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愛すべき小者・ジェシーのとめどない魅惑の引力 「コンフィデンスマンJP ロマンス編」

目に見えるものが真実とは限らない

「コンフィデンスマンJP」とは?

「コンフィデンスマンJP」はもともとフジテレビで放送されていた連続ドラマで、信用詐欺師の3人組・ダー子、ボクちゃん、リチャードが「オサカナを釣り上げる」(相手を完膚なきまでに騙し切って、大金を巻き上げる)、コメディである。「オーシャンズ11」とか、「スティング」とかと同じジャンルの作品、ということだ。

連続ドラマは1話完結で、毎回ドラマの最後に「また、あの3人に騙された!」と観ているこちらが思わず唸ってしまうのが、お約束の形となっている。そしてこのフォーマットは、映画版でも踏襲されている。ダー子を演じるのは長澤まさみさん、ボクちゃんを演じるのは東出昌大さん、リチャードを演じるのは小日向文世さんだ。

本作の脚本家・古沢良太さんは、「リーガル・ハイ」「デート〜恋とはどんなものかしら」「エイプリルフールズ」などの作品でも知られる、売れっ子脚本家である。「コンフィデンスマンJP」では、至る所に有名な映画のパロディシーンが散りばめられているので、古沢良太さんはけっこう映画好きなのではないかと勝手に思っている。

「コンフィデンスマンJP」の世界観と作品自体をともに愛する私は、連続ドラマ全話とスペシャルドラマ、すべて観ている。映画版1作目となる、「コンフィデンスマンJP ロマンス編」は、三浦春馬のファンである私にとって、心躍る作品の一つなのだ。

簡単に、現在までの公開済作品について、関連図を示しておく。

コンフィデンスマンJP_相関図

春馬くんを愛でるため、彼がジェシーとして登場するシーンに絞って書くのが、春馬くんを愛するものとしての基本スタイルではあるのだが、私は「コンフィデンスマンJP」が大好きなので、作品そのものに触れないわけにはいかない。だから今回は、大きく「ストーリー編」と「ジェシーの魅力編」に分けて、本作品の魅力を語ることにする

ストーリー編:香港でオサカナ釣っちゃうよ♪

ちょび髭(瀧川英二さん)が小さいオサカナしか持ってこないことに心が躍らず、退屈していたダー子。テレビのニュースから、香港の「氷姫」と称される女帝・ラン・リウをターゲットに、お金を巻き上げることを思いつく。いつもの通りなのだが、ダー子のテンションが異様に高い。ペディグリーペットという、初歩的な詐欺を仕掛けてきたモナコ(織田梨沙さん)を仲間にひき入れ、いつものメンバーにモナコを加えて、ともに香港へ渡る。

時折出てくる赤星(連続ドラマ第一話「ゴッドファーザー編」のオサカナ。演じるのは江口洋介さん)が、相変わらずめちゃくちゃ怖い。とても「救命病棟24時」の進藤先生と同じ人とは、思えない。鳥取砂丘でダー子たちに騙されて大声で叫んでいたのに、懲りない人だ。ちなみに、赤星は映画版2作目の「プリンセス編」にも登場する。

香港でラン・リウの周辺情報を探り当て、彼女に近づいていくとそこにいたのは、かつて恋人同士(?)だった恋愛詐欺師・ジェシー(三浦春馬さん)。どうやら、ジェシーもラン・リウをオサカナとして狙っているらしい。

ラン・リウを演じる竹内結子さんが、とても美しい。竹内結子さんは「ランチの女王」以来ずっと見続けているが、本当に良い年の取り方をしていて、年を経るごとに美しくなっている気すらしている。加えて、年齢を重ねるにしたがって変わってきた役どころも、大好きだった。この先もずっと見続けていたかった女優さんの一人だ。

ストーリー編:ラン・リウを釣り上げる

ジェシーはしっかりラン・リウの懐に入り込んでいるが、なかなか落とせない。一方、占い師としてランに近づいたダー子も手詰まりだった。一緒に組もうと働きかけるジェシー。ダー子とジェシーは共に、一芝居打って、ラン・リウから秘宝・パープルダイヤを奪うことに成功する。

