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無敵じゃなくなってからの方が強い組織をつくれるようになった話

みなさんは、東証一部上場企業の社長や取締役と聞くと、どんなイメージを持っていますか?

お抱え運転手付きの社用車で出勤し、ダークなスーツとカチッとしたネクタイ姿。それとも、すれ違う社員が立ち止まって深々とお辞儀をする印象でしょうか?

一部上場企業であるHameeの社長も取締役も、その響きから連想される硬い印象はありません。
椅子も机もみんなと一緒です。本社で仕事する際には、いわゆるお誕生日席に座ることもせず、文字通り、手の届くところで一般社員と肩を並べて仕事しています。新卒1年目でも、いつでも声をかけられる距離感です。

今回は、そんなHameeの経営陣が考える組織論について、創業者の樋口とコマース事業の取締役である水島の対談を通してお伝えしていきます。

IPO、そして東証一部上場をCFOとして牽引した水島が味わった、無敵感からの挫折。組織で働く意味や、理想の組織の話はもちろん、2人の間に流れる空気もぜひ感じ取ってとっていただけたら嬉しく思います。


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PROFILE:水島育大(みずしま・いくひろ)Hamee株式会社 取締役
1982年生まれ。神奈川県小田原市出身。大学卒業後、銀行勤務を経て2008年に入社。CFOとしてIPOに向けた管理体制の構築を主導し、2015年に東証マザーズへのIPO、2016年に東証一部への市場変更を達成。2018年より事業担当取締役、2020年からはHameeGlobal Inc.の営業担当理事も兼任し事業成長をリード。M&A、スタートアップ企業への投資事業にも携わる。剣道五段。

神童と呼ばれていた銀行員が小田原のベンチャー企業に圧倒される

ーまずは2人の馴れ初めから教えてください。

樋口:水島くんと出会ったのは2007年頃だったかな。当時はストラップを売っているStrapyaNext(ストラップヤネクスト)という社名でしたが、IPO をするためにCFOを探していました。

その事を子供の頃にお世話になっていた地元の塾の先生に話したら、「小田原で神童と噂だったすごい奴がいる」と言って水島くんに連絡をしてくれたのがきっかけです。

水島:神童……(笑)
当時僕は銀行に勤めていたんですが、久しぶりに塾の先生に呼ばれて会いに行ってみたら、いきなり樋口社長がそこにいましたね。

なんで呼び出されたのかよくわからないまま席に着くと、社長が自己紹介もそこそこでおもむろにPCを開き、「こういう戦略を進めていて〜」と、とうとうと一人、話し始めて。それで圧倒された記憶があります。

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▲当時の社内資料より。2008年からESを加えて4E戦略へ

その後も、詳しく話を聞いたり実際に会社に行ってみて、何かすごいことが起こりそうな気がしたのを覚えています。銀行のようにきちんとした服装の人は誰もいませんでしたが、目をキラキラさせながらみんなが一生懸命働いている。銀行とはまるで違うその雰囲気に驚きましたね。

語弊があるかも知れませんが、銀行では役員という限られた椅子を手に入れるために、周りとの競争に勝ち続けていく必要があります。その競争に勝つためには、学閥だったり担当エリアだったりと、自分の力だけではどうにもならない部分も必要です。

当時のStrapyaNextを見学して、自分たちの力で未来を切り拓いているみんなを見て、羨ましくもあり、自分もここで働きたいと感じました。

転職については、話をもらって2、3カ月で決めましたね。近所のショッピングモールの駐車場から社長に電話したの覚えています。

社長+新入社員

▲転職当時の水島(画面左)25歳にしてこの貫禄。(中央は樋口)

あえてちゃんとしない樋口、あえてちゃんとする水島

ーそれからもう14年の付き合いですが、今まで大きな衝突はありましたか?

水島:んー、あまりないですかね。

樋口:そうだね。でも基本的に感覚は違うよね。俺はちゃんと考えすぎると前に進めないので、いい加減な方がいいと思っているけど。水島くんはちゃんとしているよね!

