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2022年、映画ベスト10【外国映画編】 

あけましておめでとうございます。
2022年も映画をたくさん観ましたがそこからベスト10を年末に決めました。
(毎年、年末にベスト10発表会してます)

いつも外国映画と日本映画に分けてそれぞれ出してますので、まずは外国映画編からいってみたいと思います!


10位 『コーダ あいのうた』

これはシンプルにいい映画でした。
重めのテーマを扱っているけどすごくポップにアップテンポなノリで作られているのでエンタメとして楽しくて、かつしっかりと考えさせられる作品となってます。

家族の中で唯一耳の聴こえるコーダとして過ごす少女ルビーが主人公なんですが、彼女は家族と外部との通訳として重要な役割があるためあまり自由はありません。
でも大好きな家族のために自己犠牲を受け入れています。

そんな彼女は学校で歌の才能を認められて、やがて自身も音楽の魅力に目覚めていきます。
音楽学校に行きたい、でも大事な家族はどうするのか、彼女は悩み決断します。

よりによって音楽というのが耳の聴こえない家族になかなか理解してもらえないもの。
それが後半のコンサートのシーンですごくよく表現されてて、泣きます。

この作品はリメイクで元のフランス映画『エール』も演出的にはほぼ同じなのですが、本作のアメリカ版の方がより音楽に彩られていて、かつ往年のアメリカの楽曲がふんだんに使われているので知ってる曲が多くてアガります。

動画配信でも観られます。



9位 『トップガン マーヴェリック』

さあ、きました! 昨年の興行収入134億円以上を叩き出し堂々の洋画ナンバーワンとなった渾身の一作。
いやー、良かった。良すぎました。
デンジャーゾーンの曲がかかるところなんか鳥肌モノです。

前作ともストーリー性がしっかりリンクしてて、病気のヴァル・キルマーを口説き落としアイスマンとして登場させたり、ファンの期待に応えまくります。

本作で重要なキャラクターであるルースターを演じたマイルズ・テラーはあの『セッション』で鬼教師のJ・K・シモンズにめっちゃいじめられてたあの彼です。
マッチョに仕上げてきててさすがです。

そしてコロナ禍での配信等を我慢して劇場公開にこだわったトムは大正解でした!
やっぱり映画館がどう考えてもサイコーな一作です。

まだ映画館でやってますので未見の方はぜひ。

https://filmarks.com/movies/75103



8位 『アフター・ヤン』

いやー、しみじみ良かった。
コゴナダ監督は前作の『コロンバス』も好きだったんですが、本作も良かったです。

夫婦がアジア系の養女を迎えたことで、アジア系のAIロボットのヤンを中古で購入するんですが、ある日そのヤンが動かなくなってしまう。
ヤンを修理に出す過程でヤンに残されていた過去の映像が蘇り、いろいろなものが見えてきます。
もはや家族の一員であったヤンを失ってしまった喪失感、記録と記憶、それらを静かながら鮮やかに描いてみせたコゴナダ監督はもうすごい!

コゴナダ監督は小津安二郎を敬愛していて、その作風にはとても影響を受けていると思います。何とこの風変わりな名前もそこに由来があったりします。
作品についてや、名前の由来も以前にnoteで書いています。

レンタルまだ出てないっぽいですが、動画配信でもそのうちやると思います。



7位 『リコリス・ピザ』

みんな大好き!ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)の新作です。
もうPTAの新作というだけで前から楽しみでした。
そして期待に応える内容でもう大満足。

PTA作品の中では初期の『ブギーナイツ』くらいポップで軽やかな作風のボーイ・ミーツ・ガール。
こんなにも真っ直ぐに若い男女のラブストーリーを描くとは。
1970年代のアメリカ、サンフェルナンド・バレーを舞台に当時の音楽に彩られた世界がいい。

主演の二人が新人なんですが、PTA作品の常連で盟友であったフィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマン、それに三姉妹ユニット・ハイムの三女アラナ・ハイム。ハイムとは家族ぐるみの付き合いだそうでどちらも幼少期から知っている二人を主演に大抜擢。
そして脇を固めるのが、ブラッドリー・クーパーやショーン・ペンにトム・ウェイツというすごい面々。

あとやっぱり音楽がすごい良かったです。

年下の男の子が、ちょっと背伸びして年上の女の子を口説いたりして、真っ直ぐな感じと不器用な感じのハーモニーが絶妙で良かった。
映画好きが推しなPTA作品とか言われるとちょっと敬遠する方もいるかもですが、普通にキュンとするやつです笑

レンタルも始まってます。(見放題はまだない)



