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ブル・マスケライト《仮面の血筋》100ページ小説No.14

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前回までのあらすじ…

安和ナミは栗原の家へ急遽泊まりに行き、水口先生から貰った手紙にあった転校生セナとの接触が決まりました。たちばなとのや水口先生の仮面を取った金髪の女性との関係は?



土曜日、私は少しだけドレスコートをさせてもらい車がもうすぐ転校生の家へ到着する。栗ちゃんはピンクのドレスにバッグとハイヒールだ。そして何よりもお父さんが乗り気だった。
「静恵、お父さんは結婚も賛成だぞ」
「だから考え過ぎだって。でも凄い大きい家ばかりだね?どれもうち何て比べ物にならないくらいの家だし」
 ここ一体は白い柵に覆われて防犯セキュリティーが張り巡らされている高級住宅街。普段は住んでる人しか入ることのできない門を栗ちゃんのお父さんは慣れた手つきでブラックカードをかざし顔認証でさらりとセキュリティーを突破した。
「南野先生といえばスポーツ界では知らない人はいないくらいだ。世界で活躍する選手しか先生に見てもらうことも難しい。それ程の腕が立つ名誉ある方だからな」
どうやら南野セナの父は有名な医師らしい。そして中庭の様な管理された道路を通り抜けると坂道を登り一番奥にあった巨大な一等地に到着した。それはもう家というよりお城だった。さっき通ってきた場所のすべてが一望出来る丘の上に建っていた。そこには両脇に警備員が立っておりアーチ上のエントランスを守っている。車は平然とくぐり抜けるとパリの噴水上の様な場所に出た。そして彫刻にあしらわれた現代風のお城とご対面した。
「うわあああああ〜ステキ〜」
私たち二人は声を上げた。一瞬で女性をお姫様にさせる佇まいに目を奪われる。
「何でここに住んでる人がうちの学校に来てるのー?」
「栗ちゃん、もうここの人と結婚しなさい」
「ちょっと何言ってるのナミさんまで〜?」
お父さんも微笑んでいる。するとスーツの方が離れの建屋から現れ、車を誘導してくれた。
「お待ちしておりました。栗原先生ですね。ご案内致します」
車を降りると皆んなでその人の後ろを歩いた。高級ホテルの様な大きな自動ドアの前までくると案内人が代わり中に案内してくれた。そこは赤い絨毯が敷き詰められたロビーだった。私達は大きなオレンジ色のソファーの前で待つと一人の男の人がゆっくり近づいて来た。
「どうも初めまして、わたくし南野登と云います。この度は私の息子のためによく来てくださいました」
「初めまして、栗原希美と申します。こちらこそ勝手な都合でご迷惑をかけしております」
「あ、お二人がうちセナのお友達ですね?初めまして」
その後、私たちも挨拶を済ますとさっきの案内人の方が来て私たち二人だけ別の部屋へ移動することになった。日常とスケールの違いすぎる世界に飛び込むことを決断した自分の考えを後悔しながらも、もう緊張はピークをとっくに過ぎていた。そして目的を見失いそうになりながらも意識だけはただ保って歩いている自分がいた。

