クリティカルシンキングで本質を見抜く3つの方法【自己解決能力の高め方③】
前回の「問題が発生したら、まずはイシューとプロブレムに切り分けよう!【自己解決能力の高め方②】」では、問題が起きたら、まずはイシューとプロブレムに分け、それぞれ解決アプローチ方法を変えるのが大切だとお伝えしました。
続いて本記事では、いよいよ問題解決に使える具体的なスキルの解説に入っていきます。
※前回の記事はこちら
自己紹介
事業投資家の林周平(@HayaShu88)と申します。10社のグループ企業の経営と林経営塾を主催しています。
僕のプロフィールは以下をご覧ください。
問題解決能力を高める3つの方法
問題解決力を高める3つの方法は、「クリティカルシンキング」「参照枠」、そして「優先度付け」です。
本記事では、まずは「クリティカルシンキング」から事例を交えながら詳しく解説していきます。
クリティカルシンキングとは?
クリティカルシンキングという言葉は聞きなれないと思いますが、リクルートのサイトなどからお借りした言葉です。
サイト上では、クリティカルシンキングとは論理的・構造的に思考するパターンであると説明されています。
自分が普段、無意識にとっている行動や考え方を意識化することで、客観的かつ分析的に振り返る、という意味でもクリティカルシンキングが用いられます。
さらにもう1社、ラーニングエージェンシーという企業では、クリティカルシンキングは日本語にすると「批判的思考」と訳されるため、「粗探し」をするようなイメージを持ってしまうかもしれませんが、決して欠点を指摘するための思考法ではないと説明されています。
さらに、「本当にこれで正しいのか」という視点を持って物事を見ることで、より正しい論理に繋げていく思考法であるとも解説されています。
簡単に言うと、メタ認知して、構造的に分解集積して、本質を捉えるということです。
一段上から俯瞰して見る、ということですね。関西弁で言うと「ほんまかいな」「そもそも何やねん」です。
僕の近くにいる方はわかると思うんですが、基本的に僕は相手の言っている言葉を真正面からは受け止めていません。いやらしく文脈で読んでいます。
ただ、どうやらそういう感じがクリティカルシンキングらしいです。
ではどうやったらクリティカルシンキングができるようになるのでしょうか。
クリティカルシンキングを構成する3要素
クリティカルシンキングを構成要素に分解すると、「ロジカルシンキング」「前提意図の洞察力・構造的理解」「バイアス×バランス感覚」の3要素に分けられます。
一つひとつ詳しく見ていきましょう。
①ロジカルシンキング
一つ目がロジカルシンキング、論理的思考です。
クリティカルシンキングが本質的思考だとすれば、ロジカルシンキングは論理的思考です。
論理的に物事を検証する力や、問題解決を推進する思考プロセスがロジカルシンキングです。
ロジカルシンキングは、問題解決能力は高いです。
つまり前章におけるイシュー=課題を課題解決するための思考プロセスとしては、ロジカルシンキングはあまり有効ではありません。
理由は、論理的に考えていくとどんどん話が直線的になるためです。
余談ですが、ブレインストーミングとは横展開です。直線的に「なぜなぜなぜ」と進める思考ではありません。だからこそ、ブレストの際はよく批判NGと言いますよね。
例えばブレインストーミング上で「ノート」という話題が続いていたものの、急に「苺」という提案が出たとします。なんでやねんって話ですが、一応今思い続けましょうね、という進行がOKなのがブレインストーミングですね。
つまりブレインストーミングには右脳に訴えかけるような、面白いアイディアを出そうという目的があるということがわかります。
一方で問題解決には、「なんで今、ノートといちごが繋がるんだよ」「共通点は何?」「物であることが共通点かな」というような、裁判をするときの考え方が必要であり、これこそロジカルシンキングです。
さらに余談ですが、ロジカルシンキングは矛ではなく盾です。
ロジカルシンキングとは騙されないための思考法です。ロジカルシンキングを矛として使い始めると、その人は人間として嫌われます。さらに何の課題解決もされない、何も良いことがない状態になります。
大学生のときの僕はそうでした。今でこそ人の心について語れるようになれましたが、その頃の僕はロジカルシンキングの本を読んでおり、自分とフィットしている、正しいことだと感じていました。
論理的に正しいことを言っているつもりなのに、みんながすぐ白旗を振るようになりました。最終的に、大学3年生時に所属していた軽音楽部における幹部ミーティングの際、相手を論破しまくっていた僕は、部活の仲間から「お前はもういい」「お前はロボコンやからお前参加しなくていい」と言われました。
そのように議論を放棄された僕は、衝撃的でした。そこから「世の中はロジカルだけじゃないんだな」ということを学び、今に至ります。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングは似ている概念として世間では捉えられているようであり、世の中ではロジカルな方が正しいと言われていますが、大きな間違いです。
ロジカルシンキングは鍛えれば誰でもできます。右脳的な発想力なんてものは教えて伝えられるものではありません。5W2Hなどをこねくり回しながら、アイディアを出そうという出版物がビジネスパーソン向け思考法としてよくありますが、思い浮かべられないと言葉ではうまく伝えられないものではないでしょうか。
したがって、ロジカルシンキングが難しいという思い込みをなくしてもらえたらと思っています。
②前提意図の洞察力・構造的理解
二つ目が、前提意図の洞察力、構造的理解です。
これは、話の背景を見抜き、検証する力のことです。
前章のStarさんの事例でもありましたが、話の文脈から「もしかしたらこの人はこうなのかな?」と察していくようなことです。