6位 『わたしは最悪。』

ヨアヒム・トリアーの新作ですが、いやー良かった。
前作『テルマ』がスリラーだったのですが、一転『フランシス・ハ』のようなこじらせながらも自分探しをしてゆく物語。
これは女性の共感度はかなり高めじゃないでしょうか。

移り気な主人公のユリアは、あれやこれや自分のやりたいことに手をつけては方向性が定まらない。優秀だし自分のやりたい選択ができてはいるんだけどどこか満たされない現代女性を等身大にとてもよく描けてる。

それにタバコを間接的に吸ってみたり、世界が止まってたり、とても映画的なシーンが印象的に使われていて見せ方もとても良かった。

北欧ノルウェーからの良作です。
オスロの街並みもとてもキレイでいつか行ってみたい。
もうすぐレンタル始まります。



5位 『ナワリヌイ』

これは衝撃的でした。やっぱりドキュメンタリーってすごい!って思わせてくれる今観るべき作品です。

プーチンの圧倒的独裁かと思っていたロシアにおいて反プーチンのリーダーが存在していて”カリスマ”として人気を博していた。その男こそナワリヌイで、ある日毒を盛られ昏睡状態に。家族の計らいで国内の病院ではなくドイツの病院へ緊急搬送され、奇跡的に一命を取り留めた。

ここまででも映画みたいな話なのに、ここからがすごい。なんとナワリヌイは自分を殺そうとした犯人探しを自ら始めるんです。
そして専門家の協力を得て、徐々に犯人に迫っていくんです。
遂には実行犯に直接ひっかけの電話をかけて証言まで取ってしまう!
もうこんなウルトラミラクルな展開見たことないです。
これが事実というのがすごいし、よく映像に撮っていたなという渾身のドキュメンタリー作品です。

現在は獄中にいるナワリヌイですが、現在進行形でどうなるか注目で、この作品を観ているかどうかでニュースの重みが俄然違ってきますので、マストで知っておきたい内容です。

以前にnoteも書いてます。

動画配信でも観れるようになってます。



4位 『アザー・ミュージック』

この作品も良かった〜
もう最高でしたね。
ニューヨークで21年間営業を続け、2016年に惜しまれながら閉店した伝説のレコードショップ「アザー・ミュージック」の軌跡を辿ったドキュメンタリー作品です。

インディーの音楽を主に扱い、タワーレコードの向かいに立地し、タワーレコードのようなヒットチャートではなく、自分たちが取り扱っているのは「アザー・ミュージック」だということから店名がついたのだとか。

オノ・ヨーコからヴァンパイア・ウィークエンドまでが狭い店内でインストアライブを行なったりしていて、俳優のベニチオ・デル・トロなんかもコメントしていたり、いかにこの店が音楽ファンや文化人たちに愛されていたかも伝わってきます。

そして面白いのが個性的な店員たち!
お客さんに聞かれたものじゃなくて自分のおすすめを出してきたり、音楽論でお客さんとケンカし出したり、もうとんでもない個性派ぞろい。
こんな店員に接客されたら普通はすごい面倒くさそうだけど、このお店だったらなんかそんな体験もしてみたい。そんな風に思わせてくれる魅力的なレコードショップ。

チェーン店よりも個性的な個人店が好きな人にはきっと刺さるはず。

配給がグッチーズ・フリースクールという個人配給のとこなので、レンタルや動画配信になるかは未定です。
なかなか配給まではチェックしないと思いますが、大手ではなくて個人配給の場合は上映権のみの場合もあるので、映画館の上映が終わるといつ観れるのか分かりませんので、観れる時に観ておいた方がいいです。
少し遅れて上映する弍番館のチェックがおすすめです。



3位 『スワンソング』

これは全然マークしてなかったのに面白かったやつです。
いやー良かった。危うく見逃すとこでした。
ちょっとでもいい評判を聞いたら観ておくものですね。

引退したヘアメイクドレッサーが、かつてケンカ別れした親友の葬式での死に化粧を家族から依頼されて、老人ホームを抜け出して彼女の元に向かうというロードムービーです。

まさかこんなおじいちゃんのロードムービーに感動するとは。
しかも主役は、キワモノ俳優として数々の風変わりな作品ばかりに出演してきた怪優ウド・キア。
知ってる限り初主演なんじゃないだろうか。

そしてこのウド・キアがいい!
ゲイのおじいちゃんをとても好演していて、品があって所作が良くって、プライドの高い洒落者という役柄をもうその人にしか見えないというハマりっぷりで、ウド・キアって演技上手いんだって今更思いました笑
いつも変態な殺人者とかばかりだったものだから、早く言ってよ〜というくらい大好きになってしまいました。

