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詩まとめ

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詩のまとめです。感情が滲み出てくるような詩を書きます。
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#自由詩

【詩】海

【詩】海

どれだけ僻んだって、きみは海。砂浜の砂を少しだけ濡らして、歪んだ月の光を、その淀んだ水面に映し出す、ただ僕に疎らな詩を想起させるだけのもの。
僕はきみのことが好きだけれど、きみを、本当の意味で好きになることなんてないのかもしれないね。みんな、生まれたときから詩人で、目の前にあるものを、象徴的にしたがっている。それはきっと僕も同じで、砂浜で微かに輝く貝殻を拾い集めるみたいに、そして、その音に神経を研

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【詩】砂粒の詩

【詩】砂粒の詩

虚ろに、窓の外にある夜を見つめて、
嫌いな人の話をしながらしか、恋ができない。
きみの寝息が聞こえる午前2時、
ただ後ろめたさから、夜空に平和を願って、そして、その願いが、いつか、ふとした瞬間に叶ってしまったとしたら、そのときは僕たち、もっともっと広い世界の話をしよう。
いっしょに空を見上げて、
大きな世界の前で、いつまでも一番の被害者でいよう。

【詩】書架の中の孤独

【詩】書架の中の孤独

「ふと思い付いたんだ。ある日、絵本作家の幽霊と友達になって、けれどもただ、絵の描き方、物語の作り方ばかり教えてもらっているような、そんなつまらないひとりの少年の話を。」
嘲笑にすらなれない仄かな笑いを、いつかの発射残渣のように忍ばせて、揺蕩う水面みたく緩やかに進行する、物語未満のもの。喜劇だ、と呟いて、ひとりでに、にやにやにやにや笑っていた。眩暈に襲われるかのように、追っていたページの文字が、つぎ

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【長編詩】紅い花

【長編詩】紅い花

        Ⅰ

対話するってことは、人に銃口を向けるってことなんだけどなあ。でも快感なのかもしれない。空気を貫いた先、きみの眼の上で、紅く、触手みたいに延びた彼岸花が咲いて、僕は、初めて、僕がきみに与えた影響力について思った。それは愛だね。けれども、きみのことを心から綺麗だと思うのと同時に、きみは、僕にとってただの作用点でしかないこと、僕の一生のうちに起こる幾つかの現象のひとつでしかないこと

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【詩】原石の詩

【詩】原石の詩

もう今なら、誰でも好きになれる気がする
心からの優しさでひとびとを想って
そうして、角を取るように自らを研磨し
そのまま身体ごと消えてゆくこと
磨くことがすり減らすことだなんて、考えもしなかったよ
輝かないまるい石なんてつまらないだけだと
そんなことにも気づかないまま、大人になってしまって、わたしは、もっと心から、人を嫌いになるべきだった。

【詩】夜行性の詩

【詩】夜行性の詩

夜にだけ小説を書きたくなるような
そういう不定形の生だったとしても。
昼に満たされていたことを忘れ去り、
棚に上げるように劇的に、夜が去ってゆくのを惜しんだのなら、世界一の不幸者になって、僕は、無造作に、欠け落ちた詩を描く。
たとえ、本の形をした物語しか知らなかったとしても。
四等星みたいに綺麗な小説が描きたい。
恒星が周囲を燃やすようにきみたちを、傷つけていたい。

【詩】吐瀉物の詩

【詩】吐瀉物の詩

すぐ頭上を走ってゆく電車も、
嗚咽して俯いている自分の身体も、
ぜんぶがぜんぶ、このわたしの今いる空間とは関係がないみたいで。
知ってる。あなたたちも、きっと、どこに行けばいいのか、分からなかったのね。
ぐるぐる、叫ばないまま泣き喚いて、迷走するように逆流して、ただ高架下のアスファルトを少し溶かすくらいの影響力。
どうしてか、信号機の緑があたたかく、やさしくて、寒いってわたしの代わりに、終電とか、

