がほとんどです。

 認知症や脳の病気、老衰等の方が多く患者様ご自身が自分の意思をはっきり示せる方は少ないのです。自然と高齢の方が多くなり、その中で働く看護師の頭をよぎるのは「この患者様はどこまで治療・介入をするのだろうか?」です。
 高齢の患者様は「死」が近くなっています。急変(急に体調が悪くなり死の危険に陥ること)も多くなります。急変が起きた場合に心肺蘇生(心臓マッサージや人工呼吸器の装着)をするのか、それともそれも自然の生命の流れとして見守り最期を迎えていただくか……ざっくり言うとその選択をキーパーソンにして頂く事になります。

 病院は「命の終わり方を決める」ことをキーパーソンに求めるのです。
 ある患者様のご家族は「十分に生きたから(急変時)痛いことはしないでください」と言い、別の患者様のキーパーソンは知人の方で「よくわからないけど、俺は決められない。死なせるのは怖いからなるべく長生きさせてくれ」と言う。
 またある患者様は身寄りがおらず、キーパーソンは市役所の保護課の方だった。「とりあえず最期は自然な形にしてください」と言っていました。
 事前に死期が迫っていて、急変時の話を病院側からしていればまだ話はこじれないのです。

 こんなこともありました。まだぴんぴんしていた方(以下Aさんとします)が急変しました。Aさんはご自身の急変時にどこまで治療するのか・しないのかを決めていませんでした。そこで病院側が入院時に控えていた第一連絡先(病院側としてはキーパーソンしてとらえていた)甥っ子さんに連絡すると「そんな急に言われても困る。みんなと相談するからちょっと待ってて欲しい」との返答。救命できる可能性はかなり低いと医療者側は感じていたが、キーパーソンの意向が決まるまでは治療はしなくてはいけません。ほぼ終わろうとしている命に心臓マッサージをし、人工呼吸器をつけ、数種類もの点滴をし命をつなげました。

 そして甥っ子さんから「自然な形で見取って欲しい」と連絡が来たのは1時間後でした。その間、命はつながっていました。しかしAさんの心臓マッサージにより肋骨が折れ、人工呼吸器や点滴を入れるために体は血だらけでした。

 これは自然な形……でしょうか。

4 最後に 皆様に覚悟の提案と黒い戯言

 貴方の身内や友達が病気になったとき、貴方がキーパーソンになるかもしれません

 それはすなわち

 「誰かの命運を握る」ことになるかもしれない……ということは覚悟しておいた方がいいと思います。

 重ねて言いますが病院から連絡先を聞かれたら、そこには「キーパーソンは誰ですか?」という意味が含まれています。病院側がキーパソンについてもっと詳しく説明しない現状にも問題はあるのですが……。
 そしてご自身が病気になった時に誰をキーパソンにするかを考えておいてください。そしてその方に「あなたにキーパーソンを頼む」としっかり告げておいてください。

 それが悲しい命の選択を回避するひとつの手段です。
 可能なら元気なうちから、家族やご友人と「どう生きるか・どう死にたいか」と話合うことを強くオススメします。

 「死ぬことを元気のうちに話すとは不謹慎!」と怒る方もいると思います。

 ただ、その方に言いたい。「どうやって死を迎えるかを考えずに生きていく……それこそが不謹慎だ」と。
 

 キーパーソンや最期の迎え方については底が深いので、いずれまた触れたいと思います。

 今回の黒い戯言は「心臓マッサージすると高齢の方は意外とあっさり肋骨折れるよ。カルシウム大事!」というところで。
 今日もありがとうございました。

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