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くじらるらバスと流れ星

 南の島とはいえ季節は冬。少し寒い日が続いていました。夜明けはずっと遅くなり、夜が来るのも駆け足です。サシバの鳴き声が響いて、みんなはすっかりコートを着るように…

nyima
6か月前
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西の町へ

空を飛んで西の町へ。 西と言っても、よく考えたら今住んでいるところの方が西にある。 ただ、生まれ育った町から見たら、その町は紛れもなく西の町だ。 東の端っこで育っ…

nyima
7か月前
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私の森

亜熱帯果樹を育てる温室の周りは野菜を植えている露地の畑。 その外側に通路があって、防風樹代わりの雑木が生えている。 クチナシや月桃やテーチギやススキが無造作に生え…

nyima
4年前
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名を知る

タカサブロウという名をきいたときにまず思ったのは、「それはきっと、タカタロウの弟だろう」だった。 タカタロウとはこの地域で梅雨明け直後に現れるとてつもなく高さの…

nyima
4年前
3

金魚すくい

どこかの商店街を歩いている。車は通らないからアーケードだろうか? 両側に店が立ち並び、所狭しと品物が置かれているが不思議と雰囲気は明るい。 前を見ると道の真ん中が…

nyima
4年前
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しょうがある日

生姜の飲み物をもらった。 積極的にくれる気があったのかどうかはよくわからないが、先日うちに人が来た時にみんなで飲んで、客人が帰ってもその残りがそのまま置いてあっ…

nyima
4年前
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稲すり節

奄美大島の異色ユニット「はぁみちゃ」による稲すり節。 稲すり節 持ち手のついた2枚の石臼を使い、2人で向き合ってリズミカルに籾摺りをする際の仕事唄。 【歌詞の意味…

nyima
5年前
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草刈り唄+奄美シマ唄田の草イトゥ 草取りコラボ

奄美大島、ギターとウクレレとオカリナと色んな国の鳴り物と、奄美シマ唄がまじって、はぁみちゃ(赤土)から不思議な音楽が生えました。 奄美シマ唄 田の草イトゥ シマ唄…

nyima
5年前
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秋の宴

三角の岩山のふもとに三角のテントを張って、 サンゴで作ったかまどをふたつ。 仲間を集めて、秋の宴。 もう、秋じゃないけど、秋の宴。 大事なのはけむくじゃらのお芋。 …

nyima
5年前
3

落とし物

朝、ふと見たら、庭に星が落ちていた。 ぱっと目を引く鮮やかな黄色い星が、草の上にぽつんと落ちていた。 クリスマスも近いことだし、お空から地上をのぞき込みすぎて落…

nyima
5年前
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181128_0097

00:00 | 00:00

奄美島唄よいすら節のアレンジです。 歌詞は八月踊りの共通歌詞から。 月見れば むかし よいすら 月見れば むかし お十五夜のお月 よいすら お十五夜のお月 よいす…

nyima
5年前
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むかし馴染み

むかし、毎日のように通っていた紅茶店があった。 雪の中にたたずむ、ちいさなお店。 時価のお茶を飲み、不思議なお話のかかれたノートに目を通す。 あの頃の時間が、空気…

nyima
5年前
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風と波と

風の起こす大波にゆられてみる。 ざぱ~ん、ざぱ~ん。 遠くの人影、波の向こうに見え隠れ。 お~い、お~い! 天気は良好。海の向こうには島の影。 今日の仕事は大波を…

nyima
5年前
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うたう 踊る

今日は早めに夕飯を食べて、となりのシマへ。 土曜にはお祭りなので、唄と踊りの練習に行く。 年はとっていくよ 先は定まっていないよ 荒れた海に浮かんでいる船のように …

nyima
5年前
3

明るい夜

きのうのことだ。 日の暮れるころ、3軒先の友人の家に行ったのだが、仕事が長引いていたようでなかなか帰ってこない。 待っている間にすっかり暗くなった。 暗いは暗いの…

