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5. 下手に話すが勝ち

ネイティブの人たちが話している英語を聞き取れるようになりたい!」と思っていらっしゃる方は多いと思います。

その為に、ナチュラルスピードを聞き取る練習を、繰り返していらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

勿論、ネイティブの人たちが普通に話している言葉を全て聞き取れれば、それに越したことはないのですが、日本人にも、早口の人もいれば、もごもごとはっきり話さない人もいるように、英語を母国語とする人たちにも、聞き取り難い話し方をする人がたくさんいます。
そんな中で、ネイティブの人たちが普通に話す英語を、普段、英語環境にいない方が聞き取ることは、かなり難しいものです。

相手の英語のスピードについていけない、そんな時の為に、「もう少しゆっくり話して下さい」という英語のフレーズを覚えている方も多いのではないでしょうか。

質問を一つだけする時などには、この「ゆっくり話して下さい」の一言も効果的なのですが、会話となると、直ぐに相手が普通のスピードに戻ってしまったりします。
「ゆっくり話して下さい」を何度も繰り返して言うのも気がひけるからと、相手の話すスピードが速すぎるのに、そのままにしてしまって、結局、相手の言っていることがよく分からなかったという状況に陥ってしまったことはありませんか?

こんな時に効果的なのが、「わざと下手に話す」方法です。

「えっ?」と思ってしまうこの方法、意外に”使え”ます

要は、強く打てば、強いボールが返ってくるテニスの壁打ちと同じ。言葉も同じで、上手な英語を話せば、上手な英語が返ってきてしまいます

想像してみて下さい。たどたどしい日本語で、「○○エ・キ、ド・コォ~デ・ス・カァ~?」と聞かれた時と、「ちょっとすみません、○○駅はどこにあるか教えていただけますでしょうか」と流暢な日本語で聞かれた場合、あなたならどう答えますか
たどたどしい日本語で聞かれた場合は、ゆっくりと分かり易い日本語で、身振り手振りも加えて、駅の場所を説明するのではないでしょうか。逆に、とても流暢な日本語で聞かれた場合は、ゆっくりとした日本語で説明するのは失礼になるのではと、普段と変わらない日本語で説明するのではないでしょうか。

大学時代に、第二外国語でフランス語を履修していた私は、ヨーロッパ旅行に行った際、パリで、練習しておいたフランス語を使ってみたものの、相手の流れるようなフランス語の返事がさっぱり分からず、結局、英語で聞きなおしたことがありました。

また、英語に慣れた今でも、電話などで相手が早口の場合は、わざと英語を下手に話すようにしています。そうすると、相手は自然にゆっくり話してくれるようになります。
相手の表情が見えない電話での会話は、母国語でも誤解を招くことがあるかと思います。母国語でない言葉を使って電話で会話をする場合は、尚更誤解を招き易いもの。上手に話そう、流暢な会話にしようとすると、後から困ったことになってしまうこともあります。 (※追記:今はスマホで文字によるコミュニケーションが出来るので、電話で英語を話す人は少ないかも知れませんが…。)
海外で生活したことのある方なら、少なくとも一度や二度、伝言を頼まれたものの、内容を聞き間違えてしまった…という経験があるのではないでしょうか。下手に話せば、相手は自然に伝言の内容を簡単なものにしてくれたり、ゆっくりと分かり易く話してくれたりと、聞き間違えを防ぐことが出来ます。

経験から学んだことですが、分からない時に、ゆっくり話して下さいと頼んでも、会話の流れの中で、自然に速度は上がります。が、こちらが下手に話し続ければ、相手はいつまでもゆっくりと話してくれるようです。

ただ、仕事上で英語を使う場合に、あまり下手に話すのは…という方もいらっしゃるかと思います。

私も、仕事上では、あまり下手に英語を話すと能力を疑われる心配があるので、普通に話した後、「先ほどの電話での会話の書面による確認」という形で、いつも行っている当たり前のことの様に、ファックスやメールでフォローを入れて、誤解の無いようにしています。もし、自分が理解している内容に誤りがあれば、ここで、相手に確認してもらうことが出来ます。
逆に、先にファックスやメールで概要を伝えた後、電話をすることもあります。

それ以外に、初対面のビジネスの相手には、私は日本人で、英語は私の母国語では無いので、私の英語に分かり難い点などがあれば、遠慮なく言って下さいと前置きする方法を取ることもあります。意外に皆さん、好意的に受け止めて下さって、英語での会話ややり取りの中に、誤解が無いよう、気遣って下さるようです。

時と場合にもよると思いますが、「私の日本語は完璧です」と、とにかく上手に日本語を話そうとする人を相手にビジネスをするのと、「自分の日本語はまだまだ完璧では無いので、分かり難いところがあればおっしゃって下さい」と言う人を相手にビジネスをするのとでは、後者の方が、なんとなく好感を持てたりすると思いませんか。

英語も日本語も言葉です。英語を特別なものだと思わず、逆の立場になった時を考えてみると、少し、肩の力を抜いて英語を使うことが出来るのではないかと思います。

上手に話せば上手な英語、下手に話せばそれに見合う英語が返ってくること。機会があれば、実際に試してみて下さい。

今回の技は:

「相手にゆっくり話してもらいたい時は、わざと下手に話しましょう!」



※この記事は、2003年に発行していた「下手英メールマガジン」で紹介していた「下手な英語を使うための技」に加筆修正を加えて、現在無料再掲載中のものです。令和版は、近日有料公開予定!

下手英メールマガジン発行から20年後、「2023年の後書き」:
短期・長期留学や、ワーキングホリデーや、はたまた短期・長期海外旅行などで、英語圏に滞在されている方々が、英語を使う必要性を迫られる場面というのは、過去20年間で、大きく変わってしまいました。
便利になった反面、直接、自力で英語を使わなければならない場面が減ってしまったことは、ちょっぴり残念な気もします。

もしかすると、英語圏で生活しているのに、電話(通話アプリも含め)で音だけで英語を使うということを、体験したことがないという方もいらっしゃるかも知れませんね。

それでも、「ゆっくり話せば、相手もゆっくり話す」というコンセプトは、いろいろな場面で応用できるのではないかと思います。英会話で思うように伝えたい内容が相手に伝わらない時に、自分が自分がと、自分のみを責めたり、相手が相手がと、相手のみを責めるのではく、視点を変えて、別の方法をいろいろと試してみると、みなさんそれぞれに合った、「これだっ!」という対策が見つかるのではないかと思います。

近日公開の令和版では、ソーシャルメディア等も含めた下手な英語を使うアイデアをご紹介していきたいと思っています。お楽しみに!


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