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DIYで家の改修を続けたオーナーが最後に助けを求めたのは、“一緒に作ってくれるプロ”だった

コロナ禍もあり、密かなブームを巻き起こしているDIY。10年もの間自宅のDIYを続けてきたあるプロジェクトオーナさんが、ハンディハウスプロジェクトにリノベーションを依頼してくれたのは、まだあまりDIYをする人が少なかった2015年のことでした。自宅を自分で作るのが好きだったオーナーさんが、どんな思いで連絡をくれて、どんなことを私たちに求めてきたのか。

2021年に結成10周年を迎えたハンディハウスプロジェクトの連載シリーズ。今回は、自分の手で自宅の改修を続けきたSさん家族とSさんと家作りを一緒に行ったハンディの山崎のインタビューをお届けします。【ハンディハウスプロジェクト10周年インタビュー vol.5】

Sさん、M子さん(写真 左から2人目、4人目)
造園会社勤務で施工経験もあるため家作りに詳しい。独身時代に、何回か増築を重ねた中古物件を購入し自分で手を加えながら暮らす。東日本大震災を機に、耐震が気になり調べたところ、基準値を満たさなかったため建築会社を探し歩いた。自分らしい家作りにこだわり、一緒に作ってくれる会社を探したところ、雑誌でハンディハウスプロジェクトを見つけ、1階のリノベーションを依頼。妻のM子さん、中学生の2人の子どもと暮らす。

山崎大輔(写真 一番左)
株式会社DAY’S 代表。ゼネコンで施工管理を担当した経験から、各専門分野の職人とのチームワークや、プロジェクトオーナーの要望をうまくまとめる事を得意とする。新しい施工方法などにチャレンジすることも好き。

森川尚登(写真 一番右)
デザイン会社勤務を経て、2019年にハンディハウスプロジェクトに参画。現在、DAY’Sに所属して設計施工の修行中。好きなものは、古着、自転車。趣味は、レコード収集やカセットテープ作り。日本中で旅をしてきた経験から、街づくりにも携わっていきたいと妄想中。

HandiHouse project(ハンディハウスプロジェクト)
「どんな家にしようか」という最初の妄想から作る過程まで、プロジェクトオーナー(施主)と、一緒に作業をしながら家づくりを楽しむ。そんな“施主参加型の家づくり”を提案する。設計から施工まで、すべてメンバーが自分たちで行っている。



山崎:お久しぶりです!お元気ですか?

Sさん:いやあ、ほんと久しぶりですね。

山崎:あれ以降も自分で家いじってるんですか?

Sさん:はい、2階はリノベーションしなかったから、自分で少しずつ改良してますよ。

山崎:あ、ほんとだ。すごい。おうちが成長してる。2階は床を整えただけだったんですよ。

2階は予算の関係でリノベーションをせずに引き渡した。現在もDIYで改修中。
2階の息子さんの部屋。Sさんが個室になるようDIYで改修した。

ーーじゃあもうガラッと変わったんですね。

山崎:Sさんパワーで。

M子さん:でも山崎さんに頼んで、ある程度土台がちゃんとしたから、ここまでできたんだと思いますよ。最初の状態だったら、こうはならなかった。

Sさん:頼んでいなかったら、いつまでも手を付けられなかっただろうね。

自宅にはたくさんの工具が並ぶ。

結婚、出産、震災。安心安全で快適な家を求めた結果・・・

奥さん:1階をすごくいい感じにしてもらったから、快適な生活を送れています。

山崎:それはよかった!

Sさん:1階をリノベーションしてなかったら耐えられなかっただろうね。リノベーション前は、家全体が工事現場状態で生活できなかった。1階での暮らしがあるからやっていける。

M子さん:あのリノベーションで、ようやく家族全員が前に進めるようになったよね。友だちが遊びにきてくれたときなんか、自慢してたよね(笑)。

ーー1つ居心地がいい空間があると違いますよね。

Sさん:そう。この家は、古い昭和の平屋をどんどん建て増ししていった家でした。それを僕が独身の頃に購入して、気が向いたときに自分で直しながら住んでいました。一人で気ままに直す分には問題なかったんだけど、結婚して子どもが生まれてからは、この状態で家族が暮らしていくのは限界かなって思ったんですよね。

リノベーション前の1階リビング。
リノベーション前のキッチン。

Sさん:本気でリノベーションを建築会社に頼もうと思ったのは、東日本大震災の後でした。市に耐震診断をしてもらったら、全然ダメだった。

山崎:このおうち、耐震補強が基準値を満たしてなかったんですよ。値が1.0あると倒壊しないと言われているんですが、一番初め、0.4とかしかなくて結構やばかったです。

M子さん:子どももいるし、安心して暮らしたかったので、もうプロに頼もうってなりました。

ーーそうだったんですね。

山崎:工事して相当頑丈になってます。

M子さん:最近では地震で揺れても不安がなくなりました。

Sさん:まずそれが一番よかったことですよね。

山崎:もしかしたら自分でやってたとかもあったりして?(笑)

Sさん:仕事辞めないとできないね。片手間ではできない。

耐震補強も含めた1階の大規模改修。

ーーハンディに頼んだのはどうしてだったんですか?