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【詩】朝陽

【詩】朝陽

猫に生まれ変わったってことにして、
朝陽のなか、眠りについている。
車道の上で、灯火をぼんやり映す街灯のように、漫然と突っ立ったまま、けれども切実に誰かに認められたいと思っていて、
だからこそ、また夜を越してしまったんだ、きみは。
そうして、今まで流れてきた何万、何十万という藍色の空の数だけ、きっと、知ってゆく。
たぶん、きっと、ひとりでも生きていけること。
友達だけがいつの間にか、朝陽に火葬され

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【詩】脳科学者の詩

【詩】脳科学者の詩

簡単な概念ほど、簡単に否定したくなってしまう。
ずっとずっと馬鹿みたいに笑ってるきみより、わたしのほうがえらいよ、って、いつか叫ぶのが、机から発せられた魔力にいつも縛り付けられてるわたしの夢。
だってわたし、すごーくすごーく深く考えて、きみよりもはるかに難しいことを考えて、それで、ずっと、みんなみんな死ねって思ってるから、世界の重力すべてが集約された教室を、パズルみたいに、わたしの頭のなかで、ぜん

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【詩】夜の湖

【詩】夜の湖

映らない。
僕の姿はなにも映らない。
曇った夜に見た湖は、なにも透き通ってなんかいなくて、それは、津波のように暗く淀んでいて、けれど、それでも湖の名残であるみたいに、水面は緩やかに凪いでいた。
自分の存在を確かめられなくなったら、簡単に死んだような気分になれるから、
僕は、夜の湖で、生きたくないけれど、死にたくもないまま、観念的な自殺をする。
夜景と認められないこと、かわいそうって言える人になりた

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【詩】都会の星

【詩】都会の星

躊躇うという感情。こんなにも鍵穴の形をじっと見ていたことなんて、いままでなら、ありえなかったかもしれない。煤けたみたいな色をした新宿駅に夜がやってくるように、公団住宅にも、白夜じゃない夜がやってくる。僕がこうして昼間中、ずっと仕事をして、燃料を補充するように食事をして、夜、魂を一旦放棄するように眠りにつく以前、それは僕が、人間じゃなかったころのことだけれど、僕は瞬いても瞬いても消えない星で、けれど

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【詩】氷

【詩】氷

形も大きさも違う氷が数個転がっていて、何かの拍子にそれらは砕けて、いつか溶けて水になる、水になると元あった形なんて関係なくなって、もともと他の氷だったかどうかも関係なくなって、あたかも自然なことであるかのように混じり合い、溶け合い、いつか誰かに取り分けられて、小さな容器に等分になるように振り分けられて、つまり、みんな同じ人間だって言うのは、そういうことを指して言っているのでしょう?みんなみんな幸せ

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【長編詩】masturbate

【長編詩】masturbate

        ※

無為にしたくないと思いながら、あっという間に、泥のように形を無くし、けれども完全に溶けきることのない多色の沈殿物のような、、、それを、そういうものを日々と呼んで、僕は、なんだか、毎日、吐けないのにむりやり吐こうとしているみたいだ。体内に溜まった毒素をひたすら嫌悪するだけの生活。舞台に、(指をさして)きみとかきみとかきみとか、そういうきみたちが観客の舞台に、僕が立ったことは一度

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【詩】オルゴールの詩

【詩】オルゴールの詩

貴方が欲しがっているのはきっと、いつだって、病院の待合室みたいな会話だけだったよ。
オルゴールの音がして、
貴方は、わたしのことを、どこかにある星のように見ていた。どこかから流れてくる音楽のように感じていた。唯一性なんてどこにもなく、貴方もわたしも、幽体としてしか、他人を認識することができなくて、お互いの血液がどんな風に脈打つのかも知らないのに、「好き」というただその言葉だけで、鎖のように繋ぎ止め

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