【チェーンオペレーションのタネ】仕方ない、で片付けられがちな店舗の『実行力』
こんにちは。ハンクラ事務局です。
この記事では、チェーンオペレーションを実行されている企業において、売上や利益の最大化に日々尽力されている皆さまにむけてお役立ち情報をお届けしています。
客数が前年同月比で落ち込んでいる…。売上予算未達はマズい、客単価を上げるために買上点数を増やさないと!
この新商品は「ついで買い」を狙ったら大きく販売数を伸ばせそうだな。よし、レジ横に陳列して訴求していくぞ!
このような光景は、チェーンストアの運営に携わる皆さんにとってはお馴染みかと思います。
店長やバイヤー、事業企画として長年チェーンストア業界に身をおいていた筆者にとっても、予算達成のためにあの手この手を捻り出した経験は、冷や汗とともに鮮明に思い出されるところです。
「ついで買い」は、テンション・リダクション効果という心理現象によって誘発されることが多い行動です。
お客様にとって、店内は言わば戦場です。
「これは本当に必要か?」「向こうのお店の方が安かったような」「美味しそうだけど太っちゃう…」のように購買行動ひとつをとってみても、様々な誘惑や複雑な基準を瞬間的に判断し、決断を下します。
そんな緊張感満載の戦場をようやっと抜け出し、レジ待ちの列に並んだとき、または注文を店員に伝えるとき、お客様は戦地から帰郷する道中かのように気が緩む、つまりお財布の紐が緩んでしまうのです。
この心理現象は、決断に必要な金額や影響の及ぶ範囲、選択肢の数などが前後で乖離しているほど効果的だと言われています。
コンビニのレジ横に陳列されているチ◯ルチョコや「セットでポテトはいかがでしょうか?」といった文句は、まさにテンション・リダクション効果を狙った戦術の現れなのです。
…前置きが長くなりましたが、ご自身が顧客の立場でもよく目にする、耳にするこういった戦術も、実行されなくては絵に描いた餅でしかない、というのが、今回皆様にお伝えしたい内容です。
これを聞けば当然とお思いになるかもしれませんが、筆者の前職での経験を踏まえても、「うちは全店、100%実行できている!」と数値を元に説明ができる企業様はほぼゼロ、です。
その裏には多くの言い訳が潜在していて、「エリアマネージャーは忙しいから」とか「◯◯店は店長のレベルが低いから」「△△店は本部に批判的だから」「✕✕店は人手不足だから」など、なら早く解決せえよ、と思ってしまうような理由で「見た感じたぶんできてる」のように曖昧に結論付けられ、議論が議論として成り立っていない会議は多く存在します。
そして、より現場レイヤーに近づくほど「しょうがない」という意識は蔓延っています。
“実行力”とは
実行力はたった2つの要素で構成されます。
非常にシンプルではありますが、正確に、早く実行することで、戦術の本来のポテンシャルは最大限活かされます。
つまり、これを徹底的に追求することで、企業の販売力は大幅に向上するのです。
また、販売力以外の観点からも”実行力”が事業経営を大きく左右することがあります。
皆様の会社でも、販売戦略に限らず、本部から店舗へ様々な指示が日々矢のように飛んでいるかと思います。
それらを正確に、早く実行する力や文化が醸成されていない、もしくは実行されているか確信の持てない企業において、法令遵守や衛生管理など、大きな事故発生のリスク管理ができていないと言わざるを得ません。
成果とは、机上の戦術を三次元に再現することによって生み出される
前職で食品のバイヤーを担当することになってすぐ、通勤客の朝食需要を取り込むべく、日配品(パン・サンドイッチ・おにぎり)の売上アップを企画したことがありました。
あまりに初歩的(ありがち)なお話で詳しい背景などは省略しますが、
行き過ぎた利益偏重な思考によって売変(値引・廃棄)を気にするあまり、長年かけて投資(発注数)が徐々に減っていき、
比例して販売数が徐々に縮小した結果が今の売上と予算=本来のポテンシャルはもっと大きいのでは、という仮説の元、
私は販売数の期待値を店舗毎商品毎に毎週算出し、店舗にその通り発注してもらう施策を開始したのです。
結果からお話すると、事業全体として、日配品の売上予算比は130%超、粗利予算比は150%超となりました。
ただそれはあくまで”合計値”です。
そこには、
のように結果がまったく違う2店舗がありました。
なぜ両店間に大きな差が生まれたのでしょうか。