Sさん:建築士さんで、セルフリノベーションを手伝ってくれそうなところを色々見ていました。でもなかなか見つからなくて。大手のハウスメーカーとかに新築の相談もしたんですよ。

M子さん:でもやっぱり夫が、こんな綺麗な感じに仕上げなくていいんだとかこだわりが強くて、納得がなかなかできなかったんです。予算のこととかもあるし、私も知り合いにリフォームの話とかも色々聞いたんだよね。

ーーたくさん探したんですね。

Sさん:そうしたら、雑誌にハンディが出てたんです。妻が見つけてくれて「これじゃん!」ってなったんです。

若い人の感性を取り入れ、長く一緒に家づくりを楽しめる建築会社がよかった

ーー山崎さんが独立してハンディに入って、一人で担当した初めてのオーナーさんがSさんだったそうですが、Sさん、M子さんは不安とかはなかったんですか?

M子さん:雑誌でハンディを見つけて、メールで連絡した後に、うちに山崎さんが一人で来たんですよね。たしか嵐の日に。

山崎:今思い出しましたけど、半袖半ズボンで登場しましたね。これは不安になるかも(笑)

M子さん:どうやってあなたのこと信用したらいいですか?みたいなことを言った気がします(笑)

ーー家のリノベーションを頼むって、けっこう大きな買い物ですもんね。

M子さん:「僕何もないから、もうとにかく信用してもらうしかないんです!」って、山崎さんが言ったと思います。私結構用心深いので、ネットとかで知った人を信用するなんてあまりないことなんです。

ーー初対面でネットでの情報しかなかったら確かに不安かも。

M子さん:どこに住んでいるのかとかも聞きましたよね。結婚されてるっていう話も聞いたかな。

山崎:そうですね。色々聞かれましたね(笑)

M子さん:雑誌にも載ってたし、もしも騙されてもいいやって腹くくりました。いざとなったら、家もわかるしとか色々考えて。

山崎:なんかあったら突撃されてたかも(笑)

当時29歳の山崎とSさん家族。

ーーSさんは不安はなかったんですか?

Sさん:僕は若い人のセンスを取り入れたかった。だから山崎さんに頼んでみたいと思いました。同世代の建築関係の人にリノベーションの相談もしたんだけど、立て替えたほうがいいんじゃないの?とか言われたりして。古い住宅は、開けたらシロアリがいたりとか大変なことも多いしね。でも山崎さんに頼んだら「もちろんできますよ!」って乗ってくれました。

ーーハンディのメンバーってやったことないことを言われても、最初からできないと言わずにやってみる人が多いですよね。

山崎:僕も、ゼネコンで現場監督をやってから独立したので、自分で手を動かしたことがなくても、何をやったらいいのかはイメージできるので、やれるかなと思いました。ハンディのメンバーは、設計やデザイン、現場監督など色んな経験を持っているので、みんなに相談できるっていう環境にいたのも心強さにはなったんだと思います。

Sさん:息子や娘が大人になって、自分で好きなように直したくなったときに、また同じ人に頼めるという意味でも若い人に頼んで長く付き合いたいと思いました。

ーー山崎さんがこだわったところはありますか。

山崎:やっぱり勉強机かな。僕も子どものころリビングで勉強していたなと思って、リビングの一角に作ることを提案しました。

リビングの中に1枚壁を作り、その奥が子どもたちの勉強スペースになっている。
半個室でプライベート空間にもなる勉強机。

ーー少し目隠しになっているところも、勉強に集中できてよさそう!

Sさん:提案してもらって、設計というのはこういうことなんだなって感動しましたね。山崎さんの仕事を見て、自分は建築のことをわかっているようでわかってなかったって思った。専門は植木だからね。どんなふうに間仕切りしながら生活のスペースを快適にしていくかっていうことをわかってるのが、プロの仕事なんだね。

キッチンのタイルは山崎が提案。一緒にショールームに行って決めた。
子どもの友だちが喜ぶ洗面台。山崎と一緒に見に行く時間は楽しいひとときとなった。

設計から施工まで自分たちで 楽し気な現場を見て子どもたちが感じたこと

ーー子どもたちもDIYは参加しました?