最初はこのおじいちゃん誰なのか?って始まりなんですが、旅をするごとに徐々にこの人の背景や過去が見えてくる構成となっていて、いろいろ分かってきて最後にはホロリと涙させられてしまう。

笑って、泣けて、元気をもらえる良作です。

レンタルはまだ先のようです。



2位 『みんなのヴァカンス』

これは好きだった〜。個人的に大好きだった作品。
この時代に往年のヴァカンス映画を堂々とやってみせて、それがすごくハマってて清々しくて良かった。
フランス映画のお家芸にして専売特許であるヴァカンスという題材で久しぶりにこんな雰囲気のある作品に出会いました。

南仏の穏やかな自然を背景に、ひと夏の男女の恋愛物語。
ギヨーム・ブラックらしい自然光っぽいやさしい色づかいの映像と南仏の景色がいい。

ヌーヴェルヴァーグのロメールっぽい会話による恋愛劇もいいんだけど、主人公の二人組が黒人だったり、オタクっぽいイケてない側のキャラが中心にいたり多様性を感じるのが現代っぽい。

家族と南仏にヴァカンス行った彼女に、サプライズで登場しようと追っかける彼氏。SNSで女の子のふりして車持ちの男を引っ掛けて(これが押しの弱いオタク男子で)南仏まで同行させて、いざ登場するも、な展開。
良かれと思ってやることが裏目に出ることってありますが、もうそんな予感しかしてないところも面白い笑

そんなこんなでいろいろ出会いもあってな群像劇で、そういうフランス映画っぽい展開がいいんです。

パンフレットも薄い黄色一色で、なんの文字も絵柄もない長方形の冊子となっていて、表も裏も無地というかつてない斬新なデザインとなってました。
パンフレットに関しては昔からかなり買ってますがこんなの見たことないです。

ギヨーム・ブラックの作品もレンタルや動画配信がなかったりしますので、こちらも劇場でやってる時があれば迷わず鑑賞されることをおすすめします。




1位 『カモン カモン』

そして、堂々の1位は、『カモン カモン』です。
これはもう文句なしの1位です。

風変わりな甥っ子とひと時を過ごすことで心を通わせてゆく姿を描くロードムービーなのですが、ロサンゼルス、デトロイト、ニューヨーク、ニューオリンズの都市をモノクロの美しい映像で綴っていてこの映像だけでもおかわりしたくなるくらい、美しくていいんです。

役者も良くって、ホアキン・フェニックスは前作『ジョーカー』であんなに人を殺しまくってたのに笑、本作では虫も殺せないような優しい男を演じています。もう雰囲気でそれと分からせるほどすごい。
それに、甥っ子のウディ・ノーマンくん。彼もかなり良かった。あのホアキンを相手に無邪気な少年を自然体で体現していました。

この二人の心温まる交流を見事に表現したマイク・ミルズもさすがです。
いつも身近な家族を描いてきて、父を描いた『人生はビギナーズ』や、母を描いた『20センチュリー・ウーマン』など傑作が多いんですが、本作では自分に子供が生まれた時に、なんだか自分に子供がいることが信じれない感覚になったそうで、そこから生まれた企画らしいです。

でもこの甥っ子と叔父が、旅しながら徐々に心を通わせて父と息子のようになっていく姿は、すごく微笑ましいし、不器用ながらこうやって人は父になっていくんだっていうマイク・ミルズの思いが詰まっているんだって感じました。

特に何か大事件が起こるわけでもないのですが、それをマイク・ミルズの優しい眼差しで映し出した二人の心の交流が何とも心地よくて癒されて自然と涙が出てきます。

以前に『パリ13区』との共通点という切り口でnote書いてます。

言葉で説明されるよりも、観て心で感じるタイプの作品です。
できれば雑音のない映画館で鑑賞できるのが一番なのですが、レンタルも始まってますので、まだ未見の方は必見の一作ですのでぜひ。



最後に

ということで2022年の外国映画ベストは『カモン カモン』でした。
これはもう観た時に「キタな!」と思ったくらい良かったです。
もうマイク・ミルズのベストかなと。

マーヴェリックもド直球のエンタメをやり切ってくれて爽快でした。
例年は制作国がバラけることが多いんですが、今年は全体的にアメリカ映画が多く入ってきたのも特徴でした。

あとはドキュメンタリー。
年々ランクインする本数が増えてきて本当に良作が増えてます。
今年もなかなかな傑作ぞろいでした。

こんな調子で日本映画編もお届けしたいと思います。


※追加
日本映画編こちらです


最後までありがとうございます。

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