ラストダンスは映画館で
はじめてその映画館に足を踏み入れたのは、京都に来て1年目、春の終わりだった。
あの春、わたしは京都の大学に入学したばかりだった。満開の桜は美しく、胸の高鳴りはおさまることなく。歩けば寺社仏閣に当たるこの街で、そこに咲く桜たちは、幻想的で切なく、京都の夜によく似合っていた。
春の訪れは、恋の訪れでもある。入学早々、わたしには気になる男の子ができた。映画サークルで出会った、同じ1年生とは思えない大人びた彼。有名カフェで働く彼は、キラキラして爽やかで、まるで"春"みたいなひとだ