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仕事つくる#12 商品をつくり、思いを込める(小さなメーカーのストーリーブランディング 実践と結果-後編)

やあ、私です。
そういえば司馬遼太郎原作の『燃えよ剣』が新たに映画化されるというニュース。中学校のとき読んで以来私のバイブルになっている小説です。Twitterページは2月に立ち上がってるようなのでだいぶ遅い情報ですね。

何はともあれ、こんなに楽しみなことはないです。公開は2020年、待てないよ!


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商品をつくり、思いを込める(前編)では、私が運営しているレスリングウエアブランドMAMOの商品に、どのような思いを込めたかを書きなぐった。そして後編では、その思いをどうやって現役選手に届けるのか、これまでに考えて実践したことを書いていきたいと思う。


物を売るバカに学んだストーリーブランディング

シングレットの販売をはじめて半年ほどたったころ、私には一つ悩みがあった。それは、こだわって作った商品ではあるが他のメーカーと際立って品質に差をつけることができなかったことだ。MAMOのシングレットは手にとっていただくとすぐにわかるように、生地の肌触りが抜群でそのくせよく伸縮してくれる。全日本トップレベルの選手に選ばれる品質を求めて改良を進めてきたから相当自信がある。しかし、シングレットそのもの自体が、ランニングシューズや野球のグローブのようにメーカーの技術や特徴を極端に出せる商品ではないため、その分参入障壁が低くコモディティ化しやすい商品だといえる。私は、そんな市場の中でMAMOを選んでもらうためにどうすればいいか頭を悩ましていたのだ。その解決策を模索していたある日、津山の書店で物を売るバカという本に出会った。

物を売るバカには、当時の私にとって参考になる事例がたくさん書かれていた。中でも参考になったのは、どこにでも売っている「もやし」を差別化したストーリー戦略だ。それは、バングラディシュにもやしづくりという新たな雇用をつくり、国をまたいだ「もやしのきずな」という物語を積極的に発信することで、どこにでも売られている「もやし」に付加価値をつけることができたという話。この「もやしのきずな」をパッケージに組み込んだことで売上は急上昇したという。

このように商品以外に物語の種を見つけ、育てていくことをストーリーブランディングと呼ぶ。商いをする身としてお恥ずかしながら、私はこの本に出会うまでストーリーブランディングという言葉を知らなかった。その分衝撃が走り、物を売るバカを何度も読み返した。そして、前編に書いたように自分にしか描けない、なおかつ腹の底から選手に届けたいと思える物語の種を見つけるに至ったのだった。

参考にしたページ


宮城県丸森町のパンツ専門店に学んだ思いの届け方

次なる課題は、物語の種をいかに撒いていくかである。そこで大変参考になったのが、宮城県丸森町のパンツ専門店zamilaの商品パッケージだ。zamilaとの出会いはひょんなものだった。私が住む西粟倉村は地方創生の先進地として有名で、毎年多くの地方自治体が視察に訪れる。その一環として丸森町のみなさんが西粟倉に来られていたとき、そのパンツメーカーの話になりそこではじめてzamilaの存在を知った。

zamilaの赤パンツに込める思いは半端ではない。そのパンツには前後ろがないことから、「常に前向きであれ」というメッセージが込められている。また、パッケージも相当面白く、赤い封筒の中にユーザーポリシーと書かれた一枚の厚紙が添えられている。

嫁からのクリスマスプレゼントにzamilaの赤パンツをオーダー

そこにはこう書かれていた。

#1・2 YOU DO NOT SHOW "HAMI-PAN"
#3 常に下着を清潔にしなければならない
#4 いかなる戦いにも勝つ
#5 人の挑戦を笑わない
#6    memento mori-memento vivere
#7 初めて当パンツを穿いた者は、赤い封筒で愛する人へ手紙を書くこと

着用するウエアは、ビジュアルと機能性のみで評価されるものだと思っていたが、zamilaの赤パンツに出会い、着用するウエアには精神を整える力が存在することを知った。また、こうやって台紙に記すことで、直接ユーザーにブランドメッセージを届けることができることを学んだのだった。

zamilaのホームページは本当に面白いので、ぜひのぞいてみてほしい。そしてよかったら私とお揃いの赤パンツを着用しましょう。


パッケージを刷新する

上記2つの学びを得て、これまで塩ビの透明袋に入れていただけのパッケージをカプセル型に刷新。そして、このカプセルに思いをぶち込んでみた。

MAMOを着用するものは
自らの人生を生きる
張り合うのは自分だけ
約束を守る
常に挑戦者であり、慢心しない
今日も目覚めたことに感謝する
人間である
または心がける者である

現役時代、この言葉を常に念頭に入れていたのであれば、私は後悔なくマットを下りられたことであろう。しかし実際は心から情けなく、悔しい思いをした。だからこそ、今戦っている現役選手にこの思いを届けたいと思っている。本当におこがましいブランドメッセージだとは思うが、お付き合いいただければ幸いである。


その後、お客様からの反響

パッケージを刷新してから、2つのいいことがあった。一つは、自分がシングレットを販売するにあたり迷いがなくなったことだ。以前までは、価格が安いメーカーに少し後ろめたさを感じながら商売をしていたが、「MAMOはシングレットとともに、ブランド理念を広めている」というマインドを持つことができ自信を持ってお勧めできるようになった。

もう一つはお客様の声だ。納品した商品とパッケージをSNSに投稿してくださったり、保護者コミュニティで広めてくださったり、これまで自分でしか営業活動をしてこなかったが、お客様自身がMAMOを宣伝してくださるようになった。

お客様から届いたうれしい声!

結果として明確なことでいえば、パッケージを刷新する前と後で、直接の知人以外からのご注文が圧倒的に増えたことだ。そして売上額は5月納品案件までで650万円を見込んでおり、昨年1年間のトータル数字をすでに追い越す勢いである(感謝感激)。もちろん、全てがパッケージの影響ではないと思うが、選手に1ミリでもメッセージが届いていることを期待したい。

物語の種を蒔くようになってから、これまで以上に一件一件感動をいただいている。

小さなメーカーのストーリーブランディングのお話はこれでおしまい。このnoteが誰かの何かの参考になればうれしい。

 完

ではまた。


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