各店舗の指示に対する反応と行動、それに対する具体的な対応策については、次回以降の記事で詳しくお話するとして、端的に言うと「算出された期待値通りに発注した(=施策内容を正しく再現した)」かどうかでしかありません。
このケースで重要なことは、各店舗がその施策に対してどのような印象を持ったか、にあります。
A店は、比較的社歴が浅く固定観念のない店長がおり、エリアマネージャーの丁寧なフォローも手伝って私の仮説に共感をしてくれていました。
一方、B店にはベテラン店長がおり、前週参考に正しく需要予測できている、その上で上手に売変コントロールしているじゃないか、売上予算も達成しているしとりあえず従っているフリをしよう、と中途半端に再現し、結果として廃棄ばかりが嵩んでしまいました。
つまり、店舗毎に再現精度のバラつきがあり、その結果、両店には大きな差が生まれてしまったのです。
とても単純な話ではありますが、全体の中でB店タイプがA店タイプより多いと、たとえその仮説が正しかったとしても、振り返りの際には仮説が間違っていたと結論付けられることになってしまいます。
すると、今後もこの結論をひとつの証左として、課題解決する芽は摘まれてしまい、大きな機会損失を起こし続けるまま放置されてしまうのです。
例えば小売において、しばしば商品の魅せ方(=陳列)が重要だと言われます。
そして、POSデータを確認すれば、「結果」としてどの商品がよく売れ、どの商品があまり売れず、どの商品がチャンスロスを起こしたのかを計ることができます。
しかし、なぜ売れて、なぜ売れなかったのかまでは売上や売変などのPOSデータではわかりません。
なぜならPOSデータは「結果」のデータでしかなく、そこには、戦術(=施策)をどう三次元に再現したのか、という「経過」のデータは含まれていないからです。
POSデータだけで仮説や施策の精度を語るのは尚早で、非常にもったいないことです。
“見える”ことがなぜ重要なのか
繰り返しになりますが、成果とは、戦術(=施策)だけでなく、それを如何に三次元に再現するかという”実行”によって生み出されます。
そんな重要な”実行”という存在に、どれだけの企業が着目されているでしょうか?
冒頭で申し上げた通り、「うちはちゃんと実行できている」と明言できる企業は、ほとんどゼロです。
実行度を正確に把握できていないのに取組十分というのは、換言すればPOSデータを追いかけていないのに売上好調と言っているのと大差ありません。
施策が「1.2」でも、実行が「0.7」だと、成果は「0.84」しかありません。
逆に、施策が「0.9」でも、実行が「1.0」あれば、成果は「0.9」となります。
この掛け算を意識しないと、たとえ商品部が120%の力を発揮しても成果は本来より随分小さく、しかもその原因はわからないまま、適切なフィードバックが得られず施策の精度も向上しない、ということは大いに起こり得るわけです。
店舗数が30<50<100と増えれば増えるほど、数値化されていないものはマネージメントできなくなります。
つまり、数値で可視化しないとこの先ずっと”実行”をマネージメントできず、「たぶん」や「しょうがない」といった、議論を曖昧にしてしまう言葉が止むことはありません。
”実行”を店舗運営におけるKPIとして定量的に計測できたなら、逆説的にはまさに競合企業との大きな差別化ポイントとなり得るのです。
より大きな成果をあげるために
商品部や企画・開発部の皆様は、日々試行錯誤を重ねながら、なんとかヒット商品を、という必死の思いでお仕事されているかと思います。
そして、店舗運営部の皆様もまた、毎日のように起こる様々なトラブルを処理対応しながら、店舗に施策を落とし込み、確認・指導を繰り返しておられます。
繰り返しになりますが、どんなに良い施策も具現化されないと成果は出ません。
商品部や企画・開発部が戦術を必死に考え、それを店舗運営部と店舗が必死に具現化する。
それは、言わば「設計と施工」のような関係性にあり、各々が各々の責任を負います。
そして、立派な建造物が完成したなら、それぞれがその功績を正しく称賛されるべきなのです。
そうでなければ、「人は動かじ」です。
次回は、如何にして実行力を向上すべきか、要因分解しながらより具体的にお伝えしたいと思います。
株式会社スタディストは、チェーンオペレーションにおける【実行力】を「店頭実現率」と「リードタイム」に分解・数値化。
指示配信・指示確認・写真報告・公正なチェック・分析/改善のすべてを圧倒的にカンタンにします。
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