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超有名、でも難解な、あの超長編小説を 読破するヒント            ~「カラマーゾフの兄弟」~

あまりに長編すぎて、あまりに難解すぎて、あまりに登場人物の名前に  なじみがなくて、
超有名小説でありながら、挫折しがちな、この「カラマーゾフの兄弟」。
でもポイントが分かれば、読破でき、かつ、非常に楽しめることが    分かりました。
わたしなりに気づいた点をお伝えします。


(ポイント)
「父親殺し」が軸にあり、サイドテーマとして、
①「家族」、②「恋愛」、③「宗教」そして、④「殺人事件のナゾ解き」が絡み合って 展開されます。
わたしは、「殺人事件のナゾ解き」で、意外な展開になるところを急加速で読み進めました。

一番のネックでもあり大テーマは、③「宗教」かと思います。      以下、③を中心に書きます。

①「家族」:特に「父殺し」に向けての話は、物語全体のリズムと    盛り上がりを作ってくれています。

父親に対する思い、というのは複雑なものが、私にはあります。
超えるべき存在、大きな壁、父のだらしない面への反感、こども(私)への圧力への反発、金と力、
憎たらしい、やっつけてしまいたい、と何度も思いました。
愛情を感じていたかというと、母親に対する思いとは全く違った、負の思いしか、ありません。

もしかしたら、わたしの息子たちも同様に、わたしに対して思っているのかもしれません(汗)・・・。

物語には3人(4人、かもしれませんが)の兄弟が登場しますが、
直情的に父親への反感を現す1番上の兄、父親が誰かに殺されても黙認する2番目の兄、と
父親への負の感情が渦巻いています。
また兄弟の間の複雑な感情も入り乱れています。

そんな、それぞれの感情が、家族の物語としての面白みとして味わえます。

②「恋愛」 これは2人の女性をめぐる、
父や兄弟たちの思いが入り交じっていて、①とともに複雑に絡み合うだけに面白いです。
ちょっと複雑に感じられるかもしれませんが、
「2人の女性、父、3人の兄弟」で相関図を書けば、          非常に単純な構図です。

③「宗教」:この小説の一番のポイントと思います。
小説では、キリスト教への問題提起を通して、神の存在の偉大さについて 考えさせられます。

物語には3人(4人、かもしれませんが)、の兄弟が登場しますが、   2番目の兄が
「神が存在しなければ、全ては許される」と話します。
「神がいない=善悪がない=人々の自由意思が神」という考え方です。

「神は存在するのか」「存在しなかったとしたら全ては許されるのか」
「許すも許さないも、そもそもそういった概念がなくなる」
「神が創ったこの世界は認めない」
「人間は所詮、弱くて哀れな生き物にすぎないのか」
「人間は所詮、自由の重荷に耐えられずパンを授けてくれる相手にひれ伏すだけだ」 

そんな言葉を通じて、人間の弱さに直面させられます。

この小説が書かれた時代背景として、当時のロシアは農奴解放が行われ、
お金への欲求が広がった時代、この、神を否定し、人間の弱さを描くことで、逆説的に
”神の存在の偉大さ”に気づかさせてくれると感じました。

私はキリスト教信者ではありませんが、やはりつらいとき、       逆境にたったとき、
何かにすがりたくなります。

絶対的な善、ゆらぎない価値観が北極星のように、
生きる指針として輝いていれば、つらいときにも迷わずにすむ、     少なくとも、選ぶべき道が見えてくると想像しています。
自分は弱い、欲望に弱い、と自覚しています。
だからこそ、「絶対的な善悪」の存在、倫理観の存在は大切にしたい、  と感じました。

また、「自由だからこそ、迷う」というのも一理あるかもしれません。
選択肢が多すぎると、逆に決めきれない、ということも         あるかもしれません。
でもそれは、「不自由で自ら考えることを避ける=他人が決めたルールに従っておけばいい」ということに繋がりかねません。


かわぐちかいじのマンガ「沈黙の艦隊」で、
”不自由さ、よりも、たとえ荒波であっても自由に泳げる海を選ぶ”という 趣旨の、主人公(艦長)の言葉がありましたが
まさにそう思います。自分が選んだ道がたとえ苦しい道だとしても、   選んだことを受け入れ進むしかないと思います。

ドストエフスキーのいいたいことは、だからこそ、時代を超えた今も   ひとびとに問いかけてくる内容だと思います。


また、「大審問」で、無神論者でもある2番目の兄が”キレる”シーンが  あります。1番目の兄の審理が無罪へと傾きつつあるなか、
結局、審理を見に来た大衆は、兄の不幸(有罪)やそれにまつわる衆愚に 関心があるだけであるとわかるのです。
頭がよい兄の”無神論”が否定され、やはり神の偉大さに気づかされる、  重要なシーンと思います。


④「殺人事件のナゾ解き」
これは、意外な展開でもありますので、ぜひ、みなさんに読んでもらいながら推理してもらいたいです。

(参考ポイント)
・表現が難しいです
・ロシア人の名前が、ちょっと、とっつきにくいです。
 私は「父」「1番目の兄」「2番目の兄」・・・と名前を記号のように、      単純化しました。
 登場人物相関図を紙に書くといいですね。
・ストーリーが複雑です・・・→①~④のポイントを理解していれば、 「いま、どのテーマ」と整理しながら読めますよ。


ともかく、一度は聞いたことのあるドストエフスキーの        「カラマーゾフの兄弟」を読み終えた、という
充実感、達成感を、強く強く感じられます。              これは読書する上で大きな収穫です。
この本が読めるなら、他の本も読めるよ、という自信につながります。

ポイントさえわかれば、より小説のだいご味が味わえ、         この作品が、長年、多くの人たちから評価される意味を
受け止められます。

私は、
一番上の兄の、「自分の罪に気づき、罪深さを感じることでの救い」

とともに、
末っ子の気づきでもある、

「自分の存在をはるかに超えた大地や星空といった大きな存在との    一体化による救い」、を
今後の生活でも意識していきたい、
迷ったとき、困ったときに外で大きな空をみながら、自分を見つめ、   感じたい、考えたいと思いました。

来年、「国際ドストエフスキー学会」が日本で開かれるそうです。
そんな学会があること、そして世界中に研究者がいることも
ドストエフスキーの偉大さを感じさせます。

さらに今年は、ドストエフスキー生誕200年、です。
そんな節目の年に、偉大なる小説に出会えた             (いままで知っていたけど、まったく読もうとしなかったけど・・・)  ことは偶然ですが、幸運でした。

ぜひ多くの人に読んでもらいたい名作だと思います。

2021年2月11日 

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