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わたしの知らない、あなたのこと

ついにここまで来たか!
そう思って、彼女の記事に「ハートマーク」を押した。

最近、noteのフォロワーの中に「長友」という人が現れたことに気づいた。
長友……
わたしは彼女をそう呼んでいなかったけど、すぐに大学の後輩だと気づいた。わたしの、ひとつ下の、軽音部の後輩だ。

まず、最初の記事のタイトルが秀逸だった。

そして彼女のnoteは、
彼女の大学卒業後からはじまる、壮大な冒険譚だった。

この記事にもある通り、
ひとつ年下の長友が卒業した年は、東日本大震災が起こった年だった。

わたしは卒業して1年目。ライブハウスでアルバイトをしていた。
毎年、わたしの勤め先で「卒業式飲みの二次会」という、オールナイトのイベントを開催していたのだけれど、
震災直後、卒業式も中止となり、「どうしても二次会だけはやらせてください」と言われたけれど、わたしは断腸の思いで断ったことを、今でも覚えている。


奇しくも、わたしの一つ上の先輩たちあたりから、「就職が決まらない」という話が、ちらりと出始めていて
わたしたちの代も、就職できずに卒業する人もいた。
わたしは就職活動をしていなかったから、その苦しさは理解できないけれど
「みんなの進路について聞きづらい世代」だったことに、違いはない。

長友の代の子とは、二次会で話すこともできなかったし、
当時のわたしは、ライブハウスの仕事を覚えることで手一杯だった。

この仕事はどれだけ業務内容を教わっても、ステージまわりに関することは「見て、現場で覚える」の体当たりしかない。
現場はいつも轟音が鳴り響き、わたしに仕事を教えるよりも、「わかる人が先にやらなければ、リハーサルも本番も進行が遅れる」という、なかなか過酷なものだった。
下っ端で、土日の休みをくださいとも言えなかった。

そんな世間の状況と、わたし自身の状況もあって
卒業後の数年間、同期も合わせて、ほとんど大学時代の友人には会えずに過ごしていた。



気づいたらわたしの周りは、バンドマンばかりになった。
20代、はっきりとした目標を掲げられる人は少なかったけれど
みんな、何かしらの形で「前進したい」と、音楽活動に没頭していた。
わたしも、最多で年間のライブが40本近くなり、週に2回は練習をしていたので、ライブや音楽活動が、暮らしの中心だった。
イベントを企画して、CDを作って、その繰り返し。それが、前進だと信じていたし、いまでも、何か前に進めていたと、
信じたい気持ちでいっぱいだ。


わたしは、ライブハウスで仕事をさせてもらえていたので
「スキでもない仕事で食っている」という感覚は、アラサーになってOL風アルバイターになって、初めて感じたものだった。

それでもやっぱり、仕事を選ぶ基準は他のバンドマンと一緒
「バンド活動に影響が出ないか」
もっと言えば、「ライブの日に休みが取れるか」ということを重要視していた
し、
“仕事”というものに、比重を置かない人生を送っていた。
まわりのバンドマンも、そうだった。少なくとも、仕事について話し合える間柄の人は

都合の良い仕事を見つけて、居座るタイプの人と
都合の良い仕事を転々として、すぐに仕事を変える人と
このふたつだった。
そして、居座るタイプの人も、「好きな仕事」じゃなくて、「都合のよくてラクな仕事」を選んでいたように見受けられる。


つまり、
わたしも含め、わたしのまわりには「仕事を大事にする人」が少なかった。
仕事をして、キャリアアップをして
仕事を通して、学んでゆく。
そういう考え方は、あんまりなかったように思う。

そして、いまもなお
友人から、20代の葛藤を、仕事の話を、あんまり聞いたことがなかった。

「転職したよー」「いまの仕事続けてるよ」「結婚したよ」
そういう報告は受けるのだけど、
「なぜ、そういう決断に至ったか」の詳細を
わたしは、誰の話も聞かずに、今日を迎えてしまった。



だから、長友の話は衝撃だった。
ぜんぜん知らない世界の話だった。

やりたいことと働くことの中で葛藤し、
無力な自分から体当たりして、世界を切り開いていった。
そして、#8まで読み進めたところで、「自分の腕を確かめるために、作品をつくった」というのだから、
これはもう、拍手喝采である。


彼女はきっと、
ただ、自分にあったことを話しているだけだと思うんだけど
でも、わたしにとっては、わたしの人生を後押ししてくれる、めちゃくちゃ格好良い冒険譚だった。
20代、音楽に没頭していたわたしには、決して見ることのできない世界を、noteを通して教えてもらった。

卒業後、「とにかく全部の手段で、デザイナーとして雇ってくれる会社に連絡」していた彼女が、
その後、「自分が会社を選ぶ。お互いに見極めるように会社を探した」と言っているのを見て、
ああ、すごい成長だな。
すごく努力したんだな、て思った。
#1と #8で、彼女は別の人になっている。
本当に格好良いと思うし、これを「冒険譚」と呼ばずして、なんと呼べばいいんだろう。


すてきな記事を、本当にありがとう。
後輩だからという贔屓目なしにも、わたしはこの物語に衝撃を受けた。断言できる。

そして、noteの「フォロー」ボタンを押して、わたしに存在を報せてくれてありがとう。
わたしは、ずっとずっと「会社」と「仕事」から逃げ続けて、
いまも無職で逃げ回っているけれど、
あなたの記事で、がつんと背中を叩かれたような気がしている。
「会社で働くのも悪くない」なんて言い方をしたら、あなたの努力を安っぽく咀嚼したみたいな言い方になっちゃうから、ちょっと違うんだけど。
新しい価値観を、教えてもらった。
すごく、感謝しています。


純粋にすてきな記事で、自分を後押ししてもらったので、この記事を書きました。
勝手にいろいろ書いてごめんね。
これからも、あなたの冒険譚を、わたしは楽しみにしています。


photo by amano yasuhiro


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