nyima
5年前
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雨のち曇りのち晴れ

びゅんびゅん唸る回転音に、きゃらきゃらきゃらきゃら、と高い音が散る。 黄金色の今年の実りの音。 青い青い海を黄金の粒が埋めていく。 びゅうう~ん、びゅうう~ん き…

nyima
5年前
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くじらるらバスと流れ星

くじらるらバスと流れ星

 南の島とはいえ季節は冬。少し寒い日が続いていました。夜明けはずっと遅くなり、夜が来るのも駆け足です。サシバの鳴き声が響いて、みんなはすっかりコートを着るようになっていました。
 さて、島には空飛ぶバスが運行しています。くじらるら気球バスです。この島にしかいない、とてもめずらしい「ソラクジラ」がひいてくれるのです。島内には7カ所の駅があり、島の美しい風景を空から楽しめる人気の乗り物です。冬になると

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西の町へ

空を飛んで西の町へ。
西と言っても、よく考えたら今住んでいるところの方が西にある。
ただ、生まれ育った町から見たら、その町は紛れもなく西の町だ。
東の端っこで育った私は、この町にあまり縁がない。
高校の修学旅行で来た以外には、何度か通過した程度で、意識的に自分の足で歩いたことはほぼないと言って良いだろう。

地名を見ても、駅名を見ても、どことどう繋がるのか想像がつかない。
鉄道が何種類もあるのも困

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私の森

私の森

亜熱帯果樹を育てる温室の周りは野菜を植えている露地の畑。
その外側に通路があって、防風樹代わりの雑木が生えている。
クチナシや月桃やテーチギやススキが無造作に生えている。
私の認識で「うちの畑」はそこまで。

でも、その雑木の向こう側に小さいながらも谷があって水が流れていることは何となく知っていた。
きのう、その谷に初めて降りてみた。
目の前の足元をふさぐシダを払って、はるか頭上の大木の枝から下が

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名を知る

タカサブロウという名をきいたときにまず思ったのは、「それはきっと、タカタロウの弟だろう」だった。
タカタロウとはこの地域で梅雨明け直後に現れるとてつもなく高さのある入道雲のことである。
では、タカサブロウは?
千切れ雲?それでは少し小さすぎる。千切れ雲よりはもう少し質量のある、でも、あまり高くない雲。

そんなイメージだが、タカサブロウは雲ではなく畑に生える野草だ。この汁が服につくと青くなるので染

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金魚すくい

金魚すくい

どこかの商店街を歩いている。車は通らないからアーケードだろうか?
両側に店が立ち並び、所狭しと品物が置かれているが不思議と雰囲気は明るい。
前を見ると道の真ん中が何かの出店でふさがれている。よく見ると水槽だ。深さが50cmほどもある水槽が、何段にもなって置かれている。両側に店が迫る小道の真ん中に何十という水槽があるために、人が通るにはその店と水槽の隙間に体をすべり込ませるしかない。しかし人通りはま

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しょうがある日

生姜の飲み物をもらった。

積極的にくれる気があったのかどうかはよくわからないが、先日うちに人が来た時にみんなで飲んで、客人が帰ってもその残りがそのまま置いてあった、というものだ。

たいした量もないし、ありがたくいただいてしまおう。

重陽の節句を過ぎても、ここはまだまだ暑い。畑から帰って一息ついた時に生姜の苦味と辛味が心地よかった。

蓋つきの洒落たビンに入ったその飲み物はあと少し。

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稲すり節

奄美大島の異色ユニット「はぁみちゃ」による稲すり節。

稲すり節
持ち手のついた2枚の石臼を使い、2人で向き合ってリズミカルに籾摺りをする際の仕事唄。

【歌詞の意味】
1番 今年は作物の出来が変わり稲や粟がたくさん実りました

2番 今年は倉1つ分の稲が実りました
   来年は倉2つ分の稲が実りますように

3番 頑張って稲すりをしてください、姉さんたち
頑張れば1升のご飯を
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草刈り唄+奄美シマ唄田の草イトゥ 草取りコラボ

