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弘前にて西洋を感じた旅

きっかけ

鉄道150周年で新幹線が安いからどこかに行かない?と夫が言った。
弘前城に一度行ってみたかった夫の提案を受けて、青森県の弘前に2泊で出かけることになったのは、3月初めのことだった。

弘前の意外な魅力

弘前について調べると知らなかった意外な情報に行きついた。明治以降、津軽藩は「学徒弘前」を目指して教育に注力し、外国人教師を多数呼び寄せたそうだ。結果として、多くの美しい洋館が残り、洋食が広まった。中でもフレンチレストランが多く、鎬を削っている。これは意外な魅力だった。東北の1都市に対するイメージは、なんとなく素朴なもので、ちょっと味が濃いめの美味しい郷土料理を日本酒で頂く、といったものだったからだ。さらに驚いたことは、国内ナンバー1の生産量を誇る青森名物のりんごも、外国人教師が持ち込んだ物らしい。青森にりんごが自然に生えていたわけではないのだ。城と洋館を巡り、フレンチを食べる。予想とは少し違った弘前旅行が始まった。

青空と雪景色

新幹線と在来線を乗り継いでようやく着いた3月の弘前は一面雪景色だった。秋田出身の同僚のアドバイスにより、スノーシューズを履いてきたのは正解だった。街中の歩道の両側には腰あたりまで雪が積み上げられ、歩道の中心にはほとんど雪はなかったけれど、曲がり角やちょっとした日陰にはシャリシャリの雪がしっかり残っていた。弘前城のお堀の中や由緒あるお寺の境内は、完全に雪の中で、ザクザクと深い雪を踏みしめながら歩き回った。弘前城のお堀は凍っていたし、お寺の立派な山門は帽子のような雪をのせたままだったけど、その上には真っ青な空が広がっていた。雪景色と青空の組み合わせは、関東で育った私にはとても新鮮だった。

寺町にある長勝寺の山門
弘前城公園

りんご!りんご!とにかくりんご!

駅前の観光案内所で一際目を引いたのは真っ赤な表紙の「アップルパイマップ」だった。ケーキ屋、パン屋、和菓子屋までがアップルパイ作りに参入し、多種多様なアップルパイが街中で食べられるのだ。パイ生地のバターの配合、りんごの種類、柔らかく煮るかシャキシャキ感を残すか、シナモンを入れるか、熱々か、常温か、アイスクリームは添えるか。。。バリエーションは無数だ。そんなにたくさん食べられるものでもないけれど、今回の旅では3つを制覇した。中でもりんごみたいな真っ赤な屋根の洋館にあるカフェで食べたアップルパイは記憶に残っている。


アイスクリームを添えるタイプ

もうひとつのりんごカルチャーは、シードルである。弘前市内にはシードルの醸造所もあるのだ。古い倉庫を改造した雰囲気のある空間でシードル飲み比べや買い物が楽しめる。シードルに対してはなんの知識もないけれど、これは甘い、これは肉に合いそうなど、浅知恵で批評するとわかった気になれて楽しい。美味しい日本酒に加えてシードルも飲める弘前は本当に良いところだ。

シードル飲み比べ

奇跡のりんごコース

アップルパイとシードルで既に満たされていたけれど、私たちにはまだメインがあった。
楽しみにしていたフレンチのコース。その名も「奇跡のりんごコース」である。頂くのは食べログ100名店にも選ばれている「山崎」だ。
このコースのりんごは、無農薬栽培で育てられている。りんごの無農薬栽培は、不可能と言われるほど難しいそうだが、農薬が原因で体調を崩してまった奥様のために、この奇跡を木村さんという方が成し遂げた。
私たちはこのコースをランチで頂いた。実際に頂いてみると「奇跡」という言葉は、りんごだけじゃなく、料理そのものも形容していた。りんごのお料理にこんなにバリエーションがあることに驚いたが、何よりもその美味しさに感動した。 
シグネチャーであるりんごのポタージュから始まり、サラダ仕立ての前菜、ホタテのパイ包み、メインのお肉料理、デザートに至るまで、全てに奇跡のりんごが使われており、確かにりんごの存在感はあるが、それぞれが全く違う。りんごは時に主役になったり脇役になったりしながら、他の食材と完璧なハーモニーを織りなしていた。とにかく美味しいし、そして楽しい。こんなに特別なコース初めてだった。

奇跡のりんごコースの余韻に浸りながら、弘前駅に向かって歩いた。雪を頂に残した岩木山は弘前の街を見守っているようでとても美しかった。
あと2ヶ月もすれば、弘前にも遅めの春がやってきて、弘前城は満開の桜に包まれるだろう。
また、訪れたい場所が一つ増えた。そんな気持ちで、溶けかけの雪が残る3月の弘前を後にした。

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