察した段階だけではまだわからないため、「合っていますか?」と検証していくことになりますが、営業的な言い方をするとテストクロージングをしていくことに似ています。
抽象と具体を行ったり来たりして全体像を俯瞰しながら、意図・前提の洞察、構造的な把握を進めます。
全体像がわかると初めて、ちゃんと意見を持てるようになります。
③バイアス×バランス感覚
三つ目がバイアス×バランス能力です。
バイアスとは、物事の思い込みです。思い込みが激しいことを「バイアスがかかっている」と表現します。
僕が今回の資料をつくる中で調べた結果、クリティカルシンキングと物事の偏りに気づく力は割とセットで語られることの多いキーワードでした。
世の中にはそのように認識されているのでしょう。「本質を見抜くときにはバイアスの偏りに気をつけましょう」とは一つの共通認識でありヒントのようです。
バイアスのかかってないど真ん中が正しいのか?といえば全然そんなことがありません。そこで、その場ごとに「いい塩梅を見つける」というバランス感覚も大事かと思います。
クリティカルシンキングの事例
次に、実際のご相談事例を紹介して、解説していきます。
新入社員の方で、ニックネームはBell Treeさんです。悩みは以下の通り。
弊社で今現在立ち上げ途中のブランドにおけるInstagram投稿について、日々探り探りです。
一つの投稿するのもやっとの状態です。相手は植物なので、環境などによって育ち方が違います。
職場内でも、環境などによって型が多少異なることがあり、一つ一つの表情が違います。
Googleで調べても『この植物が本当にあってこれで合っているのか?』ということがよくあり、自己解決しないことがあります。
次に、ECサイトについてです。ECもまさに今勉強中で、勉強としては様々なミーティングへの同席が主です。しかしミーティング中に出てくる単語がわからないことが多い状態です。単語を調べて理解することにいっぱいいっぱいで、ECについて何がわからないのかもわかりません。
こういった事例は少なくないかもしれませんが、「こうしたらいいじゃん!終わり」という形にはせず、なぜそれが発生しているのかを見るのが、クリティカルシンキングの考え方です。
構造を見て、何が原因で起こってるのかを探ります。これは僕がコンサルするときの方法でもあるのですが、「何がそうさせたのか?」という言い方をすることがよくあります。
言ってしまえば、子供の非行の原因を探るような感じです。
非行に走った子供に対して、「お前の素行が悪いんだ」と言っても仕方がありません。「何がお前をそうさせたんだ」という見方が必要です。それを大人にも適用しましょう。
何が起きているのか、という洞察から問題の根本が見えてきたりします。それとプラスで、問題が明確になれば解決案を探せます。
したがいまして、Bell Treeさんへの回答は以下のようになります。
まず、「⽇々探り探りで⼀つの投稿をするのにやっとの状態」ということは業務への基礎知識が⾜りていないことを意味しています。
次に、「植物なので環境などによって育ち⽅が多少異なり、⼀つ⼀つの表情が違います」ということは、ご本人が専⾨性の⾼い内容を担当しているということです。
そして、「Googleで調べてもこの植物が本当にこれであっているのか(わからない)」という部分は、第三者や周りへの確認が取りづらい状況にあると察せられます。
次に「ECの⽅では、勉強として様々なMTGに同席させて頂いている」ということは、いろいろ同時にキャッチアップしている状態なようです。
また「MTG中に出てくる単語の意味がまずわからないのでその単語を調べて理解することに⼀杯⼀杯」であるならば、ご本人は業界知識がない状態なのでしょう。
そして結局「正直何がわからないのかわからないという状況」なのであれば、職務の全体像が把握できていない状態にあるのです。
僕は、今回の事例をこのように切り分けました。
クリティカルシンキングを身につけるには、環境が大事!
クリティカルシンキングを構成する3要素を作っていて思ったこととして、見も蓋もない話なのですが残念ながら勉強して身に付くものではない、という考えが挙げられます。
クリティカルシンキングを身に着けたいなら、日頃から「デキる人」と過ごして自分をブラッシュアップしていくのがいいと思っています。
そもそも思考法みたいなものは、勉強して身につくものではないのではないでしょうか。
思考法の伝達とは、学ぶべき相手の横にいながら、一緒にディスカッションしながら「なるほどここでこう見るのか」と、技を盗むようにあるいは戦いを重ねながら、物事の見方・考え方が乗り移っていくといったフィジカルな教えであるように僕には思えます。
脳の中の話ではありながら、部活と一緒であるように思えます。部を3年ぐらい継続するからこそ、もし甲子園に行けるようなチームになったのであれば成績が良くない子でもそこそこ強くなったりするじゃないですか。
このため、クリティカルシンキングを学ぶために「上から順番に実践する」のではなく、大事な観点が何かを見極めて、今一緒に過ごしている人の中で「この人いいな」とか「この人のこういうところがすごいな」と思える人を分析したり、乗り移らせてもらって染めてもらう方がいいように思います。
僕は上記のやり方が得意です。特に母親の影響が強くあります。
中学ぐらいから、母親と毎日2時間ほど議論でバトルしていました。そのときに鍛えてもらっていて、勉強して身につけたわけではなく、昔から議論に負けたことがありませんでした。
元々、議論には得意意識があり、「議論なら俺は負けない」と中学の時から思っていました。しかしながら今思えばそれは母親との取っ組み合いの中で培ったものでした。
そこで、幸い僕がこの辺は得意なので、自社内では勉強会というよりはスパーリングしてお互い切磋琢磨していきたいと伝えています。
※次回の記事はこちら
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