奄美大島、ギターとウクレレとオカリナと色んな国の鳴り物と、奄美シマ唄がまじって、はぁみちゃ(赤土)から不思議な音楽が生えました。

奄美シマ唄 田の草イトゥ
シマ唄でおなじみの仕事唄イトゥ。
田の草イトゥは三味線が入ってくるより前の、アカペラで唄われる古い仕様。
田んぼの草取りの時にうたわれた唄で、唄いながら作業をすることで効率も上がったのだとか。
身内に唄える人がいない場合は、隣のシマ(集落)か
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秋の宴

三角の岩山のふもとに三角のテントを張って、
サンゴで作ったかまどをふたつ。
仲間を集めて、秋の宴。
もう、秋じゃないけど、秋の宴。

大事なのはけむくじゃらのお芋。
大事なのはふるさとの誇り。
大事なのは仲間たちとの時間。

月は半月、上弦の月。

月が山に沈んでも宴は続く。宴は続く。
星もたくさん、雲もたくさん。

唄って、笛を吹いて、瓶をたたいて、異国の音を響かせて、いつまでもいつまでも。

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落とし物

朝、ふと見たら、庭に星が落ちていた。
ぱっと目を引く鮮やかな黄色い星が、草の上にぽつんと落ちていた。

クリスマスも近いことだし、お空から地上をのぞき込みすぎて落っこちたのかもしれない。

181128_0097

yoko shibuya marika beppu ryousaku matsumoto

00:00 | 00:00

奄美島唄よいすら節のアレンジです。
歌詞は八月踊りの共通歌詞から。

月見れば むかし よいすら
月見れば むかし

お十五夜のお月 よいすら
お十五夜のお月 よいすら
神きょらさ 照りゅり すらよいすらよい
加那が門(じょ)に 立てぃば よいすら
加那が門(じょ)に 立てぃば よいすら
曇てぃまたたぼれ すらよいすらよい


2番は下の句のみ。今回創作です。
お傍(うすば)ぬ 時や よいすら

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むかし馴染み

むかし、毎日のように通っていた紅茶店があった。
雪の中にたたずむ、ちいさなお店。

時価のお茶を飲み、不思議なお話のかかれたノートに目を通す。
あの頃の時間が、空気が、好きだった唄が、そこにはまだ漂っているようだ。

南の島に来てからは、随分と足が遠のいてしまったけれど、そこへ通じる扉は、実はいつもそばにある。
それを開くかどうかは、その日の風が決めること。

懐かしい人に会うように、その扉を開こ

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風と波と

風の起こす大波にゆられてみる。
ざぱ~ん、ざぱ~ん。
遠くの人影、波の向こうに見え隠れ。

お~い、お~い!

天気は良好。海の向こうには島の影。
今日の仕事は大波を鎮めること。
一日立ち働いて、ようやく落ち着いた。

うたう 踊る

今日は早めに夕飯を食べて、となりのシマへ。
土曜にはお祭りなので、唄と踊りの練習に行く。

年はとっていくよ
先は定まっていないよ
荒れた海に浮かんでいる船のように

面影がうかぶよ
過ぎた日のことよ
子供のように声を立てて
泣いてしまいそうだよ

輪になって踊る。
輪になって踊る。

唄をうたう。
唄をうたう。

秋の祭り。

明るい夜

きのうのことだ。
日の暮れるころ、3軒先の友人の家に行ったのだが、仕事が長引いていたようでなかなか帰ってこない。
待っている間にすっかり暗くなった。

暗いは暗いのだが、昨日の夜空は不思議な感じ。
絶妙に配置された雲と、満月にはもうちょっとの、ちょい丸な月がでて、雲のはじっこに光の縁どりを作っている。

いい月夜だなあ。
どこか懐かしい。

家に帰って、夜も更けて、もう寝ようかと寝室へ歩き出したと

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雨のち曇りのち晴れ

びゅんびゅん唸る回転音に、きゃらきゃらきゃらきゃら、と高い音が散る。
黄金色の今年の実りの音。

青い青い海を黄金の粒が埋めていく。

びゅうう~ん、びゅうう~ん
きゃらきゃらきゃらきゃらきゃらきゃらきゃらきゃら

ここは龍の住まうところ。
集まった仲間と、その豊かさを祝う。