Sさん:しました。壁塗りやったよね。

M子さん:楽しそうだった。

息子さんが壁を塗る姿を見守るSさん。

M子さん:工事は半年近くかかりましたよね。その間、工事中のこの家で学校帰りの子どもたちと待ち合わせして、少し離れたところにある仮住まいに帰ってたんです。だから毎日工事の工程を子どもたちも見てます。

ーーそういうのは覚えているものですか?

M子さん:覚えていますね。だからこの家を大事にしているような気がします。洗面台やトイレ掃除なんかは進んでやってくれていますよ。

ーーそれは素敵!お二人はハンディとやってみてどうでした?

Sさん:設計した人が施工までやるなんて、本当にすごいと思いました。

山崎:そうですよね。僕も全部自分でやりたくて、ハンディに入ったんですよ。

Sさん:設計もできて施工も。そんな安心して任せられるものないと思う。

M子さん:夫が言ってましたよ。息子も将来、山崎さんみたいに仕事してほしいって。とにかく皆さんの仕事ぶりにすごく感動したんですよ。みんながすごく楽しそうで、こんなに仕事を楽しそうにしている人たちっていうのを初めて見たので。

山崎:なんだか照れますね(笑)

M子さん:私も口うるさく色々と要望を言ったのに、誰一人、できないとか言わずにやってくれた。じゃあこうしてみようかって試してくれる。それを見て、すごく感動して、頼んでよかったって思いました。

山崎:Sさんちのおかげで、自分の経験も一段上に上がれましたね。初めて一人で担当して、設計から施工まですることができた。ステップアップできました!

Sさん:それはよかった。うちをたたき台にして頑張ってほしいなって思ってたから。

でも、今はいくつか現場があって忙しいだろうし、経営者でもあるから管理業務とかが中心になってるんじゃないの?

山崎:そうなりたくなくて僕はハンディにいるのかもしれませんね。今でも現場に出てますよ。自分でわかってる範囲のことをきちんとやりたいっていう思いは今も変わらないです。

株式会社DAY’Sに所属して家作りを行う森川(写真右)

ーー森川さんは、ハンディに入って3年ほどになりますよね。今日のお話聞いてどうでした?

森川:今日、山崎さんとSさん家族のお話を聞けて、僕もオーナーさんとこうした親密な関係を築きながら家作りをやってみたいっていう気持ちが改めて沸いてきました。

Sさん:この出会いは本当によかったよね。

ーー今この家に住んでいてどうですか?

M子さん:何か…。幸せだよって思う。

山崎:しあわせ…。それ、最高の言葉ですね!(笑)

森川:あまり言葉にすることがない言葉が出るってすごい。

Sさん:ほんとに幸せだよね。“素敵ハウス”に住んで、調子に乗ってるとこありますよね。

M子さん:シャンプーの入れ物とかおしゃれなもの買っちゃったり。

ーー出来上がってから5年ほど経ちますけど…。まだ調子に乗ってる?

Sさん:乗ってる(笑)

ずっと素人の味方であってほしい

Sさん:今、ハンディってたくさんメンバー増えたんでしょ?

山崎:20人ほどいますね。

Sさん:20人!立派な会社じゃん!(笑)

2022年春、メンバーがさらに増えました!

M子さん:大所帯になって組織っぽくなっちゃわないでほしいなぁと思います。当時のハンディや山崎さんの良さって、あまり家作りに詳しくない私みたいな人の話もきちんと聞いてくれるところだなって思ってました。大手のメーカーだと、わかってますって流されちゃったり、無難な提案をされちゃったりするけど、ハンディは違った。

ーーちゃんと話を聞いて、解釈しながら提案をしてくれた。

奥さん:そう、解釈をしながら。“施主参加型”って言いながらも、利益を追及するとそうはいかないだろうし、効率よくやる方向性にはならないでほしいですね。

ーー今もみんな、ある意味非効率でオーナーさんの要望重視ですよね(笑)

山崎:この後、2階はSさんが自分でDIYしながらつくります?

Sさん:はい!もちろん!

山崎:これは…。また5年後に見に来ないといけない(笑)いつでも何でも、わからないことあったら聞いてくださいね。

Sさん:よろしくお願いします!

ーー今日は、どうもありがとうございました。


自然に“しあわせ”という言葉が出てしまうほど、好きな空間で暮らすということは大事なこと。そんなことを、このインタビューで改めて感じることができました。5年後、10年後に久しぶり!と気軽に会える関係を築ければ、子どもの代へと家が引き継がれた後もおうちの相談ができるパートナーとして関係は続く。こんな安心なことってないですね。

取材・文 石垣藍子

※Sさん家族の国分寺の家については詳細はこちら 
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