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「20年前のちーちゃんから30歳の千裕さんに手紙が届きましたよ」 母からの連絡には、フェルト…
どうしても書きたかった。理屈ではない。地平線の彼方へ沈みゆく太陽はまた昇ってくるのだろう…
名も知らぬ種を埋え、芽が出て、すらすらと茎を伸ばす。 その間に私は花曇りだからと大学を辞…
4歳の息子は今年の6月から保育園に通っている。 顔見知りのいない園にいきなり放り込まれた彼…
白い布に包まれた小さな木の箱は、膝に乗せるととても軽かった。 小柄だった祖母は、あの頃よ…
「飲むよ、飲むよ!」 泡と琥珀色のビールを割合をきっちり3:7に注ぎきって、満足げな顔で…
呼吸が、どこまでも深くなることを知る。 背筋をみえない糸が引き上げて、心をぴたりとあたたかな暗闇が覆う。 思考が消えて、無重力にも似た感覚が心をすっぽりと包み込んだなら、息を吸い、吐く感覚だけに身体を委ねる。 その後、抜刀することもあれば、眼前に拳を突き出すこともある。 意識をぎりぎりまで手放せば、そこに未来はなく、過去もない。 「ただ、ある」 一通りの動きが終わった後、意識は戻る。動いていた記憶はあるけれど、「動かしていた」という意識はない。 たったそれだけ。
わたしをはじめて包んでくれた温度のことを記憶にあるかと尋ねられればそれはすこし難しくて、…
「おはようございまーす」 「おっ、今日は早いね」 「早く行こうってみーちゃんと約束したん…
生まれたときに、あたえられた一冊のnote。 そこに一番最初に書かれるのは、親が付けてくれた…
オレンジ色のカーブミラーの真下、田舎特有の煙った匂い、家々を線結ぶ郵便バイクの音が響く、…
アラフォーの頃の私は本当に「残念な、とちくるった」人間だった。 何かを成さねば人とし…
元バンドマンのくせに、こんな事を言うと意外に思われるかもしれませんが。昔からピアスやタト…
エッセイとは、紙飛行機だと思った。18時の帰宅ラッシュにもかかわらず、たったの2両しかない列車を眺めながら小さくつぶやく。 最初は驚いた。帰宅ラッシュの時間にたった2両しかない列車に。けれど最近は驚かなくなった。22歳のくせに、都会の人口密度に住みたいという欲が減った。コンビニもスーパーもカフェも銀行もある。ネットが繋がっている。車もあるし駅も空港も近い。家の前の道も部屋の中も広々としている。宅配ボックスが備わっているアパートなのに、家賃が安い。 人の手で作り上げた建築物