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展示の解説をします。入館料無料。

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  • 東西断片収集

    東西断片収集展の解説です。

最近の記事

展覧会のお知らせ

展覧会の場所と日時が決まりました。場所は「山形県郷土館 文翔館」のギャラリー7で、日時は2024年6月10日から6月12日です。 建物は大正2年に建てられた山形県旧県庁舎で国の重要文化財でもあります。憧れの文翔館で展示ができることに大変嬉しく思っています。 私はこの建物の時計塔が気に入っていて何度も訪れています。ギャラリー7は小さな部屋ですが、展示点数が18点ですのでちょうどいいかなと思っています。入館料はもちろん無料。 文翔館の美しい建物を見がてらご来場いただけますとあり

    • 断片結婚式

      『Le Japon』の挿絵と「結神末松山」のどちらにも結婚式の絵があるのを見つけましたので外国人が見て描いた日本の結婚式と日本人が描いた結婚式の絵を比較してみたいと思います。 まずは「結神末松山」より。武士の祝言の様子だと思います。昔の結婚にはいろいろ決まりがあって、花嫁と花婿の座る位置も決まっていました。向かって左が花嫁で右が花婿でした。この絵でもそうですね。では、『Le Japon』を見てみましょう。 この絵では花嫁と花婿が逆ですね。江戸時代の後半では花嫁を客人として

      • 謎の断片

        まずはこちらをご覧ください。 初めて見た時、謎の記号といいますか暗号のようなものが書かれていて大変興味をそそられました。SNSで「これはなんでしょう」と呟きましたら「速記記号の表ではないかと回答をいただきました。速記・・・速記とは何でしょう。 速記とは人の口から出た言葉を文字に変換する技術だそうです。話言葉をより早く正確に記録することを目的に開発されました。 日本で速記術が発明されたのは明治15年。田鎖鋼紀という人物が日本橋の茶亭において自身の考案した速記講習会を開催した

        • モダンの断片

          商店の販促用の団扇に描かれているのは3人の美女とラジオです。 日本でのラジオ放送の始まりは、大正14年です。当時の最新のモダンアイテムに着物を着た女性がポーズを取るというなかなか面白い構図です。 ラジオは真空管ラジオだと思います。スピーカーを鳴らせる真空管式ラジオはセット自体が高価なものでした。つまり、この女性達は裕福な家のお嬢様ではないでしょうか。 ラジオの普及は人々の生活に大きな影響を及ぼしました。それまでメディアといったら新聞しかなく、新聞は前日の情報を伝えるため速報

        展覧会のお知らせ

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        • 東西断片収集
          16本

        記事

          断片の鳥類学

          植物画をご覧いただきましたので、鳥類の絵もご覧ください。 本資料はドイツ語で書かれていますので、ドイツ製で間違いないと思います。上部に書かれているのは「在来の鳴き鳥」ドイツにいる鳴き鳥でしょうか。時代は植物画と同じ時代だと思います。 鳥類学の世界で最も古く歴史のある学会はイギリス鳥学会で1858年に設立されました。鳥類学の学術誌でもっとも古いものは、ドイツ鳥学会誌で創刊が1853年です。植物画もそうですが、近代の自然科学を牽引した国はイギリスやドイツなどカトリックではない

          断片の鳥類学

          断片の植物学

          昨年、朝ドラの「らんまん」を大変興味深く観ていました。「日本の植物学の父」牧野富太郎がモデルでした。私も植物が好きなので、集める断片に植物画を加えたいと常々思っていました。  ヨーロッパでの初期の植物画は薬草類探し求める人々を助ける目的で制作されました。修道院に付属する庭に植えられていた植物も専ら薬草が中心でした。そのため毒草と間違えないよう写実性が求められました。  17世紀になると植物画家達は裕福なパトロンが自分の庭で育てている珍しい植物を絵にするよう注文されます。薬

          断片の植物学

          聖なる断片

          ラテン語で書かれた聖書の一片です。ラテン語の教養が無いので、断片的にわかる部分を解読しますと“Evangelium Secundum Lucam(ルカによる福音書)“と書かれている箇所がありました。 上部には“Festa Augusta(8月の祭り)”とあり、キリスト教の祭りに関することが書かれてあるのかもしれません。 別の箇所を見ると8月6日の「主イエスの変容」について書かれてあったり、詩篇76,83,88があったりします。カトリック教会は、毎年8月6日を主の変容の祝日

          聖なる断片

          断頭台の女王

             16世紀のスコットランド女王メアリー・スチュアートの肖像画です。エリザベスⅠ世の王位を脅かす存在として捕らえられ、19年間の幽閉の後に1587年に処刑された「断頭台の女王」。  絵を見ていただくとわかりますが大変美しい女性でした。身のこなしも優雅でファッショナブル。その劇的な生涯から亡くなった直後から多くの人々の関心を呼び、特に19世紀の劇作品から音楽まで彼女をテーマとした作品が次々と作られました。本資料は19世紀に制作されたクロモリトグラフという多色刷りの石版画です

