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雨の開化絵

私物のコレクションには色々な資料があるのですが、特にお気に入りなのがこの浮世絵です。

林基春〈大阪名所 天神橋より天満橋を望む〉

作者は林基春。大阪の浮世絵師です。明治24年4月5日に印刷された作品で、雨の大阪の天神橋から天満橋を見るという構図も素敵です。

天神橋と天満橋は明治18年7月の大洪水により淀川筋の橋が流されたため、明治21年に新しく架け替える際に鉄橋化されました。どちらの橋も部材はドイツ製で橋の両端を三角形で組み合わせたトラス構造です。

このトラス構造、日本では1871(明治4)年に新橋・横浜間の鉄道ができた際に六郷川(多摩川)を渡る場所に架設されたのが最初のようで、鉄製の橋は1874(明治7)年に開通した神戸・大阪間の鉄道で初めて架設されました。

橋を渡る人々

人々に目を向けてみましょう。人力車が見えます。人力車は1871(明治3年)に発明され普及していきます。人力車の横に西洋風のコートを羽織っている人物がいます。おそらくインバネスコートだと思います。和装に羽織る外套として明治20年頃伝わりました。当時としては最新のファッションということになります。そして帽子を被っています。和装に帽子というのは明治時代に流行した和洋折衷のファッションです。

手前の傘を差す人物の番傘には作者の名前が書かれています。なかなかお洒落なデザインですが、明治の広重と呼ばれる小林清親が1873(明治6年)に描いた〈東京名所図 海運橋〉が似たような構図です。本資料のタイトルが〈大阪名所〉とあるように小林清親の影響があるように感じます。

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