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ブル・マスケライト《仮面の血筋》100ページ小説No.15



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前回までのあらすじ…

安和ナミと栗原が転校生セナと接触するが、情報の交換条件としてリムジンに乗せられる。行き先はなんと「組織」だった。遂に組織の全貌が明らかになる…
今からその「組織」が作った場所へ二人を連れて行く…

そういって渡されたのは鳥の羽根が片方だけ装飾された目元だけを隠す赤い「マスケラの仮面」だった…
あまりにも鮮やかすぎる仮面を見つめながら二人は突然組織と関わる事を聞かされ、怯えつつも予想していたかの様に驚くこともなくただ息を呑んだ…
そしてまたBGMが鳴り響く。舞台のクライマックスの様な激しいビブラートと仮面のせいで車内はオペラ一色に染まり出した……

「さぁ、もうそろそろ着くよ」
あわナミと栗原、セナを乗せたリムジンがとある場所へ着く。そこは小さな学校の校舎を改築したような所の様だった。運動場も体育館の様な建屋もあり周りには木と塀で囲まれていかにも普通の学校だ。門には英語表記で「Futuro(フトゥーロ)高等学校」と碧色で書かれてある。そしてイタリアの国旗が左脇に掲げられ、その横に兵隊のような人が立っていた。
「ここが君たちが言う組織の作った学校、そして僕も2年前まではここにいたんだ」
セナが私たちに話し出す。これから何をされるのか分からない二人は目を合わせ少し震える体を抑えていた。
「そしてココの校則、どんな理由であろうと仮面を着けないと入れない!そして相手の名前は言わない」
そのセナの恐怖じみた声で直ぐに仮面に合わせたルールだと気づいた。
「つまりココは『仮面の人が集められた学校』ってこと。そしてココの生徒は全員「ある教育」を受ける為に集められる。まぁそれは行ってからのお楽しみ、だね」
意味深な表情をしながら話すセナが、私たちを怯えさせ喜んでいるサイコパスにしか自然と思わなくなっていた。仮面を着けないと入れない。そんな学校があること自体がきみが悪すぎる。もっと恐怖心が来る前に私は切り出した。
「ようやく分かったわ。あなたが転校して来た理由も、たちばなを追ってる理由も。たちばなをさらって入れようっていう魂胆なのね」
「そう言う事。さすがナミだね。もちろん、理由がある。それは後で話すから、さあ仮面を着けて」
抵抗しようもの、密室な車内という状況と外は敵のホーム。ここまで来た私たちにはもう選択肢はなく、セナに言われるがままだった。二人は腹を決めるかの様に目元だけの派手な仮面を着ける。栗原さんのはドレスに合わせたかの様に同じ色のピンクの仮面。右目の横には3本の羽と大きな薔薇が付いている。しかし口元は私同様、一切笑う様子はなく緊張した面持ちだ。
 しばらくすると運転手がドアを開けセナが水色の仮面を着け先に降りる。それを見届けた後、重い腰を上げ二人は着いて行った…。
「うぉぉぉぉぉーーー」
 外に出ると大きなたくさんの声援とオペラの音楽が体育館のホールから聞こえてきた。その異様な激しい声に身体が反応し埋まる。まるで私たちを歓迎してるかの様にさえ感じ、二人が歩く前に妨げられた。その様子をセナが気が付き私たちの所まで戻ってきてこう言った。
「なんだろう?珍しいね。さぁ、立ち上がれる?」
優しく私たちの手を取ろうと差し出すが私たちは自分から立ち上がった。少しニヤついたセナはまた私たちを追い越し無言のまま先頭を行く。そして校舎の下駄箱まで入って行った。
 ステンレス製のコインロッカーの様なスタイリッシュな銀色の下駄箱が私たちを出迎えた。セナは目もくれず靴を脱ぎ捨てる。
「御二方もそのままお上がり下さい」
私たちの後ろを歩いていたセナの運転手はスリッパを用意し並べてくれた。家政婦で慣れているのか栗原さんは直ぐに靴を脱ぎ捨て履き替える。その後を私も真似して上がった。
 セナは廊下を歩き下駄箱から直ぐ右横にある部屋をノックもせず扉を開けた。その様子を見た私たちも恐る恐る中へ入る。
 「ようこそ、お越し下さいました。お久しぶりですね」
「こちらこそお久しぶりです。今日はちょっと見学者を連れて来たんだけど」
「お話はお電話で聞いています。もう少ししたら案内人が来ますのでしばらく掛けてお待ち下さい」
そこには目だけの私たちとは違い顔全体を覆った見た事のない白と水色の「横縞」の仮面をした人が座っていた。
「これが組織の人間の仮面…」
スーツはしてるが恰幅のいい体格と異様な仮面のせいかおぞましく漂う威圧感を感じる。不信感のまま近くの薄茶色のソファーに案内され3人は座った。私たちは辺りを見渡し落ち着かないでいた。殺風景な部屋は頑丈そうなデスクとこのソファーがあるのみ。窓はあるが細長く、明かりが入る程度でそれ以外は特にない。浅めに腰をかけながら、横目で不気味な仮面を覗きこむ。そこでセナがまた喋り出す。
「校長、今日はやけに騒がしいけど何かしてるの?」
校長?これが?じゃあきっとここは校長室だ…。そして組織のボス。尚更、やけに軽々しく喋るセナを突然銃で撃ったりしないかヒヤヒヤして聞いていた。
「今日はちょっと訳あってね、今盛り上がっているとこなんだよ。3人も後で見て行くといい」
「へーーーなんだろう、ワクワクしてきた」
栗原さんは何か良からぬ想像したようで急に青ざめ吐き気がきていた。私がとっさにハンカチで口元を押さえ背中を摩る…。
「あ、大丈夫?直ぐにじい呼ぶから」
そうセナが言うとポケットに手をやり何かを押した。下駄箱で待機していたのか、直ぐにさっきの運転手が来てくれた。
「大丈夫ですか?お手洗いに案内致します」
そう言われてついてくと私たちは近くの女子トイレに駆け寄った。
 中に入りすぐさま洗面台に駆け寄ると栗原さんは今にも嘔吐寸前。
「大丈夫?無理しないで…」
私はずっと背中を摩り励ました。どうやらずっと我慢していたようだ。
「無理もないよ…とりあえずスッキリして」
「ごめんなさい…怖くて…」
泣きながら謝る栗原さんを見つめながら励まし続ける。
ようやく落ち着きを取り戻すとしばらく仮面の姿の自分を見つめ直し唇を噛み締め震えていた。その様子をまじまじと見て私は決断した。
「栗ちゃん、車で待ってて」
「ええっ?それはだめです!ナミさんに何かあったらどうするんですか?」
「私なら大丈夫、ここまで一緒に来てくれただけで充分だよ。それに誘ったのは私の責任だから」
「いや、そんなの困ります…」
また泣き出した…。私はそのままトイレを出ると運転手に栗原さんを連れて待っててもらうように言った。栗原さんはまだ泣きながら寂しそうな眼差しで私を見つめる。
「大丈夫、すぐに戻るから…待ってて」
栗原さんの手を両手で握りしめ車へ行ってもらった。
「ここからはもう独りで進む!私が代わりに組織と関わってやるわ」
腹を決め、校長室へ再び戻った。

