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こんな学校あったらいいな 4年3組 田中さやか(超短編小説)

こんな学校あったらいいな

                         4年3組 田中 さやか

私は今の学校が好きです。だから、「こんな学校あったらいいな」という題名の作文が宿題になったときは、すごく悩みました。「今の学校がとても好きです。」で1行で終わったら、きっと怒られるし、お掃除ロボットがいてくれたり、給食が豪華になったりは、それはそれで楽しいけど、「あったらいい」理想の学校とはなんか違う気がしました。

それに、私はもう4年生です。夢のようなアイデアを思いついても、卒業までに間に合うかどうかわからないし、ほとんど関係ないし、とも思いました。

だから、本当に何を書いたらいいかわからなくて、今年入学した弟の考えを参考にしようと思いました。でも、階段に滑り台がついていたらいいとか、先生が仮面ライダーゼロだったらいいとか、全然いいと思えるアイデアを出してくれません。

そんなときにパパがヒントをくれました。

「さやかは、本当に学校が好きなんだね。それなら長所を伸ばすアイデアを考えてみたらどうかな。」
「もちろん、さやかの在学中にそれが叶うかどうかはわからない。でも、さやかがお母さんになったとき、そのアイデアが実現していたら、それはそれで嬉しいことじゃないか。」

それを聞いていたママもアイデアを出してくれました。
「それなら、学校からの連絡事項が面倒なのよね。さやかがプリント忘れてくることもあるし、明彦の連絡と間違えちゃうこともあるし。あとPTAとかの連絡もね。もっと楽にならないものかしら。」

そうか。学校に不満を持っているのは、通っている子供だけじゃないんだ、と思いました。ママが不満を持っているように、先生方にも不満があるに違いない、と思いました。児童が提出物を忘れない仕組みがあれば、先生方にとっても便利なはず、と思いました。

アニメや映画に登場するような、未来っぽくロボットが働いている学校でなくても、いま学校に関わっているみんなの小さな不満を、ひとつでも解決できたら、長所を少しでも伸ばすことができたら、それだけでとてもいい学校になるのでないかと、そんな気がしてきました。

将来、私の娘(息子かもしれないけど)にこの仕組みは、お母さんたちが子供の頃にみんなで提案したんだよ、と自慢できるかもしれない。そう考えると、ちょっとほっぺがにやけてきました。

そこで、パパとママのアドバイスをもとに、2つのアイデアを考えました。

ひとつめのアイデアから書いていきます。

ママがいうように、提出物や連絡事項がたくさんあって困っている父兄、先生方は大勢いらっしゃるのではないかと思います。うちは2人兄弟ですが、もっと兄弟の多い家もあると思います。

そこで、「コンピュータをうまく使った連絡事項などを共有する仕組み」があれば、みんなもっと楽ができるのではないか、と思いました。

連絡事項の内容は、授業参観日の予定や健康診断のような多くの児童が関わるものから初めていき、将来的には児童ひとりひとりの連絡帳の役目を果たせるまでに発展できればいいな、と思います。

子供の立場では嫌だけど、何年何組にはこんな宿題がでていますとか、先日のテストを今日返却していますといった内容も、連絡事項に含めていいと思います。でも、そこでテストの点数や宿題の出来栄えまでは報告しないで欲しいです。

その理由のひとつは、先生方と父兄間で子供の情報を筒抜けにしてしまうと、私たち子供が信頼されていないような気がするからです。そしてもうひとつ、テストの点数のような大切なことは、きちんと自分で報告するべきもの、だと思うからです。

きっとこのような仕組みを考える偉い人たちは、あれもこれもなんでもできるように考えてくださると思います。でも、仕組みを使って知るよりも、直接言うこと、聞くことが大切なものもあると思います。

このアイデアは、私の作文だけで終わってしまうかもしれません。でも、もし本当に検討されることがあれば、「大切なことは直接言い合える」仕組みにして欲しいです。

もうひとつ考えた「こんな学校があったらいいな」は、みんなが毎日楽しく過ごせる学校です。たまに、ちょっとした行き違いで誰かとケンカになりそうなこともあります。でも、そのようなことは本当に少しだけで、私は楽しく過ごしています。

だけど、他のクラスや他の学年のことまではわかりません。また、よその学校、他の県の学校では、もしかして辛い想いで過ごしている子供がいるかもしれません。そのような子供を一人ずつ、時間はかかっても減らしていくことができれば、どこの学校でも、私のクラスみたいに楽しくなると思います。

そこで、私が考えた提案です。

学校の大きさによるけど、ひとクラスには数班あるのではと思います。終わりの会のときに、班ごとで話し合い、ほかの班で今日頑張ってた人、活躍した人、格好よかった人を1人ずつ発表してみてはどうでしょうか。5班あれば、かぶらなければ5人の子供が今日のヒーロー、ヒロインです。みんなで拍手して賞賛します。それだけです。

嫌なところ、悪いところが目につくといじめたり、先生に言いつけたりしたくなります。クラスがそんな雰囲気だと、悪いところを探し合うくせがついてしまいます。
そうならないように、いいところ、よかったところを探し合う、見つけ合うクラスになれば、明るく楽しいクラスに、それが広がれば楽しい学校になるのではないでしょうか。

褒められた子供は明日も頑張ろうと、きっと思ってくれます。褒めてくれた人を褒め返してみたくなるのでないかと思います。今つまらない思いをしている子供も、誰かにいいところを発見してもらえば、学校が楽しくなってくると思います。

誰にでも短所はありますが、長所もあります。長所を見つけ合う学校。そんな学校があったらいいな、と本当に思います。

以上が、私が考えた「こんな学校があったらいいな」です。コンピュータとかはわかりませんが、いいところを見つけ合うのは、今すぐにでも始められることだと思います。いいとこ探しも、最初は子供同士から初めて、そのうち先生方や父兄にまで広げていくのも、楽しいことかもしれません。

お互いが認め合える、尊敬しあえる、そんな学校になってほしいなと思います。

#こんな学校あったらいいな

作:ウールーズ(heureuse) PN/拝島 祐子

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