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ソン・ウォンピョンさんの長編3作目は、大人の恋愛小説でした。

2020年に出版される作品に現実と世の中の未曾有の非常事態を盛り込むかどうかについて最後まで苦しんだそうです。悩んだ末、作品にマスクを書けないことにしたそうです。元々設定していなかったことだから後からマスクを加えても街中の銅像にマスクをかけるのと同じことになりそうだからやめたんだそうです。この表現の仕方、すごくわかりやすくてすごくスキ。

「アーモンド」からの「三十の反撃」からの「プリズム」。
すべて邦訳は、矢島暁子さん。「アーモンド」も「三十の反撃」も本屋大賞翻訳小説部門第1位を受賞しています。だからなのかソン・ウォンピョンさんらしさがしっかりと映し出された韓国小説の代表作だと感じています。「アーモンド」に引き続き第2弾の「三十の反撃」も韓国文学の傑作とも言われています。

令和4年7月20日に刊行された「プリズム」251ページの韓国小説を2時間一気読み。その感想をまとめました。

過去のキズや
闇を抱えた4人の男女が
人との出会いを通して自分を見つめ直し
成長してゆく姿を繊細に描いた、大人のための恋愛小説、プリズム。

ソン・ウォンピョンさんは
「普通の恋愛小説とは違うものにしたかった。
ナイーブな失敗を重ねて
迷いながら成長していこうとする不安な若さを描きたかった」んだと。

251ページで構成されている、「プリズム」。

読み終わるまでに濃厚な2時間を過ごすことになるとは・・・。
読み進めていくうちに、次々とページをめくる速度が速まっているような感覚。
人の存在そのものへの問いかけを描いた「アーモンド」は267ページ、どんな大人になるかの問いかけを描いた「三十の反撃」は298ページで構成され日本の小説よりやや長めで文章の表現や情景に慣れずゆっくりと立ち止まりながら読み進めていきました。それでも物語に吸い込まれる・引き込まれる感覚を感じながら読むことができたので、夜寝る前の読書timeも日中の読書timeも家事の合間に読む時間を確保するほどハマっていきました。

「プリズム」の感想

✤人々のささやかな日常として淡々と流れていく場面が心地よく感じました。

✤作品全体の空気感がやわらかく、それでいて現実感がありました。

✤あっちと知り合い、こっちとケンカし、あの人と出会い、この人と別れ、いろいろ忙しい。人のうつろう感情と変わりゆく季節の様子がとても繊細に描かれて言います。

✤何気ない普通の暮らしに「愛」があり、その喜びと苦しみを描いた作品になっています。

ソン・ウォンピョンさんのあとがきより

「世の中は怪しくて危険だがもっとひどい時代はいつだってすでに存在し、人類はその時間を全て乗り越えてきた。だから愛についてだけは心を惜しまないようにしよう。自分自身にも他人にも、そしてこの世の中に対しても。誰が何と言おうと、今は人を愛するのにまたとない絶好の時だ。そう信じている。」

この時代を力強く生きる前向きさと「愛」を軸とした考え方に勇気をもらいました。


2020年の秋に韓国で出版された「プリズム」
矢島暁子さんによって邦訳され2022年の7月に日本で販売されました。いち早く読みたくて8月に購入した「プリズム」
夏に読んだらこんな感じで、秋になったらどんな風に感じて冬にはどう感じるのか。
季節によって感じ方の違いを味わうのも、楽しみ方のひとつとなりそうです。




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