ひかり

美術、教育、生きることについての文章を書きます

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マガジン

  • しごとを決めるまで

    武蔵野美術大学を卒業した後の進路を決めるまでの話

  • ひかりのゆるベジレシピ

    わたしが日々作っているお料理のレシピと、それにまつわるお話を書いていきます。

最近の記事

仕事を決めるまで④「戦争を防ぐための仕事がしたい」

「しごとを決めるまで」は、山本ひかりが大学卒業後の進路を決めるまでの話を「どこで」「何を」「どんなふうに」に分けて書いていくマガジンである。 ①はこちらから。 今回は「何を」の部分です。 教員という仕事は幼少期からそばにあった。父親は高校の社会科の教員だったし、母親は元幼稚園教諭で、小学校全科の資格も持っていた。幼少期の将来の夢は、絵本作家だった。 進学するにつれ、教員の仕事を考えるようになった。 高校2年の頃に「高校2年生になったあなたへ」というような文章を、日本語科

    • 仕事を決めるまで③「作品を売って暮らすことを目指すかどうか」

      仕事を決めるまでに、「どこで」「何をして」「どんなふうに」働くかを考えた話を書いている。前回に引き続き、「何をして」の選択に迷った話である。(第一回はこちらから) 美術家として作品を売って食べていくことを目指してフリーターになる、というのは割とファイン系学生が一度は選択肢として考える進路だと思う。類に漏れず私も考えた。 大前提として、私の作品を欲しいと思ってくださる方がいらっしゃることはとてもありがたい。 でも、なぜか、私は自分の作品を所有したいと思う他人がいることが信

      • しごとを決めるまで②「何をして働くか考えて訪ねてまわった話」

        仕事を決めるまでに、「どこで」「何をして」「どんなふうに」働くかを考えた。前回は「どんなふうに」に対して、朝仕事場に行って人と仕事をして夕方帰るように働くことが自分に合っていると判断するまでを書いた。今回は「何をして」である。 (①はこちらから) どんな職種を選ぼうかと、大学にいる間に色々考えた。 舞踏の修行に出る、ヤスリを一切使わずに鉋で仕上げる木工工房に弟子入りする、人材系の営業、美術家としてフリーターをしつつ作品を売って暮らす、BtoCの生活雑貨をデザインする人になる

        • しごとを決めるまで①「勤め人になること」

          4月から、働く場所が決まった。朝仕事場に行って、他の人と一緒に仕事をして、夕方帰るような仕事である。「どこで」を決めるまでの話も、「何を」を決めるまでの話もたくさんあるのだが、「どんなふうに」働くかということを決めた理由をまずは書きたい。 就職をするというと、 「やりたいことより安定を選ぶんだね」「時間をお金で売るんだね」 というような感想を持たれることがある。有期の仕事ではあるのでそこまで安定もしないのだが。 自由の森での中学高校時代を経て、一年の浪人の末に武蔵野美術大

        仕事を決めるまで④「戦争を防ぐための仕事がしたい」

        マガジン

        • しごとを決めるまで
          4本
        • ひかりのゆるベジレシピ
          2本

        記事

          利害の一致しないあなたと

          人間の気持ちが合理的でないなんて当たり前の話で、割に合わなくても大切なものをたくさん持っている。そんな人間たちが多かれ少なかれ互いに関係を持ちながら生きているのだから、不都合は生まれる。 どんなに利害が一致しなくても、困ったね、どうしようか、と対等に対話できればいい関係だろう。自分が大切にしているものの何が大切なのか、どんな経緯でそれが大切になったか、言葉を使って解きほぐせたらいい。自分が何を恐れているのか、何に向かって愛が溢れてしまうのか、自分で理解して他者にもできるとこ

          利害の一致しないあなたと

          肉を食べない私のタンパク質計算

          最近面倒くさがってタンパク質を摂ることを怠っていた。だからかどうか知らないけれど2kg太ってしまったので、なんとかしようと思う。 まず、どれだけタンパク質を摂ることが望ましいのか調べた。 日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書によると、 私の場合の1日に必要なタンパク質量はだいたい65~100gだという。 私は、アレルギー、環境問題、思想、好みなど複合的な理由から肉を一切食べない。油も出汁も一切口に入れない。(肉を食べる人を否定したいわ

          肉を食べない私のタンパク質計算

          暑い日のシンプルししとう~ひかりのゆるベジレシピ~

          疲れた時にスーパーに立ち寄ったらししとうがあって、安くもないのに買ってしまった。 辛いししとうが食べたくて仕方のない時もある。ピーマンやパプリカも大好きだけど、元々唐辛子だったころを忘れていない種もたまには食べたい。 これがお酒にもご飯にも合う。ポイントは焼き加減。薄皮が膨れて、茶色くなる箇所が一箇所だけでなく全体に広がるくらいが私の好みだけど、もっとしゃっきりと食べたい人はもう少し早めにあげてもいいと思う。

          暑い日のシンプルししとう~ひかりのゆるベジレシピ~

          こんがり焼かれた野菜が好きなひとにはたまらないラタトゥイユ〜ひかりのゆる自炊レシピ〜

          ラタトゥイユは母の味だ。 私が一人暮らしをする前に、母は急いでいろんな料理を教えてくれた。 「これはね、塩と砂糖。あとバター。バターを入れると美味しくなるの」 あまりお料理に砂糖を使わない母がこれだけには使うので、印象的で覚えていた。 逐語的に覚えていなくても舌は覚えているもので、一人暮らしが始まってもきちんと作ることができた。だいぶ自分テイストにしているので母の作るものより油は多いし、野菜をしっかり焼くために洗い物も増える。でも、自分の好きな味を自分で作れるのはとても楽し

