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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~252


「決めた!どうなるかわからないけど、パフェを頼んでみよう」

自分の力ではどうにもならないことを抱えていたとしても、それでもその中から楽しみや嬉しいことを見つけて、前を向いて生きていきたいし、生きていかなければ、辿り着きたいどこかへは辿り着けないし、いつまで経っても何も変わらないのだから。

外でパフェなんて頼んだのは、いつぶりだろう。もう、何年もそんなことはしていないような気がした。

「お待たせいたしました~」

メニューの写真よりも、おいしそうで、何となくキラキラして見えた。いわゆる『インスタ映え』って、こういうことを言うのかもしれない。でも私は、インスタとか、ツイッターとか、SNSはほとんど見ていないので、本当のところは良くわからなかった。ツイッターとかをやっていたら、もしかしたら同じ悩みや苦しみを分かち合って、共感してもらえたりするのかもしれない。でも、どうしてもネガティブな方へ自分自身が引っ張られてしまうような気がして、見ることをためらっていた。

このパフェは、私にとっておいしさをもたらしてくれるのだろうか。食べる楽しみをもたらしてくれるのだろうか。食べる喜びをもたらしてくれるのだろうか。それとも、単なるカロリーという『数字』としか捉えられなくて、太る恐怖の元としか考えられないのだろうか……

今度は、しばらくパフェを眺めてしまった。上の方にのせられているアイスが溶けはじめて、しずくが滴り落ちそうになってきていた。

「よし、今日は食べよう。そう決めたのだから」

意を決して一口、口に入れてみる。だいぶ溶けはじめているけれど、冷たくておいしい。バニラの香りがお腹が空いていることを思い出させて、食欲をそそる。甘過ぎず、しつこさも感じさせない爽やかなおいしさが口いっぱいに広がる。何だか、とてつもなく幸せな感じがした。

「あぁ、おいしい」

それからは、どこからどう食べたのか、思い出せないくらい夢中になって食べていた。一口一口を、噛みしめるように、一つ一つを、味わうように、ただパフェを食べることに集中していた。一口一口を大切にしながらも、アイスコーヒーも飲まずに一気に食べ切ってしまっていた。

「う~ん、何だろ、ただおいしかった。それだけ」

口直しに、氷で薄まってきているアイスコーヒーを飲んだ。まだ微かに残る苦味が、パフェの甘さと濃厚さとの、絶妙のコントラストを感じさせた。


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