Hasebe

展示の解説をします。入館料無料。 お仕事ございましたらよろしくお願いします。

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マガジン

  • 展覧会のための収蔵庫

    次回の展覧会のための収蔵庫です。雑多な話が多いです。 収蔵庫内の温度20度前後湿度55~65%

  • 修復室

    コレクションを直しています。文章少なめ。

  • 東西断片収集

    6月10日~12日に文翔館ギャラリー7で開催する「東西断片収集展」の解説です。

最近の記事

永遠の都

イタリアへ旅した際、たまたま見つけた蚤の市で手に入れたのがこの地図です。 店主はルネサンス時代の素描があるから買わないかと言われましたが、旅行のお土産としては地図はなかなか良いなと思いこちらを購入しました。よく考えてみたら、ルネサンス時代の素描もなかなか素敵だったので、買っておけばよかったと後悔してます。こういう蚤の市での出会いは一期一会でそれが楽しいとも言えます。 ローマは「永遠の」と冠がつく唯一の都市です。古代ローマ時代に「世界の首都(カプト・ムンディ)」として繁栄を極

    • 直したもう一つの和本

      幕末の国学者であり戯作者であった初代笠亭仙果。彼の戯作デビュー作『合物端歌弾初』表紙は歌川国貞、中は歌川国安です。

      • 浮世絵と旅する

        2018年早春、私は1つの画像を持って京都にいました。場所は西本願寺です。持って行った画像はこちら 作者は以前ご紹介した林基春。松の木の隣に名前があります。明治24年に印刷された作品でタイトル通り京都の名所を紹介する浮世絵です。文明開化を象徴するように右に洋服を着た紳士を乗せた人力車が走っています。1000年の都京都にも文明開化が訪れたのです。 都が京都から東京へ布告なしに遷都してから人口が減少し、一時期衰退を見せました。今でこそ外国人が大勢訪れオーバーツーリズムが問題とな

        • 糸で綴じました

        永遠の都

        マガジン

        • 展覧会のための収蔵庫
          10本
        • 修復室
          4本
        • 東西断片収集
          17本

        記事

          開化を学ぶ

          『簡易読本』という明治時代の小学校で使用されていた教科書の一部をご紹介します。 ご紹介している資料は恐らく低学年向けのもので、カタカナを覚えるために絵と文字が書いてあります。絵は当時の子供達が興味を持つものを選んでいると思います。そして、カタカナということもあり、外国も製品を取り上げていて、大変興味深いです。 まず、左上のランプはオイルランプです。開国と共に日本へ入ってきて、明治初年はお金持ちしか手に入れることができませんでしたが、1974年(明治7年)頃になると庶民にも

          開化を学ぶ

          繕いをしました。

          土佐和紙で欠損部分の繕いをしました。糊は正麩糊を炊きました。

          繕いをしました。

          奏でることと歌うこと

          コレクションに『洋画講義録』という本が何冊かあります。明治40年頃のもので、昔の通信教育のテキストような本です。そこに掲載されているものを1つご紹介します。 中澤弘光は明治7年生まれの洋画家、版画家、油彩画家、挿絵画家です。右が実物の写真、左が中澤が描いた鉛筆スケッチです。〈弾奏〉というタイトルにもあるように和服を着た女性がヴァイオリンを持ってポーズを取っています。 ヴァイオリンは1871年(明治4年)にイギリス人のクラークという人物が横浜で洋楽器輸入商を始めたことで、日本

          奏でることと歌うこと

          和本の修復の様子

          現在、和本を直しています。元々、こういうことが専門だったりします。年に何回か訓練のためボロボロの本を買い、直します。まずはクリーニングから。

          和本の修復の様子

          雨の開化絵

          私物のコレクションには色々な資料があるのですが、特にお気に入りなのがこの浮世絵です。 作者は林基春。大阪の浮世絵師です。明治24年4月5日に印刷された作品で、雨の大阪の天神橋から天満橋を見るという構図も素敵です。 天神橋と天満橋は明治18年7月の大洪水により淀川筋の橋が流されたため、明治21年に新しく架け替える際に鉄橋化されました。どちらの橋も部材はドイツ製で橋の両端を三角形で組み合わせたトラス構造です。 このトラス構造、日本では1871(明治4)年に新橋・横浜間の鉄道

