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動物と尊厳

「動物園に行こう!」

 そう言われて嫌な気持ちになる人はいないと思う。少なくとも私の周りにはいなかった。

 晴れた日の休日、親が子供を連れて動物園に行く。不思議な光景ではない。

 しかし私は違った。子供の頃、心の底から動物園が嫌いだった。理由は単純明快。
「鉄格子の中に閉じ込められ、見せ物にされていて可哀そう」

 檻の中にいる動物の叫びが私の心を締め付けるようだったのを今でも覚えている。


 今は違う。今では別の考え方もできるようになった。
 草食動物は外敵がいない環境で長生きできる。肉食動物も狩りの必要がない。草食・肉食に関わらず、病気になったら獣医師に診てもらえる。餓死することもない。長生きできる。それゆえに動物園にいる動物の方が、野生にいる動物よりも恵まれている。

 そう考えれば別に可哀そうでもないが、子供の頃の私はそこまでの考えに至らなかった。

 動物園に行きたくなかった子供の頃、母親はよく博物館と美術館に連れて行ってくれた。どちらかと言えば、博物館よりも美術館の方が多かったと思う。母親の趣味に付き合わされている子供の気持ちも考えて欲しいものだ。

 話が逸れた。

 つい先日とあるテレビ番組で、動物園でロケをしている芸人がペンギンのいる池に落ちた。その芸人はMCから「落ちるなよ、落ちるなよ」というお馴染みのフリがあって落ちたらしい。

 その後、当該動物園がTwitterで『今後は取材ロケの受け入れについては報道側に動物の尊厳を傷つける様な行為がないように厳しく対応、、、、

 素直にだった。

 これは当該動物園に限った話ではないが、野生にいた動物を引っ捕らえ鉄格子にぶち込み、人間の見せ物にした上で金銭的利益を上げる。これは明白な事実だ。

 『見せ物である展示物が傷つく(肉体的に)恐れがあるため池に落ちる行為は許せない』等々の展示動物が肉体的に傷つくことを動物園側が懸念するのは理解できるし、それは抗議するべきだと思う。

 ただ動物の尊厳を語る資格はない。尊厳とは非常に重い言葉だ。

 一生懸命お世話をしているから動物園にいる動物は幸せに違いない。それって本当? それは自らの願望を押し付けているに過ぎない。動物の精神状態を目に見える形、数値化するなど不可能なのだから。

 事実として、冷たい鉄格子の中に囚われ一生を過ごす動物がいる。人間の無期懲役・終身刑に近い。


 動物園にいる動物は恵まれている。という考え。動物園にいる動物は無期懲役に近い。という考え。
 それら全ては個々の価値判断基準・哲学に大きな比重があり、個々によって捉え方が全く違う。
 ただ一つ言えることは、動物が本当のところどのように思考しているのかというのは誰にもわからないということだ。当然わかるはずがないのだ。

 ただ既成事実だけを見た時に、動物園が動物の尊厳を語るのは絶対に違うと思った今日この頃である。


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