 「こちらの部屋がセナ様のリビングとなります。どうぞお入り下さい」
「遂に来たね。もう後には引けない。行くよ、栗ちゃん」
「うん」
緊張が走りながらも扉を開ける。部屋の中は大きな白の柱が4本ありその間を一段下がった階段とコの字の大きいソファーが真ん中のガラステーブルを囲っている。奥は壁全部がガラス窓になっていて遠くに海が見えている。そこに金髪の転校生が立っていた。
「やあ、初めまして、南野セナと言います。うちに人り招いたのは久しぶりだなぁー。とりあえず二人とも座って」
挨拶する間もなく私たちは緊張しながら真っ白のソファーに座った。身体全体を包み込む優しい座り心地が逆に安定出来ず、私は前のめりに座り直した。転校生はゆったりと歩きバーの様なキッチンに向かい、自分で飲み物を二つ用意するとガラステーブルの上にシルバーのコースターを敷き、その上にグラスを置いた。
「どうぞー。二人とも飲んで」
明るくそういうと私たちの向かい側に座り話し出した…
確かにハーフの美形で整っている。スタイルも良くモデルだけでも将来やっていけそうな感じ。しかし何処か人間味が無いというか…なんというかミステリアス。私はそんな印象を受けた。
「栗原さんと安和さんだね、一個下って聞いてるけど合ってる?」
私たちは顔を見合わせ頷いた。何から話そうと考えているとまた転校生は喋り出した。
「今日は「仮面」の話でここに来た…で合ってる?」
「??何でそのことを??」
「一応自分もフトゥーロ出だから…」
「??」
私たちはまた二人で目を合わせた。
「よく見たら二人とも誰かに外されてるね?」
その言葉にやっと私の重い口を開いた。
「じゃあ今仮面が見えてるって事?しかも何でも知ってそうね?そもそも仮面って何なのよ?教えて!」
私が勢いよく言うとアゴに手を当てながら考え出した。そもそも敵か味方か分からない人にぶつける様な質問ではないのは分かっていたが、向こうから仮面の話が出た以上、知ってるフリも効かないので私は丸投げした。栗ちゃんも私の強い口調に驚きながらも真剣な眼差しで彼を見つめている。彼は少し考えたところでまた喋りだした。
「どこまで知ってるかは分からないけど招待状は読んだよね?」
「マスケラの招待状は二人とも知ってる」
「じゃあ「血筋」は分かるよね。そこから他の3人も選ばれることも。ならこれは知ってるかな?この血筋にはそもそも二つの意味があるんだ」
「どうゆうことですか?」
「それは二人みたいに「外された人」が結婚して子供を産み出来た子孫と「外されてない人」の子孫って事。前者が殆どの人で後者はレアなケース。だって仮面の生活のまま子供を育てる何て普通なら出来ないから」
「「ハッ!?もしかして?」」
私たちはこの時、頭の中に電気が走った。そして繋がり直ぐにある事を理解した。そう「なぜたちばなが狙われてるのか」の理由が。
「それでもいつかは現れる…それがたちばな君、だよね?そしてそこから3人選ばれたうちの2人が今、僕の目の前にいる…で、合ってるかな?」
淡々と話す転校生とズバズバ当ててくる内容のギャップをくらいながらも私は1番知りたかった質問を投げつける。
「じゃあ仮面の生活を選んでまで人のを外す目的って何なの?」
2度目の強い口調にも動じる事なくまたアゴに手を当てながら話し出した。
「あっ、そこだねー2人がわざわざ来てくれた本当の理由は。で、これも2つの意味があるんだ。1つはもちろん相手を助けるため。お互いの仮面を外し合いたいけど呼ばれた人はもう外す事は出来ないから。どっちかを先に外してあげる。そして重要なのはもう1つの理由…このせいで仮面の人間模様が複雑化してる1番の原因。でも初めて会った2人にこれを話すのはちょっとなー」
さっきまでペラペラと何でも話してたのに急に渋った表情に変わった。明らかに今までと違う反応。逆にいえばそれだけの価値のある情報を握っている。つまりここが落とし所。私はその転校生の様子を見て打って出る。
「なら何か交換条件が必要?」
転校生が初めて驚いた表情を見せた。薄っすら口が開いたまましばらく考えた後、唇を噛んで私たちに言った。
「じゃあ今からデートしよう?3人で」
「「????」」
2人はリムジンに乗せられ何処かへ向かった。そう、私達が交換条件を飲んだから。目的はもちろん、たちばなの仮面を狙う理由を聞く事。しかしデートと言っても行き先も教えてもらえず相手は男子なだけに不審は募る。
このリムジンの車内は怖いほど豪華で座席はテーブルを囲って向かい合って座れる様になっていた。そこをさっきの部屋のソファーと同じ向きで3人が座っている。防音性の高そうなモコモコとした皮の白い素材に包まれたまさにVIPルームの雰囲気。しかも運転手からは見えないようにカーテンが掛けられ、何されても分からないこの状況。さらにオペラのBGMが奇妙な雰囲気を演出していた…。
「ハイ、どうぞ。シャンパンだよ。2人はお酒初めてかな?」
彼はそう言いながら微笑んで口にした。私たちはただその様子を眺めていた。
「うそだよ、冗談。ただのジュースだからさぁ飲んで」
二人は警戒した。さっきの部屋のもこれも何か睡眠薬でも入れられてるんじゃないかと口にしなかった。そして栗ちゃんはずっと下を向いたままだ。
「あれ?交換条件って言ってきたのどっちだっけ?」
明らかにおちょくられたその言葉にイラついた私は勢いよくグラスを手に取った…。しゅわしゅわと泡立つ透明な液体を眺めた後、彼を睨みつけ一気に飲み干した。
「うわー、飲むんだねーカッコいい!やっぱり面白いよ安和さん」
「ちょっとナミさん、何か入ってたらどうするのー?」
「ナミって言うんだー。じゃあ君の名前は?」
「…静恵です…」
「じゃあシズナミね!僕はセナ!よろしくー」
その無邪気に明るい口調の雰囲気に飲み込まれだした私は炭酸が上がって来るのを待つ前に質問をした。
「じゃあセナはどうしてうちなんかの学校に来たのよ?」
「えっ、やっと僕のことを聞いてきてくれたねナミは。そうだねーそれは僕の事を知らない人達の学校へ行こうと思ったから。ざっくりいうとそんな感じ。そういえばシズのお父さんもうちと同じ医師だよね?僕とシズの共通点だね。もしかして将来両親が気に入って僕と結婚しちゃったりしてー?アハハッ」
それを聞いた栗ちゃんは一瞬で目つきが変わり机にあったグラスを手に持つと一気にシャンパンジュースを流し込んでこう言った。
「有り得ません!」
「わーお!キュート」
どうやらセナは今までちやほやされ過ぎてか私たちの嫌いなこの気持ちが読み取れないようだ。すぐにセナは私たちのジュースを注ぎ直す。
「スゴイねシズナミは、まだ敵かも知れないのに警戒せず飲むなんて。さぁもっとデートを楽しもうよ!」
勢いづいた栗ちゃんを見て私はとうとう聞いてはいけない事を口にした。
「セナ!もうハッキリ聞くけどあなたは組織の人間なの?」
「ワハッ!えー組織?何のことかなー?」
「とぼけなくてもいいわ!あなた、お姉さんいるわよね?」
そう聞くとセナは黙り、テーブルにグラスをゆっくり置いた。
「案外分かりやすいリアクションをするのね。もう言わなくても理解したわ。あなたのお姉さん、組織の人間なんでしょ?」
そう言うとさっきまでと打って変わってセナの顔色が豹変した。目は座り深妙な面持ちで静かに私を見つめる…オペラのBGMの音が一瞬消えたと思うと一言こう言放った。

『今からその「組織」が作った場所へ二人を連れて行く…』

そういって渡されたのは鳥の羽根が片方だけ装飾された目元だけを隠す赤い「マスケラの仮面」だった…
あまりにも鮮やかな仮面を眺めながら二人は突然組織と関わる事を聞かされ、断ることもなくただ息を呑む…
そしてまたBGMが鳴り響くと舞台のクライマックスの様な激しいビブラートで車内はオペラ一色に染まり出した……

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