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すべてが詩からはじまる国

むかしむかしよりもさらにむかし
その国は2度滅びました

1度目は抱えきれないほどの大きな火によって
2度目は愛を見失った言葉の波によって

その国の人々は
幸せに暮らしたいと願いながら火と言葉を使っていましたが
いつの間にか火と言葉の強大な力に飲み込まれてしまったのです


絶望の中に残された人々は
1本の大きなオーク樹のもとに身を寄せ合い
絶え間なく続いた渇きと寒さを癒しながら
心の奥底にわずかに残った小さな光に願いを託し
もう一度幸せに生きることを誓いました

その時、一篇の詩が生まれました

もう決して自らの愛を見失わないように
そして余すことなく愛を示せるように

教訓と希望を込めたその詩は
祈りとともに風に乗り
その国のすみずみに広く伝わり
残された人々の新たな光として迎えられ
3度目の国づくりの礎となったのです

 

花が咲かなくなった渇いた大地は
ミツバチが歌う純粋なる緑へ

魚が見えなくなった腐った海は
クジラが踊る安らかな青へ

鳥が飛べなくなった虚ろな空は
ツバメが渡る優しい紅へ

2度滅んだその国は
かつて存在した極彩色を少しずつ取り戻し
季節の香りと実りの潤いを
誰しもが楽しむことができる国へと生まれ変わり
ようやく自由で平和な暮らしができるようになりました


それから長い長い年月がたった今でも
その国の人々は
『はじまりの詩』を心に置き
愛から生み 愛に還し
毎日を楽しく幸せに暮らしているそうです

おしまい

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