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一人の男がバーのオーナーになるまで【懐古録】~カフェ&バー経営の生き残り論~ #3

理想は甘美、現実は激辛

#1で軽く触れましたが、起業セミナーを受講した時のお話。
講義の一環として事業計画書をいうものを作成しました。
まぁ、ざっくり説明するとですね、どのくらい経費がかかってどのくらい売り上げがあるという概算を出すわけですね。

んで、

固定費は大体決まっておりますので、変動するのは仕入れにどのくらいかかるのか? ということ。
まぁこれも、ワタクシ酒屋ですので配達先が一か月どのくらい仕入れているのかは大体わかるため、自身の店の規模と比較して

まぁ、こんなもんだろう。

みたいな感じで大きな迷いもなくフンフンと記入していったわけです。
ここまでは問題なく筆を進めていったわけですが、少し困ったのが平日と週末の売り上げの予想。
そして、一か月どのくらい売り上げるのかというざっくりとした概算を書く欄がありました。

……はて?

とまぁ、困るのは当たり前。
自身、歓楽街での飲食店にあたって経験なんて全くございません。
酒屋とはいえ取引先で滞在するのは最も長くて5分くらい、多くの個人店に訪れたことがあるとはいえ、自身が見えてるものは上澄みの上澄みですよ。

とはいえ、

なんとなくの経験則から導き出し、ド素人でツテも何もあったもんじゃないワタクシがどのくらいお客様に訪問してもらえるのか?
うーん……ほんじゃまぁ、かなり控え目に書いておこうかな。

平日一回転、週末二回転

自身の店は営業面積4坪の極狭店舗、席数なんて片手で数えられるほどしかないため、このくらいは来店いただけるのではないかなぁと用紙に記載しましたが、今思えば

甘い! 甘すぎる!

例えて言うならコストコのティラミスより甘いです。
自身の場合はフタを開けたら来店数なんて計画の30%くらいでしたからね。
いやでもしょうがないんスよ、経験も下積みも無いのですから。
そして、ワタクシが知る狭い世界のお話になりますが、自身が関わる多くの小規模個人経営者の方々も同じようなことを言っているのを聞いたため、あながち間違いじゃないのかな? そんなことを思ってます。
加えて今現在でも

当時立てた来店計画を達成出来ておりません。

いやぁ、経営ってのは難しいものです。
とはいえ現在でも店を存続出来ているわけでして、#2でも述べた通りアルバイトと併用しておいて良かったなぁなんてことを思ってますよ。
経験の有る無しに関わらず、フタを開けりゃあ現実は開業直後の来店予想を裏切り

思った数の50%以下。

なんならもっと低い。
という心構えを持っておいた方が良いかと思います。

とどのつまり、一日いくら売り上げが無いとペイしないのか

自身が開業するにあたり、ごっそりと抜け落ちていたのがこの考え。
賢い方は「へーぇ、当たり前じゃん」なんて思われるかもしれませんが、ワタクシみたいなバカチン野郎に一般論なんざ通用しませんて。
止むにやまれず開業した割には

まぁ、ボチボチ売り上げりゃあいいんでしょ?

みたいな、これまたコストコの(以下略)くらいの甘い考えを持っておりました。
それもあり、こちらから積極的なアプローチをせず、お客さんのなすがままに営業していた結果、開業してから右肩下がりに減ってゆく運転資金、覚悟はしていたものの、こりゃマズいと色々調べたところ、とあるインターネットのイチ記事に

一か月にかかる固定費を25営業日で割って……

的なことが書いてありました。
祝日を定休日にしている店舗なら多少前後すれども平均でこのくらいなのか。
そんなことを思ったワタクシは改めて一日どのくらい純粋な利益を上げないといけないかを計算し直しました。

……なるほど。

アルバイトで補填しているのもあって今の価格設定で何とかなるけど、ちゃんとお客さんにアプローチをして儲けを出すことも考えにゃあならんな。
現実を知らないうちは開業となると己の理想が先に立つけどあくまで経営者としては

いかに店を存続して生活も出来るだけの利益を出すか

これがマスト。
多くの開業したいという夢を抱き、理想やコンセプトを熱く語る方と接してきました。
確かに、多種多様な個人店がひしめく繁華街で差別化も重要なことではありますが、大前提として色々な要素を加味しつつも目標の売り上げを叩けた、叩けなかったは別として

最低、一か月どのくらいの収益(というか純利益)が必要か

という意識が必要かと思います。
これから開業を志している方にはこの考えを常に持っておいた方が事故は少なかろうと思っておりますよ。

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