          こんがり焼かれた野菜が好きなひとにはたまらないラタトゥイユ〜ひかりのゆる自炊レシピ〜

          インド風根菜とパプリカのサラダ~ひかりのゆる自炊レシピ~

          私の適当すぎるありあわせレシピを書いていこうと思います。 分量は味見をしながら決めるし、材料は安かったやつか冷蔵庫にたまたまあったもの…という塩梅だけど、気が向いたら読んでもらえたら嬉しいです。 今回のキモはカルダモンだ。 カルダモンはシナモンロールとかに使われる、爽やかでアジアンな雰囲気の華やかな香りのスパイスである。 私は食べた時、急にインドの香りがしてすっごく興奮してしまった。 少量かけただけであまりにも味が変わるので、なんだか魔法みたいだった。 サラダに使ったこと

          インド風根菜とパプリカのサラダ~ひかりのゆる自炊レシピ~

          おいしくできなかった料理をおいしくできちゃう母親たちの魔法を、自分も使えるようになった話

          朝に作ったトマトチャーハンがあんまりうまくいかなかった。ケチャップとトマト缶を混ぜたのが良くなかったのか、水分量が足りなかったのか。わからないけれど、なんだかパサパサしてしまっていた。 夜家に帰ってきて冷蔵庫を開けると、1.5人前分くらいの朝に作ったチャーハンがあった。なんとかせねば。 大きなフライパンにオリーブオイルをひき、ニンニクとローズマリーを入れて熱する。いいころ加減に焼けてきたらトマト缶と塩を入れて煮込む。しかし野菜が足りないな、と今更気がついて、隣のフライパンで

          おいしくできなかった料理をおいしくできちゃう母親たちの魔法を、自分も使えるようになった話

          23になった私のこれからの話

          23歳になった。 20歳を心待ちにしていた時と違って、そこをすぎるとするりと歳をとっていく感覚である。まだまだぜんぜんガキンチョな気持ちでいるけれど、なにせ大学の最終学年になったので、ぼんやりと明るく未来を考えている。まだ30歳へのタイムリミットもあまり意識しないでいる。 軸を持て、と人は言う。色々やっててもいいけど軸もなしに色々やってるだけじゃだめだという。 わかった、と私は思う。軸は教員にしよう。大学を出たら教員になろう。どこかの非常勤講師になろう。人と関わり、今まで生

          23になった私のこれからの話

          ひねりのないヤリモクと私の呪文合戦

          ある日、男友達数人とご飯を食べていたら、二人連れの男たちに声をかけられた。あれよあれよという間に似顔絵を描かれ、 「そこのバーでおれの絵展示してるからきなよ!一杯奢るよ」 と言われた。うーん。そんなに好きな人たちでもないけど、展示と言うなら行くかという美大生の謎の義務感により男友達と一緒にバーまで行った。 行ってみると、わりと趣味のいいバーだった。壁には本が並んでいて、ただのインテリアではなく実際に店主が読んで集めたであろう美術書や色んな本が並んでいた。 展示はその反対側の

          ひねりのないヤリモクと私の呪文合戦

          2023年3月版、私の葬儀のセットリスト

          私のお葬式の後には、私のしたばかなことや面白いことを、みんなが喋って笑ってくれる飲み会をやってほしい。美味しい餃子とパスタとカレーととびきりのお酒をみんなで食べて私の好きだった音楽を聴きながら、 「ばかだねえ」 「ばかだったねえ」 「まったくひかりときたら」 そう言われるような生き方と死に方をしないとなと思う。死んだときに笑われる年齢って、いくつくらいだろうか。80くらいまでは生きたほうが悲しい涙より温かな涙を流してもらえるだろうか。 そこまで考えたところで、そこに肉体を持

          2023年3月版、私の葬儀のセットリスト

          生の知久さんをぽかんとみてきた

          知久さんの、ちくちんどん楽団の1stアルバム発売記念ライブに行った。初めて、生の演奏を聴きに行く。 晴れ豆で、ドキドキしながら階段の前売りの列に並んで、今か今かと待ち構えながら割といい席と素敵なビールを確保して臨んだ。真ん中らへんの、通路に面した席だった。知久さんのギタレレ(?)がステージにおいてあって、それをじっと見ていた。 引き戸がさりげなく開いて、うつみさんの後に知久さんが出てきた。 当たり前なのだけどあっけないくらいあっさり歩いて出てきた。見なれた緑のニット帽。Tシ

          生の知久さんをぽかんとみてきた

          屋根と壁を持つということと大人になること

          junaida展を見に行った。 彼の絵は、たくさんの家と階段が出てくることがある。 その絵の中に小さな自分になって入り込む想像をするのが面白かった。 階段を登ったり太鼓橋のような屋根を歩いたりして、結局一人になれそうな、雨風が凌げそうな屋外の場所を探して潜り込む。 気がつくと私は、想像の中でさえもけして屋内に入ろうとはしていなかった。 子供の頃、屋根と壁のある場所は大人の領分だった。 大人が所有する土地に建った大人の所有する建物なのだった。たとえ自分の領分であったとしても誰

          屋根と壁を持つということと大人になること