「大丈夫かい?」
「一人は体調が悪く車に戻しました」
「それは悪かったね…。さすがにやり過ぎたかな?」
セナが初めて反省している様だ。よく見るともう一人向かい側に校長と同じ仮面が座っていた。背が高く髪の毛がセンター分けで毛先だけパーマがかけてあるような長めの髪が印象的だ。
「ようこそ、我が高校へ。さあさあこちらへお座り下さい」
私がセナの横へ座ると直ぐに案内人らしき人が話し出す。
「はじめまして、少しご説明させて下さい。セナ様から聞いてるかとは思いますが、ここでは新しい教育を推進しています。そしてそれは将来的に新しい社会を創り出す為の重要な人物となって頂く為であります。更に生徒のみなさんを安心して生活出来るように卒業後も防衛し保護続けれるようにしています」
「保護?仮面の人を?」
「そう、この学校のお陰で僕も安全にこうして居られるんだ。仮面のままでも。しかも僕なんか卒業してないのにね」
「はい、貴方様のように途中で学校を辞めたとしてもうちの生徒だった事には変わりありません。それだけここの生徒の「重要さ」をすでに「社会」の方がご理解頂けてきたと言う事です。それはつまり…」
「何の話し⁇ここは悪い組織でしょ⁇」
心で思いながら疑ったまま聞いてたせいか、内容がよく分からない。どうやら仮面の人を集めて護る役割と教育を進めている学校のようだ。しかしいくら説明されても不信感は変わらず、そのまま睨みながら話しを聞く。その様子を見てセナが割って入った。
「彼女、ナミはまだこの学校を疑ってるんだ。多分、説明しても聞いちゃくれないよ。そういえばあれ、見してあげてよ」
「あれ、ですか?ナミ様は仮面では無いと聞いておりましたが…分かりました。実は仮面の誰もが入学出来る訳ではなく、とある試験もあるのです」
セナと2人でやりとりした後、何やら手慣れたセールスマンの様に資料を取り出して広げる案内人。
「こちらの資料をご覧ください。これは少し前のうちの仮面の方しか解けない入学試験の一部です。解けますかね?」
そういうと私に見せてきた。
「エッっ???」
私は不意に声をあげてしまっていた…

