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女子を惹きつける、テクノロジー教育コンテンツのつくり方。

わたしは、「まぜテクネ」という10代が無償利用できるテクノロジーの居場所を運営しています(まぜテクネの理念や目指すものについてはこちらから↓)。

1/28にまぜテクネとして初のイベントを開催したのですが、予想を大きく超える反響があり、特に女子を惹きつけるイベントとなりました。今日は、そのイベントの内容や、女子が興味を持つコンテンツの作り方について紹介していきます。


女子を惹きつけたいと思った理由

「まぜテクネ」という名前の由来は、いろんなテクノロジーや人、そして地域・社会を「まぜまぜ」したいという想いから来ています。性別・障害の有無・家庭環境など、さまざまな属性を超えた繋がりの中で、自分の好きなテクノロジーを探究し、その中で自分の好きを見つけたり、自信をつけたりしてほしいと思っています。そして、様々な属性が混ざり合うからこそ、将来の選択肢を広げたり、自分自身について深く考えるきっかけになったりする場にもなるのではないかと考えています。

まぜテクネの内観

まぜテクネをつくる前、先行して10代がテクノロジーに触れる場を提供している施設へ見学に行ったのですが、その際スタッフの方に「小学生がたくさん来ると、中高生があまり来なくなるかもしれない」というような話を聞きました。

わたしは、この話は居場所を運営する上で、重要な核心の一つであるような気がして、同時に様々なことに当てはまるような気がしました。小学生と比べると、中高生は時間的にも来館しにくいことが考えられます。小学生たちは宣伝すると来てくれる可能性も高いですが、小学生のコミュニティが居場所で完成しきってしまうと、後から中高生は入りにくいでしょう。同じようなことが年代だけでなく、性別や障害の有無、学校に通っているかどうかという指標にも当てはまるような気がしました。

だからこそ、初めはマイノリティになりがちな層に向けた施策を積極的に打っていくべきではないかと考えました。テクノロジー関連では、男子と比較すると女子もマイノリティになりがちです。男子で居場所が埋め尽くされてしまうと、女子が来づらくなってしまうかもしれない。まぜテクネとして初のイベントだからこそ、女子が来やすい雰囲気をつくりたいと思っていました。

一般的に女子をターゲットとしたテクノロジー関連のイベントを開催する際、「女子限定」とか「ガールズデー」みたいに、直接的に対象を絞る場合が多いのですが、わたしはこれに少しの違和感を覚えていました。

女子がテクノロジーに触れる機会をつくる一つの手段として、対象を限定することは良いことだと思います。しかしその根底には、「女子が来づらい」ことだとか、「女子が興味を持ちにくい」ことが前提となっている雰囲気がある気がしていました。そして、そのイベントの内容に魅力を感じて、「行きたい」と思っている男子の可能性を潰してしまうようにも感じました。

マイノリティになりやすい層に来てもらいたいとはいえ、わたしが目指すものはまぜテクネの名前にも込めた「混ざり合い」、つまり「インクルーシブ」なテクノロジー文化です。本当の意味でのインクルーシブは、対象を限定しない上で、様々な属性がごく自然と交わることなのではないかとわたしは考えています。

そこで、今回のイベントは女子を「自然と」惹きつけるテクノロジー教育コンテンツにしたいと思いました。

女子ウケするコンテンツ案の出し方

まぜテクネの館長をしているわたしは20代の女性ではありますが、想像できる範囲には限界があります。10代の女子の感覚は、10代の女子だからこそわかるものです。

ある日、まぜテクネのボランティアスタッフをしてくださっているハセベさんが、毎週土曜日に開催している定例ミーティングに中学生の娘さんを連れてきてくださいました。その娘さんが、まぜテクネのイベント案をいくつか提示してくれました。

「アクリルスタンドとかの推し活グッズを自作するのが流行っていて、それを作ってみたい」とか、「Vtuberは自分で作れるらしくてやってみたい」とか、わたしを含めた大人のスタッフからは想像が付かないアイディアをたくさん出してくれました。

その結果、小学生向けにはiPadでイラストを描いて缶バッジづくりをするイベントを、中高生向けにはAIで画像生成してVtuberのように動かすイベントを開催することとしました。

今回のイベントのチラシ

市内の小中学校にこのようなチラシを合計900枚配布し、イベントの広報を行いました(チラシは、女子が興味を持ちそうなお洒落なイメージにデザイン担当のヤマダさんが仕上げてくださいました)。その結果、21名の児童生徒からお申し込みがありました。その中で女子は19名。当日の定員はすぐに埋まり、別日で体験できる日時をセッティングするほどに反響率が高いイベントとなりました。

缶バッジづくりイベント

ここからは、イベント当日の様子について紹介していきます。まず、小学生向けに開催した缶バッジづくりイベントから。こちらのイベントは、前半と後半に分けてそれぞれ定員5名ずつで開催しました。保護者の方や、福祉関連やデザイン関連のお仕事をされている方なども、一緒に見学してくださいました。

