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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~248


時間帯が悪かったのか、ゆっくりと落ち着けそうなお店は、どこも満席に近かった。普段は通らないような路地や裏道も歩いてみたけれど、今の私の気分に合うようなお店は見当たらなかった。ふらつきながら歩き回っていると、木陰にベンチがいくつかある、ちょっと大き目の公園が目に入った。暑さのせいなのか、ベンチに座っている人はまばらだった。

「いい加減私もお腹が空いたから、コンビニで何か買ってきてあそこで休もうかな」

公園のベンチは、木陰とはいえ座面は結構熱かった。ただ、慣れてくると周りの空気に思ったよりも暑さは感じなかった。時々吹き抜ける風が、木々の緑の匂いを一緒に運んできてくれて、真夏のギラギラした風景をほんの少しだけ爽やかに変えてくれていた。

「こんなに強い日差しの中、木陰とはいえ外で食べるなんてさっきまでなら考えもしなかったのに、お店に入れなくて仕方なく来てみると、意外と座ってられたりするのね。私も今まで見た目や雰囲気だけで決めつけて、近寄りもしなかった場所とか、やろうとも思わなかったことがあったのかもしれないなぁ」

暑い中でも、何人かの親子連れや小学生くらいの子供たちが遊んでいた。今どき、休みでも公園くらいしか出かける場所がないのかもしれない……そう考えると、何だかおかしくなってきた。私は、家にこもっていることが出来なくて、暑い中あてもなくフラフラ歩き回って、仕方なく公園に辿り着いた。もしかしたらこの子たちも、出かけたくても出かけられなくて、仕方なく公園に辿り着いたのかもしれない。どこにも行くあてがないのは、私だけではない。

「私だけじゃなくて、摂食障害でも何でもない人たちも自分の力ではどうにもならないことを抱えていて、それでも今出来ること、今行けるところを求めて、その中で楽しみを探そうとしている。楽しもうと前向きに行動している。私も、そんな無邪気さや、どんな環境でも楽しく、笑顔でいられることを見つけなければならないのかもしれないな」

私にもこの先、お腹が減ってることも気が付かないで走り回ったり、おいしいものをお腹いっぱい食べたり、そんな子供の頃のような感覚が戻ってくることがあるのだろうか。何かに深く深く悩んだり、苦しまないですぐに気持ちを切り替えて、何に悩んでいたのか忘れてしまうような、そんな無邪気さが取り戻せるのだろうか。


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