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『君と明日の約束を』 連載小説 第三十六話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します🤗
小説家を目指して小説を書いています。
よろしくお願いします🤲
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
最後までいくと文庫本一冊分くらいになりますが、1つの投稿は数分でさくっと読めるようになっているので、よければ覗いてみてください!
コメントいいね大歓迎です🌺
一つ前のお話はこちらから読めます↓

「え?」
「これ、塩と砂糖入れ間違ってるじゃない」

 晩御飯に作った親子煮の話だった。

「そんなはず……」

 口に入れる。嘘――

「かっらぃ!」

 目の前にあるのは吐き出しそうなほど辛い親子煮だった。

「最悪……」

 母親は僕の呟きに吹き出す。

「こんな間違いするの、初めてじゃない? なんか考え事でもしてた?」
「……いや」
「なんかあるんでしょ」
「なんでもないって」

 何かを期待するような目でまじまじと見てくる母親の親子煮を問答無用で奪い取り、鍋に入れて中華スープに変えていく。僕が火を調節している後ろで、母親はなぜか鼻唄を唄っていた。

 今週も、日曜日はバイトがない日だった。来週に迫った期末テストの勉強をしなければならないと思い一日中家にいたけれど、結局あまり勉強せず昨日買った本をだらだらと読むだけで一日が終わってしまった。

 学校に行くと、日織は登校してこなかった。少し気になって彼女にメッセージを送ると、土曜日家に帰ってから体調が悪くて熱が出ているらしい。

 授業が耳に入ってこないのは、苦手な教科だからだろうか。いつも見ている後ろ姿がない教室は、なんだか少しだけ色が薄れて見えた。

 授業中集中できなかった分、テスト前に取り戻そうとするくらいには真面目な人間なので、放課後、慎一の家では小説を開かず勉強をすることにした。部室でなく慎一の家なのは、最近、教頭が部活動はテスト一週間前から禁止と決めたからだった。

 それで一緒に勉強しながら慎一にわからないところを質問して期末テストの課題を進めていた。文系科目はまだなんとかなるけど、数学は相変わらずだった。
 また田内に色々言われるんだろうな、と思った。
 
 二日後、彼女が登校してきた。テスト前一週間に入っているのに学校を休んでしまって勉強は大丈夫なのか心配していたけれど、杞憂だった。彼女はいつも通り寝ていたから。
 これなら学校を休んでいなかったとしても大して変わらないだろう。

 金曜日の放課後、部活は禁止されているにも関わらず彼女が部室の印刷機を使いたいと言ってきた。彼女は別段いつもと変わらない様子だった。
 だから僕も普通に応える。

「テスト前だけど?」

ーー第三十七話

【2019年】青春小説、恋愛小説

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