缶バッジづくりイベント

iPadでイラスト制作をする際に使用したのは「アイビスペイント」というアプリです。これは、無料である程度充実した機能が利用できるお絵かきアプリ(無料版だと広告は表示されます)。知人の小学生の娘さんが利用しているのを見て導入してみたのですが、イベントに来ていたほとんどの小学生がアイビスペイントを利用したことがあると言っていて、とてもスムーズに取り掛かることができました。

みんな本当にイラストが上手で、スタッフ一同びっくり。イベントの見学に来ていたデザイナーさんも、そのセンスに感心していました。とある保護者に聞いたところ、お家でもよくiPadでイラストを描いていて、YouTube動画で描き方を勉強しているんだとか。

アイビスペイントでイラスト制作中

イラスト完成後、コピーしたイラストを台紙の大きさに合わせて切り取り、缶バッジをつくっていきます。今回のイベントで使用したのは、キャンドゥの缶バッジ制作キット。キャンドゥのキットは100円で1個しか作れないので、セリアやダイソーなどの100円で5個作れるキットと比較すると割高ではあるのですが、その分完成度が高い缶バッジが作れます。何より、接着剤を使用する必要がないのが大きなメリット。

缶バッジ制作中

そして、小学生が制作した缶バッジの数々がこちら。短い時間ではありましたが、自分で描いたイラストが「缶バッジ」というアイテムになって、みんなとても満足そうにしていました。

出来上がった缶バッジ

アイビスペイントというイラストアプリ自体はよく利用していても、それを使って缶バッジを作る、つまり自分が描いたデバイス上の絵が、具体物になるという経験は新鮮だったようです。

ちなみにこのイベント内容、アイビスペイントが公式で出しているこちらの動画を参考に企画しました。同様な内容を検討されている方は、とても参考になるのでぜひ。

Vtuber制作イベント

次は、中高生向けに開催したVtuber制作イベント。こちらは、PC台数や人手などを考えて定員5名の開催。市内に住む中学生たちが参加してくれました。

Vtuber制作体験

まずは、AIを使った画像生成を行います。今回使ったのは、「Stable Diffusion」というアプリ。高性能な画像生成アプリで、写真のエディター画面で条件を英語入力すると、それに合った画像が自動で生成されます(綺麗な画像が生成されるのですが、スペックが高いPCでないと生成にものすごい時間がかかってしまうので、PCスペックに自信がある方におすすめです)。

AIで画像の生成中(写っているハラダさんは外語大出身で、英語での条件入力もお手のものです)

一発ではなかなかイメージに合うものが出てこないのですが、何度か繰り返して条件を入れ直したり、出てきてほしいものに近い画像をStable Diffusionに読み込ませたりすることで、AIが学習して自分のイメージに近い画像を出力してくれるようになります。

ある中学生がAI生成した画像

その後は、Photo Shopなどで自分に合わせて動かしたい部分(口元や目など)を切り抜き、それを「Live 2D」というアプリに読み込ませます。Live 2Dのアプリでは、動かしたい部分の動き方を調整することができます。

この過程はスタッフが忙しすぎて様子が分かりやすい写真はないのですが、スタッフと生徒が楽しそうにお話している写真を載せておきます。まぜテクネは、テクノロジーに触れるだけでなく、様々な属性の人と対話ができる場でもありたいと思っています。10代同士の対話や、大人と10代の対話の中で、新たな気づきだったり、価値観の変容や拡張だったりがあるといいなと思っています。

10代と対話するスタッフ

このイベントの時間内では、生成した画像をVtuberのように動かすところまでは至らず、生徒たちはスタッフが作成したVtuberを自分に合わせて動かす体験をしました。Vtuberってすごいんだなと、自分が制作の過程を経験したからこそ体感できたと思います。

人の動きに合わせて動く画像

Vtuber制作イベントは、大人が技術習得するのもかなり大変なものでした。まぜテクネのイベント担当であり大学生のコウちゃんが、テスト期間の中で流れやスライド、マニュアルを作成してくれました。そんな、コウちゃんがこのイベントの企画のために参考にした動画を載せておきます(コウちゃん、本当にありがとう)。

「また来たい」と言ってもらえるイベントに

このイベントは、スケジュール通りに進まないところもあったり、完成まで至らなかったりと課題もありましたが、参加した10代は総じてとても良い顔をしていました。

そして、何より嬉しいことが「また来たい」と言ってくれる10代がとても多かったこと。イベントが終わったと同時に、保護者に「また来ていい?」と言ってくれる10代がとても多かったこと。

このイベントは、2月のプレオープンと4月の本格オープンに向けたイベントで、「また来たい」と言ってもらえることがこのイベントで最も達成したいことでした。それが実現できたことを、心から嬉しく思います。

10代にとっては、「完成」が必ずしも望む形ではないのかもしれません。テクノロジーを活用して、自分で何かをアウトプットしていくこと、制作していく過程、そしてその隣に誰かがいること、これこそが10代が求めていることであり、テクノロジーの居場所をつくる意味なのだと思います。


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