          雨の開化絵

          空への憧れ3

          サン=テグジュペリ『人間の土地』に「空のいけにえ」と題した宮崎駿監督の解説が載っています。そこには 「空を飛びたいという人類の夢は、必らずしも平和なものではなく、当初から軍事目的と結びついていた」 と書かれています。気球の回でもご紹介しましたように気球の開発を進めたのは陸軍と海軍でした。今日の人とモノを安全で大量に輸送することが可能になったのは、空を飛ぶことに憧れた多くの若者達の犠牲の上に成り立っているということです。 風を起こす団扇に飛行機とはなかなかユニークです。飛行機

          空への憧れ3

          空への憧れ2

          1877(明治10)年、日本政府は気球製作に着手しました。開発された契機はちょうどこの頃勃発した西南戦争です。薩摩軍に包囲された政府軍が立てこもる熊本城を援護するため田原坂上空に気球を揚げて「薩摩軍の状況を偵察すること」「熊本城への連絡を通すこと」を目的に陸軍、海軍双方が開発を進めました。 ご覧の資料は三代目広重が制作した築地で行われた気球の飛行とそれを見学する人々です。三代目広重は文明開化の浮世絵いわゆる「開化絵」を得意としていました。 後ろの絵は1871(明治4)年に竣

          空への憧れ2

          空への憧れ1

          鳥のように大空を飛ぶことは人類の長年の夢でした。1783年、フランスのモンゴルフィ兄弟が作った紙の気嚢に熱空気を詰めた自由気球によって人類は初めて飛行する事に成功します。 ご紹介する資料は1903年のシャーロックホームズも連載していたイギリス『ストランドマガジン』の「アイルランド海峡を越えて」と題した記事です。 表の記事には「気球の着陸」、「HMSレイナードへの接近」、「グロッグタイム」とあります。HMSレイナードとはイギリス海軍の10隻の船のことだそうです。「グロッグ」と

          空への憧れ1

          断片からわかること

          以前、「開化の断片」で登場した明治40年の賛美歌の本。この本を修復していた所、背の部分に貼り付けてあったのが本資料です。 本当に断片で果たして資料といっていいのか悩みますが、それでもこの資料からわかることがあります。 「われをうるほし」の箇所と賛美歌の本から見つけたということから推察するとチャールズ・ウェスレーの代表作の讃美歌「わがたましいを”Jesus,Lover of my soul”」の歌詞にこの一節があります。 きみは命の生命(みなもと)なれば たえず湧きいで心

          断片からわかること

          展覧会のための収蔵庫

          展覧会が終わって次いつ開催するのか未定ではありますが、それまでにコレクションの解説を書きためておこうと思いました。 実際、博物館の仕事では展覧会が開催するともう次の展示の準備を始めていて、開催するまで下調べも含めると大体半年以上の時間をかけて1つの展示を作ります。 展示テーマ未定のため架空の収蔵庫の中から個人的に面白そうな資料を取り上げてみるといった形でとりとめもなく書いてみます。この中からいつか展覧会ができればと思います。興味がございましたらご覧ください。

          展覧会のための収蔵庫

          「東西断片収集」展終わりました

          「東西断片収集」展、無事終えることが出来ました。沢山の方々にお世話になりました。本当にありがとうございました。 企画は2月から始まりました。通常は最低でも半年はいろいろ調べてたり、展示構成を考えたりしますが、今回は4ヶ月という急ピッチで展示を作りました。初めての場所での展示でしたので、どのくらいの資料を展示すればいいのかわからず手探りでの作業でしたが、なんとか形にできました。文翔館は観光目的のお客様がほとんどですので、キャプションは最低限でさらっと見るだけでも楽しめる展示、

          「東西断片収集」展終わりました

          展覧会が始まりました

          「東西断片収集」展が文翔館ルーム7で始まりました。 午前中は展示作業を初見の展示室でバタバタしながら行いました。すっかり忘れていたのですが、展示作業は体力を使います。 作業中、お客さんが来てチラッと覗かれていきましたが結構好評でした。 午後から展覧会が始まり、さすが文翔館。観光客がついでに覗いていっていただけます。 外国の方もチラホラ入室していただきました。オーストラリアからのお客さんは熱心に展示見てくれて、もっといろいろ伝えたかったけど知ってる怪しい英語だったので、もう少

          展覧会が始まりました