摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~264
最後にご飯、といきたいところだけど、どうしてランチや定食のご飯って、どこもこんなに『大盛り』なんだろう。
「まるまる残すのもお店の人に悪いし、かと言っておかずもないのにご飯だけ食べることも出来ないし、どうしよう……」
何かいいアイディアはないだろうか。
*
何のアイディアも浮かばないまま『大盛り』ご飯をまじまじと見つめてしまった。我に返ると、いつの間にか周りがざわざわしてきた気がする。辺りを見回すと、私が入った時に比べて、お客さんで席が埋まっていた。お店の入り口近くでは、順番待ちしているお客さんの並んでいる姿が目に入った。
「お済みのお皿をお下げしてもよろしいでしょうか」
一人で席を占領していることの方が、お店の人にも待っているお客さんにも悪い気がしてきた。
「あっ、全部下げてもらってもいいですか」
「かしこまりました」
思わぬ形で、ご飯を食べなくて済んでしまった。
*
「まだお昼過ぎか。これからどうしようかなぁ」
頭の中では、これからの予定よりも今までの出来事について考えていた。
……それにしても、世の中何が起こるかわからないし、どこで何がどう繋がるのかもわからない。さっきまで、あの『大盛り』ご飯をどうしたらいいのか、真剣に悩んでいた。醤油をかけて食べるのか、おにぎりにしてもらってテイクアウトを頼むことが出来るのか、こっそりトイレに持っていって流してしまおうか。どれも現実的ではないし、本当にどうすればいいのかわからなかった。ところが『他のお店より空いている』から入ったのに、お昼のピークの時間だからか、気が付いたら満席になっていて、ご飯を残す罪悪感よりも『食べ終わったのだから早く席を空けなきゃ』という思いが勝って、すんなり『全部下げてもらってもいいですか』なんて言うことが出来た。
それに、ご飯というよりも『糖質』を食べずに済んだことと、あわててお店を出てきたことで、吐くとか吐かないとか、過食するとかしないとかを考える余裕もなくて、結果的には吐かずに食べることが出来た。これらのことは、もちろん始めから予定も想定もしていなかったこと。
鯖の塩焼きが脂が乗ってて意外にもおいしかったことだって、全く想定していない単なる『偶然』だった。物事は、周到な準備をして、何度もシミュレーションして、失敗しないように慎重に取り組んでも、うまくいかない時には全くダメで、今日のように予定も想定もしていなくても『偶然』うまくいくこともある。私も、完璧を追い求めるよりも、もっと『偶然』とか『直感』みたいなものを信じてもいいのかもしれない。
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