「一芝居」と一言で表してしまったが、このシーンの竹内結子さんは、本当に素晴らしい。元夫のもとを訪問したときの、傷ついた表情、その後ジェシーに会った時の泣き顔、慟哭・・・今まで私がたくさんドラマや映画で観てきた、竹内結子さんの魅力的な演技が、このシーンに凝縮されていた。あまりに素敵で、何度も繰り返し観てしまう。
このシーンを観るたびに、ドラマ「白い影」の中居君に向けた顔や、「夏の恋は虹色に輝く」のピアノ店で号泣する顔を、どうしても思い出してしまう。

奪ったパープルダイヤを持って、高跳びの為ヘリポートへ行く。ヘリに乗っていたのは何と、赤星栄介(江口洋介さん)。ジェシーが赤星の手下であることが明かされる。

ラン・リウも駆け付け、ヘリポートは戦闘モードに突入するが、三つ巴の戦闘モードになった後の、ジェシーの小者感が半端ない。誰かの背後にそそくさと隠れ、後ろのほうから赤星に「会長、まずいですよ!」と声をかける。最初からダー子に「恋愛詐欺しか脳のない男」と言われていたが、誠にその通り。ホント、ここまでのカッコよさは何だったのか。一瞬でジェシー株は大暴落である。いっそ、すがすがしいくらいだ。

ストーリー編:本当のオサカナは・・・?

ヘリポートから赤星とジェシーが逃げてからは、最後のネタバレにつながるので、ぜひ作品を観て、騙された!と憤慨してほしい。
そしてここから後のジェシーは・・・ 信じられないほど情けない。お腹を抱えて笑ってしまうぐらい情けない。

今回も、またダー子とボクちゃんとリチャードに、気持ちいいほど騙された。まったく、あの3人には参ってしまう。やはり、最強で最高のコンフィデンスマンだ。これだから、「コンフィデンスマンJP」はやめられないのである。

いつも、無駄なシーンがひとつも無いことにも、感心してしまう。香港で何気なく、みんなでブルース・リーの黄色い衣装を着て、食事してるシーンすらも。最後の最後のシーンとつながっているので、気を抜かないで観てほしい。

とてもスッキリ気持ちよく騙されたのだが、これだけは言いたい。小栗旬の使い方を盛大に間違っている(笑)。耳かきって!
(連続ドラマ第3話に、スケベ顔で「耳かき」をせがんでくる、でんでんさん演じるジイさんが登場する)


ジェシーの魅力編:オープニングからダー子と再会まで

いきなりオープニングから、ラブラブのジェシーとダー子の回想。これ贅沢過ぎないか。ジェシーの笑顔にいきなりやられる。

あのオープニングのシーン、どこかで観たことがある気がするのだが、何の映画でだっただろう。イマイチ思い出せない。

香港で、ラン・リウのもとを占い師として訪れたダー子とモナコに、助け舟を出したジェシー。ジェシーの第一声は、「どうぞ」。ラン・リウにアイスティーをぶっかけられたダー子に、タオルを手渡しながら、発したその声にもう魅了される、声フェチの私。
春馬くんの声は、やはり耳に心地良い。

「僕はどうでしょう? 僕のことを見ていただけませんか?」というジェシーに、ダー子は占い師として、こう言う。
「自由を愛し、旅をする人生。家庭や恋人など、自分を縛るものを嫌う。家族とは縁が薄い。生魚が苦手。健康体だが、左の脇腹に怪我をしたことがある」

表面的ではなくて、2人は深く関わったことがあるのだな、と感じさせる台詞だ。春馬くんは、「家族と縁が薄く」「縛られるのを嫌う」ジェシーのバックグラウンドを、どう捉えて演じていたのだろうか。あくまで「自己中心的」な部分を強調し、「徹底的に女性を利用する詐欺師」を貫くことで、表現しようとしていたのではないか。そんな風に思っている。
どこで具体的にそう感じたか。ヘリポートのジェシーが赤星の手下と判明するシーンで、それまで常に優しかった声が、急に冷たいトーンに変わるところだ。女は利用するもの。そんなジェシーの冷たさを感じる一瞬だった。

