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[書評]彼の前では犯罪すらひれ伏す『メルカトル悪人狩り』(麻耶雄嵩)

麻耶雄嵩が描く傲岸不遜な銘探偵の短編集。
事件が彼を招くのか、彼が事件を招くのか?

メルカトル鮎と呼ばれる、シルクハットはタキシードの「銘」探偵です。
本書が久々の登場との。
私はこの短編集から彼の活躍を読み始めたのですが、大丈夫!
彼のキャラクターは初めて読む人にかなり効いてくるので、初めて会った気がしないと思います。

今回彼が挑むの8つの事件。
・愛護精神
・水曜日と金曜日が嫌い
・不要不急
・名探偵の自筆調書
・囁くもの
・メルカトル・ナイト
・天女五衰
・メルカトル式捜査法

中には2~3ページほどしかないものもありますが、その掌編のようなミステリでさえメルカトルの魅力を知らしめるものにしかなりません。

私が特におすすめなのは、「囁くもの」と「メルカトル・ナイト」。
「囁くもの」はあるお金持ち一家で起きる、言葉はおかしいですがしごくまっとうな殺人事件。
事件の起き方、推理の方法、解決のされ方など、短編ながらも長編を読んでいるのかのようなボリュームがあると思います。
「メルカトル・ナイト」はラストのどんでん返しが爽快です。
小説家が「命を狙われているかもしれない」と依頼に来るという設定自体に、私はクラっときてしまいます(有栖川有栖の短編に同じような設定のものがあり、私はとても好きなのです。ちなみに、どんでん返しではありません)。

私はミステリの設定ってとても大切だと思うのです。
舞台となる場所や、依頼の内容、その依頼の仕方など、凝っていれば凝っているほど事件が際立ち、犯行が鮮やかなものになると思います。
勝手な思いなのですが、本格ミステリにはそういった「凝った舞台」「凝った設定」を私は求めがちです。

今回の短編集はそんな舞台設定や、事件の起き方の工夫がとても好みでした。

彼と初対面でも臆面なく、活躍を楽しめると思います。

はるう

「本が好き!」でも少しちがった書評を書いています。よかったら読んでみてください。手違いでkindleになっていますが、紙の本で読んでいます。


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