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紙一重で存続する普通の暮らし|秋葉古道の旅#2
秋葉古道はしばしば人家の庭を通る。その多くが廃屋である一方、少数ながら今も暮らしがある。
国道152号と重なる区間も多い秋葉古道であるが、静岡県・旧佐久間町付近では大きく東に外れている。天竜川から300mほど上部を通る道は、その多くが登山道である一方、時折集落に合流する。そこに広がる景観は、天空の里として有名な飯田市下栗と見紛うほどの高度感だ。
ある冬の日の朝、私はそこにいた。地形図によれ
浜松市天竜区、航空券2枚分の旅|秋葉古道の旅#1
ある冬の夕方。
長野県伊那市高遠町から静岡県浜松市の秋葉神社まで歩いてきた私は、表参道の大鳥居の足元でタクシーを待っていた。最後の参拝客が去るのを遠目で見送ったところでヘッドランプを点灯し、粉々のチキンラーメンを食べようかというところでそのタクシーは来た。
「最寄りの飯田線の駅までお願いします」
地図アプリによれば、相月駅まで1時間弱の道のりらしい。前日の夕方に休憩した駅でもある。屋根も小屋もあ
野糞、それは伝説の根源
宮本常一『民俗学の旅』,講談社,1993,p82,(講談社学術文庫)
肺浸潤の療養のため郷里へ帰った常一は、伝説の根源を垣間見たという。
「病気がよくなると野や山をあそびまわった。草の中に寝ころんで空を流れる白雲を見たり、沖の島の上で夕日を長いあいだ見ていたり、浜へ出て海を石を投げていたりするのを見た見た村人たちは私が気がくるったのではないかと思ったらしい。
(中略)そして私が気が変になった
辰野町、宮本常一の冷ややかな視線
「人はみんな話したいことを持っている、それを聞くようにしなければならない。(宮本常一「塩の道」解説より)」
全国各地の普通の人々の暮らしに耳を傾けた宮本常一。その根底には百姓であるという自認と、そういった人々や土地に対する暖かい視線があった。
「私の日本地図1 天竜川に沿って(未來社)」は、天竜川流域に住む人々の暮らしがテーマである。河口である静岡県浜松市から水源である長野県諏訪湖まで215k