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書評(国内ミステリ)

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2021年10月の記事一覧

[書評]自分の髪の毛で目を縫われた姉は、『影踏亭の怪談』(大島清昭)

[書評]自分の髪の毛で目を縫われた姉は、『影踏亭の怪談』(大島清昭)

第17回ミステリーズ!新人賞を受賞した「影踏亭の怪談」のほか全4作を収録した連作短編集です。
著者は幽霊や妖怪を研究している方なので、怪談をミステリの落とし込みつつも、理屈では解決できないものの恐怖をミステリと同時に味わうことができます。

受賞作「影踏亭の怪談」は、怪談作家をしている姉が自室で椅子にガムテープで固定され、両目を自らの髪の毛で縫われるという異様な状態を弟が発見することから物語は始ま

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[書評]20年の眠りから目覚めた惨劇『新装改訂版 夏と冬の奏鳴曲』(麻耶雄嵩)

[書評]20年の眠りから目覚めた惨劇『新装改訂版 夏と冬の奏鳴曲』(麻耶雄嵩)

真宮和音(まみやかずね)という少女のもと、かつて島で共同生活した4人が、20年の歳月を経て再び「和音島」に集まった。
そこに取材で同行した如月烏有(きさらぎうゆう)と舞奈桐璃(まいなとうり)は、その孤島で殺人事件の巻き込まれて……!?

700ページ超えの大ボリュームの本格ミステリです。
裏表紙にメルカトル鮎の名前が登場したので手に取ったのですが、なんとメルカトル鮎が登場するのはラストの2、3ペー

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[書評]彼の前では犯罪すらひれ伏す『メルカトル悪人狩り』(麻耶雄嵩)

[書評]彼の前では犯罪すらひれ伏す『メルカトル悪人狩り』(麻耶雄嵩)

麻耶雄嵩が描く傲岸不遜な銘探偵の短編集。
事件が彼を招くのか、彼が事件を招くのか?

メルカトル鮎と呼ばれる、シルクハットはタキシードの「銘」探偵です。
本書が久々の登場との。
私はこの短編集から彼の活躍を読み始めたのですが、大丈夫!
彼のキャラクターは初めて読む人にかなり効いてくるので、初めて会った気がしないと思います。

今回彼が挑むの8つの事件。
・愛護精神
・水曜日と金曜日が嫌い
・不要不

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