水島:ちゃんとの定義がわからないですが……(笑)

樋口:その指摘がすでにちゃんとしてる!

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PROFILE:樋口敦士(ひぐち・あつし)Hamee株式会社 代表取締役社長
1977年生まれ。地元高校卒業、大学3年時に創業。その後、モバイルアクセサリーのEコマース、メーカー、卸売から、ECのマネジメントシステム、海外展開へと事業領域を拡張しつつ、2015年4月に東証マザーズへ上場、2016年7月東証一部へ。Hameeをいつまでも進化・成長し続ける組織にする事が最大ミッション。

水島:僕は周りからは慎重に見られがちですが、決してそんなことはないんです。ただ理路整然としている方がみんながわかりやすいかなと思って、それを心がけるようにしていますね。

樋口:そういうところすごいよね~。水島くんはめちゃくちゃ仕事できるじゃん。HameeをCFOとして上場させたのもすごいし、事業部側に移っても売上伸ばすし数字にも強い。本当になんでもできるよね。

水島:そんなに褒められると自分でもそんな気になってきた(笑) 
社長はいつもそう言ってくれるんですよ。でも褒めてくれるばっかりじゃなくて、さりげなく、きつい要求を出してきたりもするんですよね。

入社2日目に「決算できた?」って聞いてきたり。できてるわけないじゃん!って(笑) 

でもそれからは、必死で先輩のパートさんにいろいろ聞いて数字まとめましたね。そういう経験のお陰で鍛えられたし、無茶な要求にも応えなきゃって頑張ってこられた気がします。

頑張れば大概のことはなんとかなる?

ーそんな無茶振りに、よく耐えられましたね

水島:僕は、人間は頑張ればなんとかできると思っているんですよね。
学生時代に剣道をやっていたんですが、本当に辛かったんです。

合宿では朝昼夕夜と稽古をしていて、夜に先生が怒っていなくなっちゃうんですよ。それからずっと終わりのない稽古。当時は毎日死ぬ思いでしたね。それに比べれば、大概のことはなんとかなるって思えちゃうんです(笑)

樋口:俺もそう思う。頑張ればできるんだっていう経験を若い頃にしておくことはとっても大事。

水島:だからHameeの株価を10倍にするのだって、頑張ればできると本気で思っていますよ。

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▲飛び込み面を放つ水島

弱気になった社長を説得して実行したIPO

ー水島さんがHameeに来て一番頑張ったことって何ですか?

水島:やっぱり IPO ですね。これはやればできるんだという自信に繋がっています。

上場前には決算を何期分もまとめて作らないといけないんですが、毎週土日も使って会計士の先生と膝を突き合わせてやっていましたね。朝早くから夜遅くまで。毎朝会社の鍵を開けて毎晩自分で鍵を締める。

そんな働き方が3、4カ月も続いてもう最後には笑えてきちゃいました。でも、すごい楽しかったですね。

樋口:水島くんがいなかったら IPO はできなかった。途中、水島くんに相談したことあったよね。みんなが大変だ大変だって言うのでIPO止めようかって。そうしたら水島くんに「今までの努力はなんだったんですか!?絶対やりますよ!」って押し切られた。

水島:それはそうですよ!僕は銀行辞めて小田原の中小企業の経理財務部長になりに来たわけじゃないですからね。僕は結構野心家なんですよ(笑)
昔、みんなのいるところで「社長になりたい」って言ったら、社長に怒られたことがあるくらい。

樋口:えー、そうだっけ?怒ってない怒ってない。

水島:社長は怒っているときに下のトーンから来るんですよ。最近はチャットなのにそれがわかるようになってきました(笑)

今はみんなで何でもできる組織にしたい

ーとても順風満帆に聞こえるんですが、水島さんも挫折を味わったことはあるんですか?