 問い一
こちらはこの後、何に変わるのでしょうか?
①さなぎ…
②おたまじゃくし…
③カブトムシの幼虫…

「何よこれ??幼稚園の入学試験じゃない!しかも③に至っては正解が書いてあるし…」
セナと案内人は顔を見合わせて笑っていた…。 
「ありがとうございます。すみません、予想通りのお答えを頂いてつい嬉しくてなってしまって…。代わりに貴方様、お答え頂けますか?」
私の気持ちをよそにセナが答えた。
「りんご、バナナ、みかん…かな?」
「正解で御座います。さすがですね」
二人のやりとりにまさに呆気に取られた私がいた…。
「どう言う事よ!なんなのコレ?説明して!」
すると横のセナが代わりに答えた。
「これこそがもう一つの『仮面を外す理由』だね!」
「余計に分からないことを言わないで…」
私は頭がおかしくなりそうだった。その様子を見て更に案内人が私を勿体ぶらせてきた。
「机の上で話すのも何ですのでそれではそろそろご案内致しますね。ちょうどその『理由』も見れば分かる一大イベント中でも有りますし…」
さらにたぶらかす案内人。人を嘲笑い不気味な性格はこの組織ならではの風習だろう。そのまま立ち上がり、私達二人を連れて廊下に出た。私だけがモヤモヤしたまま後ろをついて行く。さっきの問題といい、既にストレスで頭が現実逃避をしろと命令が来る。階段を上がるとそのまま会場まで行ける透明なアクリルでできたスロープを歩く。ここから薄っすら私達の乗ってきたリムジンの車が見えた。
「栗原さん、心配してないかな?」
私は何気なく心配をしていると一瞬でその気持ちが消える程の大音量のクラッシックが聞こえてきた。直ぐにまた未知の恐怖が私を襲い出してくる。そんな私をよそに二人は会話をしだした。
「この音楽はたしか…「フィガロの結婚」じゃない?」
「はい、そうです」
「ていう事は今卒業式をしてるのー?まだ十一月だよね?」
「今年は優秀な生徒が多く例年よりだいぶ早く行われています」
「そうかー、イベントって卒業式だったんだ〜。楽しみになってきた」
なによこの組織が作った卒業式って…。想像するだけできみが悪い。どうしよう…。栗原さんの光景が頭に過ぎり私まで気持ち悪くなってきた…。逃げたい…。そんな時、ふと私がここに来た理由を思い出した…。
「そういえば私はまだ何もしてあげれて無いんだった。こんなときでもたちばなは仮面の生活をしたまま追われて苦しんでるはず。私は何の為にここに来たの?あと少し進むだけじゃない…。もう目を逸らさない…どんな景色があろうとも…」
もう一度、決心した私は真っ直ぐ会場の入り口に向かって進んだ。重厚なドアが開かれ中から更に大きなBGMとまばゆい光が漏れている…。私はドアの一歩前へ入り衝撃のあまりに立ち止まった…
「な、何なの…これは……」
私は会場の中に呑み込まれて行った…


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