もっとも、「コンフィデンスマンJP」のもつ世界観そのものが、ジェシーを滑稽な方へ強く引っ張るので、いつもの春馬くんの細やかな部分は、大半目立たなくなっている。

ジェシーの魅力編:回想シーン

なかなかぶら下げたエサに喰いつかない、ラン・リウに悩むダー子が、ジェシーに連絡して百万ドルの夜景をバックに話すシーンがある。
「・・・ラン・リウよ。あなたに落ちるわけない」
「君は落ちたのに?」
「ニューヨークが忘れられないよ。君と愛を育んだ、あの日々はさ」

2人がそう話したあと、ニューヨークで組んで「恋人のフリ」をしていた時の、回想シーンが入る。窓のところでピストルを構えるダー子の手に、後ろからジェシーが手を添える。うん、「レオン」のパロディだな。ろくろを回すダー子の手に、また後ろからジェシーが手を添える。うん、今度は「ゴースト」のパロディか。やっぱり古沢良太さん、映画好きだな。

いずれの回想でも、2人がとても綺麗だ。メイキング映像でダー子役の長澤まさみさんが、カメラのレンズに写る春馬くんをみて、「コンフィデンスマンでは見たことのないイケメンがいる」と言っていたのを思い出す。長澤まさみさんと春馬くん2人だと絵面が、この上なく映える。
特に、ろくろのシーンでは、ジェシーの美しい手と、裸の上半身に見惚れる。恋愛詐欺師役とはいうものの、詐欺にかけようとしているのはきっと、スクリーンの向こうの全ての女性に違いない。

回想に続く、ジェシーの台詞もまたキザなことこの上ない。
「彼女が本当に欲しがっているものは何か。一面だけにとらわれると、その奥にあるものを見逃す。どれだけ深く相手の心を知るか。基本だぜ」
そして「君への気持ちは変わらないよ」と来た。

さすが、恋愛詐欺師。ダー子はニューヨークで組んだ時、翻弄されたりしなかったのだろうか? そのあたりについて実際のことは語られていないが、何となく「ダー子自身もジェシーに翻弄されたことがあるのだろうな」とは感じる描き方になっている。

もし私がジェシーに会ったなら、もちろん翻弄されっぱなしである(誰も聞いていない)。だからこそ、「天才恋愛詐欺師」なのだ。春馬くんのファンでなくとも、あれなら騙されても仕方ないかなと思ってしまう女性は、きっとたくさんいるに違いない。

ところでこのシーン、なぜか私は頭に「ノッティング・ヒルの恋人」のヒュー・グラントが頭に浮かんで仕方なかったのだが、後でジェシーはヒュー・グラントを意識してキャラクター作りがされたらしい、という話を聞いてものすごく納得した。ビバ、私の頭脳。

ジェシーの魅力編:真っ赤なスーツ

恋愛詐欺師ジェシーに対抗するため、占い師として「赤が幸福をもたらす」とラン・リウに吹き込むダー子とモナコ。

ラン・リウが競馬場を訪れた際、赤いネクタイのボクちゃんを仕込むが、ジェシーが何と、赤いスーツで登場。
・・・赤いスーツよ。赤いスーツ。もう一回言いますよ。赤いスーツ。あんなに赤いスーツが似合う人いる?

ボクちゃんの台詞じゃないけど「Jリーグ初代MVPを取った時のカズかと思ったよ」。

赤いスーツがこれほど似合うのは、若き日のカズか、三浦春馬以外にいないのではないかと思ってしまうほど、ハマっていた。

確かに、ボクちゃんじゃなくても「勝てる気がしない」。

そういえば、うちの夫はどこかのホテルで若き日のキング・カズと、エレベーターの中でたまたま一緒になったことがあるそうだ。緊張して「握手してください」の一言も言えなかったらしい。真にカッコいい男は、男性すら緊張させてしまうものなのかもしれない。

ジェシーの魅力編:ラン・リウと

ラン・リウの火傷跡に口づけをして、「綺麗だよ」とつぶやき、キスしようとするジェシー。恋愛詐欺師の本領発揮だ。この場面、本当に2人とも麗しくてずっと観ていたくなる。
でも、ほんのわずかで終わってしまうのだ。もっと長く観ていたかったのにとつい、思ってしまう。