          断頭台の女王

          遺作の断片

           「東海道中膝栗毛」で有名な十 返舎一九作の本の表紙です。上下巻合わせると一枚の絵になります。本資料は序文に「十返舎一九遺稿」とあり、一九の死後に出版された作品で、現段階では、一九最後の作品といわれています。  この作品は近江国(滋賀県)の櫻谷(さくらだに)藩の真野兵太郎(時連)が宝剣を手に入れてから、自分の才能に慢心してしまい、邪道に落ちて、最期には非命の死を遂げる様子を描いています。  絵は歌川国貞。「香蝶楼国貞」という名は1827年(文政10年)から用いています。こ

          遺作の断片

          日本の発見3

          『Le Japon』の挿絵の続きです。  なんだか立派な葬式の様子です。奥に武士がいて、6人の僧侶が楽器を奏でています。ヴィルタールが空想で描いたのではないかと思っていましたが、いやいや違いました。国立国会図書館のデジタルコレクションに徳川将軍葬儀図という資料を見ることができます。そこに描かれている将軍の棺が本資料に描かれているものと酷似していました。ということは将軍や藩主クラスの人物のお葬式の様子と考えてよいのではないでしょうか。  そしてもう一枚。十二単と思しき着物を

          日本の発見3

          日本の発見2

          『Le Japon』の挿絵の続きです。 明治5年、国民の初等教育の充実を第一の急務と考えていた政府は学制を発布し、学校教育が始まりました。学制はフランスの制度をモデルとし、各学区を作り各学区に小学校を1校設立することに決めました。 筆者の住む山形県を例に挙げてみますと学制が発布する1年前の明治4年に米沢県庁より「学制改革の達」が出されます。どういった内容かというと士族の師弟のみを対象としていた藩校から「四民一途」の理念に従い身分職業の差別無く学制を「人材教育」の制度とし、

          日本の発見2

          日本の発見

          本資料はフランスの著述家 エドモン・ヴィルタールが明治16年に著した『Le Japon』の挿絵です。何枚か手に入れましたので何回かに分けてご紹介します。 1880年代、海外から日本へ渡り数々の土産物や情報を手にして帰国した人々が次々と日本に関する本を出版しました。ヨーロッパではジャポニスムといわれる日本趣味が流行し、日本に興味津々でした。 意外なことに日本の海外公演のパイオニアは能や歌舞伎ではなく旅芸人でした。エキゾチックな極東の芸人達はヨーロッパで注目され、日本文化の

          日本の発見

          お洒落な断片

          19世紀から20世紀初めの女性たちはレースを付け襟や洋服、手袋、パラソルショールにハンカチなど身の回りのオシャレに利用していました。レースの模様には沢山のデザインがあり、それらを交換で付け替えれば簡単でお金をかけずにオシャレができるというわけです。  19世紀に産業革命が起きるとそれまで手仕事で作られていたレースも機械化によって安価に大量生産が可能になりました。しかしながら手仕事のレース編みが無くなった訳では無く、女学校や花嫁学校の重要な課題であり、裕福な女性のたしなみとし

          お洒落な断片

          近代教育の始まり

          明治5年、学制が制定されて近代的な学校教育が始まりました。当初は欧米の教科書を翻訳した『小学読本』が用いられていました。明治19年に教科書検定制度ができ文部省自らが教科書を作り始めます。 本資料は教科書会社の集英堂本店の様子が描かれています。集英堂は日宗生命保険株式会社と同じ日本橋にありました。前回、ご紹介した鉄道馬車が描かれています。この絵を見ると乗務員はラッパを吹いています。汽笛みたいなものでしょうか。当時は乗合馬車の馬丁がラッパを吹いていたようですので、鉄道馬車も同じ

          近代教育の始まり

          不思議な保険会社

          洋風の塔の絵に「日宗生命保険株式会社」の印字。なにやら不思議な印刷物です。 この建物は元々明治31年に吉沼時計店が建設した6階建ての時計塔でした。明治35年に日蓮宗門信徒が設立した日宗生命保険株式会社に譲渡され、譲渡されると時計塔の文字盤を白く塗りつぶし「南無妙法蓮華経」と墨書して世間を驚かせたそうです。確かによく見ると文字盤に文字のようなものが書かれてあります。 広告の下には鉄道馬車が描かれています。これは明治15年に開業した東京市街馬車鉄道です。新橋と日本橋を2時間で

          不思議な保険会社

          開化の断片

          2016年、私は骨董市で1冊の本を買いました。その本は女学校で使われた賛美歌の本でした。お店の人からは大阪の女学校で音楽の先生をやっていた方のものと聞きました。 本は残念ながら手放したのですが、本に小さな断片が挟まっていました。ウヰルミナ女学校での卒業式と音楽会、文学会を開催する案内です。見た瞬間一目惚れしました。 実はこの展覧会を開催しようと思ったのは、この断片を世に出したいという理由からです。 ウヰルミナ女学校は現在の大阪女学院のこと。1904(明治37)年に設立さ

          開化の断片