水島:もちろんありますよ。人生の中で一番大きな挫折を味わったのが、Hameeが東証一部へ市場変更直後。人生の頂点とどん底が3カ月くらいで一気にやってきた感じでした。

Hameeを上場させるのは本当に大変でした。銀行で働いていたけれど、それまでIPOの経験をしたことなんてなかった。でも、なんとか上場に漕ぎつけた達成感がありましたね。そして自分なら何でもできる無双感もありました。無敵な感じ。

でも、当時のメンバーから「水島さんが何でも一人で決めている」と指摘されたんです。

樋口:あのときは辛かったよね。

水島:そうですね。「現場のことを何もわかっていない」とも言われました。その時はとてもショックで、受け入れるのに1年くらいかりました。

樋口:でも、辞めなかったのはすごい。

水島:正直辞めようと思ったこともありましたよ。でも、ようやく気づいたんです。結局、僕一人で頑張ってできることなんて限られている。一人で頑張ってもできないことの方が圧倒的に多いんです。だから、みんなの頑張りが混じり合うようにしなければいけない、って。

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樋口:頑張り方が変わってきた?

水島:変わりましたね。どうしたらみんなで頑張れるかどうやったらみんなの力を合わせて大きな力にできるか。そんなことをずっと考え続け試行錯誤しています。

ちょっとドライな言い方に聞こえるかもしれないけど、僕は基本的に、人と人とはわかり合えないと思っています。だって、みんなそれぞれ生まれも育ってきた環境も違うから。だからこそ、僕は相手のことを決めつけないように意識しています。

お互いわかり合えないけど、わかり合おうとすることが尊い。お互いの違いを認めるからこそ多様性のある組織ができる。それぞれが自分の好きなことや長所を活かして、最後までやりきる。そんなみんなの頑張りで大きなコトを成し遂げたいです。

そのためにも、メンバーの幸せや楽しさを大事にしながら、一緒にクリ魂を燃やしていく。

樋口:フリーじゃなく、組織として集う醍醐味はそこだよね!

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一緒に働いている仲間のために

樋口:今後はどんなことを目指していきたいの?

水島:Hameeが「いい会社になったね」と言われるようにしたいですね。いろんなステークホルダーがいるけれど、一緒に働いている人が「Hameeは良くなった」と言い続けられることができる組織にしたい

そのためには何のために自分たちがやっているのか、それを見失わないようにしたい。Hameeのミッションである「クリエイティブ魂に火をつける」もその一つ。

みんなが将来のキャリアを見据えながら働ける環境を作ることで、楽しい仲間たちとの仕事をもっともっと続けていきたいですね。

日本の人口は減っているけれど、一人一人の価値を上げて、楽しさの総量を維持したいです。

樋口:それってまさにみんなのクリエイティブ魂に火がついているってことだね!

ー 今日の対談を振り返っていかがでしたか?
樋口:今まで水島くんと自分は全然違うと思っていたけれど、案外似ているんじゃないかなと思い始めてきたね。

水島:確かに似ているかもしれない。あんまり認めたくないけど……。
でも社長のことは、ずっとすごいなーって思っているんです。自分が社長と同じ状況だったら、こうはできていないだろうなって。だからこそ抜きたい!

樋口:あ、まだ抜かれていなかったんだ!最初から抜かれていると思っていたよ(笑)

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さいごに

今回、この対談を聞いて一番印象的だったのは、2人の間に流れている心地よい空気でした。距離が近いながらも馴れ合わない。水と油のようだけど、お互いのことを認め合い、信頼している。

この関係から紡がれる空気が、Hamee独自のフラットな雰囲気を作り出していることに気づかされました。

また、経験豊かな一部上場企業の取締役が、「メンバーと一緒に頑張ることでより大きな成果を残せる」と信じていることは、何もないと感じがちな自分に大きな自信を与えてくれました。私のクリエイティブ魂にも、火がついた瞬間でした。

アフリカには「早く行きたければひとりで行け。遠くへ行きたければみんなで行け」ということわざがあるそうです。私たちHameeもみんなで知恵を出し合って、強い組織、クリ魂の燃える世界を目指していきたいと思います。

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