その後、ラン・リウが元夫に振られて傷ついた後、ジェシーが外で待っていて「おいで」と手を広げる。私もそんな風にされて、腕の中に飛び込みたい。いやいや、そこじゃなくて・・・私が言いたいのは。

ストーリー編でも触れたけれど、その瞬間のラン・リウの表情が、かつて「日本のメグ・ライアン」と言われた竹内結子さんの真骨頂のように思えて、本当にうっとりしてしまうのだ。
竹内結子さんと三浦春馬さんの共演がもっとあったらな、とつい思ってしまう。「夏の恋は虹色に輝く」みたいなドラマを、あの2人で観たかったという思いが、私の頭から消えてくれない。

いつか私があちらへ行ったとき、2人で演じてみせてと言ったら、演じてくれるだろうか。「夏の恋は虹色に輝く」のあのワンシーンを。松潤、ごめんね。そのぐらいの妄想は許してね。春馬くんの弾き語る「ハッピーバースデー」で、しゃくり上げるほど号泣する竹内結子を観たいのよ(第7話)。妄想だけど。

※ご存知ない方のために少しだけ紹介


番外編:プールサイドのジェシー

最後に、プールサイドを歩くジェシーの姿が出てくるのだが、春馬くんの腹筋に萌える。やっぱり、普段からすごく鍛え上げていたのだな。

本作の撮影は2018年7月とメイキング映像で出ていて、1か月ぐらいの期間のようだったから、春馬くんのスケジュール上はツーリストの放送直前ぐらいか。銀魂2の公開直前で、宣伝とかもあっただろうから忙しい中だっただろうに、普段から鍛えていたんだなと、またここでもストイックさを感じてしまう。

番外編・春馬くんの広東語

本作の舞台は、香港。キャストの皆さんは広東語をしゃべる必要があったわけだ。メイキング映像に、広東語に悪戦苦闘するキャストさんたちが出てくるが、春馬くんはワンカットも出てこない。「真夜中の五分前」って舞台は上海だったから、北京語じゃないの? 広東語も話せるの? マジか。と思った瞬間だ。台詞を覚えただけかもしれないけど。

終わりに

「コンフィデンスマンJP ロマンス編」において、ジェシーはピエロだ。物語のど真ん中から後半、どんでん返し直前までは強気でキザな恋愛詐欺師だが、どんでん返しを境にものすごい小者感が、とめどなくあふれ出る。連続ドラマ第1話から「ゴッドファーザー」として出演している赤星に比べたら、ちっちゃい、ちっちゃい男である。

そんなちっちゃい男をすごく魅力的に演じ切った、三浦春馬という役者に心の底から拍手を贈りたい。
「ジェシーの魅力編:オープニングからダー子と再会まで」でも触れたが、ジェシーのバックグラウンドを自分なりにきっちり落とし込んで、作品の世界観の中で成立しうるラインを見極め、演じていたように感じられた。

そして、このレビューで初めて触れるが、私は竹内結子さんのファンでもあった。もちろん、春馬くんへの思いに比べたらちっぽけなものである。だけど、「ランチの女王」、「プライド」、「白い影」、「薔薇のない花屋」、「夏の恋は虹色に輝く」、「ストロベリーナイト」。ほかにもマイナーな作品を何本か観ているし、映画は「サイドカーに犬」、「いま、会いに行きます」、「チーム・バチスタの栄光」。全部、全部好きな作品だ。最近のお気に入りはHuluオリジナルの「ミス・シャーロック」だった。

本作は竹内結子さんの魅力も、存分に楽しめる作品だった。特に最後のシーン。あの笑顔がもう観られないのかと思うと、胸が痛い。

春馬くんにも、竹内結子さんにも、私は絶対にさよならは言わないし、ご冥福も祈らない。願わくばまた、同じ時代に生まれ変わって、会いたい。そして、次に会う時はどんな仕事についているか分からないけれど、また応援したい。

神様にお願いを聞いてもらえるように、真摯に、頑張って生きようと思う。




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