はま

日々のことなど

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最近の記事

村上春樹『街とその不確かな壁』を読んで

 71歳になった村上春樹が選んだのは、40年前に書いた作品を書き直すことだった。つまりこれは、あの頃の一人称視点の小説であり、海辺のカフカ以前の春樹の小説の要素が集結したような話であった。そこにはユミヨシさん的要素を持つ人や、緑のような一面をもつ人がいる。子易さんは、やはりどこか河合隼雄先生を思わせるところがあり、同時に羊的でもある。子供の交通事故のエピソードにはレイモンド・カーヴァーの影がみえる。100%の女の子がいる。図書館があり、深い穴があり、ロウソクの灯る小さな部屋が

    • 動くレゴづくりの天才を見つけた話

       ゲーミングマウスのホイールの調子が微妙にわるいのでマウスのねじを外して開けてみたら、ホイールに猫の毛がずいぶんからまっていた。中の軸を掃除するとだいぶ調子がよくなった。マウスの底面パッドの裏に隠されたねじをまわしながら、こういうメカをいじる作業が好きだなと思った。ゲーミングPCを作るのも楽しかった。でもちょっと簡単すぎる。もっと自由にメカを作りたい。アイアンマンみたいにアイデアを謎のスーパー3Dプリンタみたいのでフライデー(AI)がどんどん形にしてくれたら楽しそうだが、そう

      • こどもの読み聞かせには「くまのプーさん、プー横丁に立った家」が笑えるのでおすすめ

         こどもが小さいころは色々と本を読み聞かせしていたが、断トツで笑いが起こったのは『くまのプーさん プー横丁に立った家』だった。この本は作者が自分の息子クリストファー・ロビンに、持っている動物の人形たちとクリストファー・ロビン本人が出演する物語を話して聞かせるという内容なので、読み聞かせにぴったりである。とにかくハチミツに取り憑かれている頭の悪いくまプーさんと、その友達の小さなコブタを中心としたドタバタ劇なのだが、これは大人も読んでいていちいちおかしくて笑ってしまう。ちなみに「

        • 「だが断る」そして「だから気に入った」

           人生には決断が必要な場面がある。それはいつ起こるかわからないし、判断はすみやかに行わなくてはいけない。まごついていればその時は過ぎ去ってしまう。幸運の女神に後ろ髪はない。つまり決断には直感が必要である。直感を担保しているのは君の人生そのものだ。どのように生きたか、それにより直感は君の信念にそって研ぎ澄まされる。  漫画ジョジョにおいて最も有名なミームは、岸辺露伴の言い放った「だが断る」というセリフだろう。瀕死の状況で、仲間を呼べば命を助けてくれるのかと、なかば弱気にも見える

        村上春樹『街とその不確かな壁』を読んで

        • 動くレゴづくりの天才を見つけた話

        • こどもの読み聞かせには「くまのプーさん、プー横丁に立った家」が笑えるのでおすすめ

        • 「だが断る」そして「だから気に入った」

          ドラクエ3とクロノ・トリガー

           ドラゴンクエスト3とはつまり世界旅行のゲームだった。生まれ育った街を出て、他の街を訪ねる。闘技場のある街があり、砂漠にピラミッドがあり、ジパングには卑弥呼がおりヤマタノオロチがいる。船を手に入れて航海に乗り出し、後には巨鳥ラーミアの背に乗り空を旅する。世界を旅し尽くしたと思ったら、まさか誰も知らない裏の世界を旅することとなる。  人が古くから持つ世界を旅したいという気持ち、新しい地には常に新しい発見があり、船や飛行により行けるところが増えていく感動、それをドラクエ3 は見事

          ドラクエ3とクロノ・トリガー

          家の近くには

          家の近くには、 いいかんじのスーパーがあるといい コンビニもひとつはほしい 高すぎない寿司屋や蕎麦屋があるとうれしい 小さくていいから本屋がほしい 大きな図書館があると最高だ 広めの公園があるといい ツタヤとユニクロと無印良品があると便利だ おいしいパン屋もあるといいな 100円ショップもほしいよね 中華屋、定食屋、洋食屋 内科、耳鼻科、歯医者、眼科 音楽スタジオが近いとうれしいけど ジムがあったら行くかい すいてるプールがあればね 温泉とサウナは贅沢かな 鱒釣りができる小川

          家の近くには

          エンド・ゲーム以降のMCU雑感

          マーベルの作品はアベンジャーズ・エンドゲームをピークに力を失ってしまった。増えすぎた人口への対策として「指パッチン」でランダムに世界人口の半分を消失させるという、サノスが唯一と信じた解決策は、ヒーロー達の喪失と団結により、消失の回復にはいたった。だがそれは負った傷を処置したにすぎず、結局のところ世界の問題はなにも解決していない。それどころかますます悪化している。パンデミックに戦争。資本主義にあっという間に飲み込まれビジネス化した環境問題、ねじれてどこにいるのか見失われるポリテ

          エンド・ゲーム以降のMCU雑感

          映画館に最高のジャズライブを見に行こう。映画「BLUE GIANT」感想。

           君がもしジャズに少しでも興味があるのなら、あるいは、何かの楽器を真剣に練習したことがあるのなら、今すぐ映画『BLUE GIANT』を見に行こう。映画館のシステムより高級なオーディオを自宅に持っているのでなければ、この映画は間違いなく映画館で見るべきだ。そしてそのチャンスは今しかない。BLUE GIANTは漫画原作のアニメ映画だが、原作を読んだことがなくてもまったく問題ない。映画内容は1巻の物語の開始からで、みごとに話は完結する。もしもアニメに抵抗があっても、ジャズに興味があ

          映画館に最高のジャズライブを見に行こう。映画「BLUE GIANT」感想。

          映画スラムダンクのほんのちょっとしたネタバレを含む話

           傑作だった映画スラムダンクで、リョータが流川に、「そういえばおまえとしゃべるの初めてだな」と言う場面があって、同じ部活のレギュラーで全国大会まできててそんなことある?と一番笑えた場面だった。でも確かに漫画本編でも試合外で二人がしゃべってる場面は思い出せないし、それを知るファン向けの若干メタ的なサービスシーンにもなっていた。映画スラムダンクは基本的に、漫画原作を全く知らなくても楽しめるように作られており、ファンだけに向けたサービス的要素は極力抑えられている。そしてそれは正しく

          映画スラムダンクのほんのちょっとしたネタバレを含む話

          遠い山嶺の雪

          教室のまどぎわの席で数学の授業はわかりきっていたので耳で聞きながら外をながめていた。 とおくの山の雪の積もった頂きは黒と白のまだらで、そこに小さな横細い雲がかかっており、そこから小さな雪がきらきらとふっていた。 空は白くくもり、グラウンドも雪でおおわれている。 とおく山上のところだけ雪がふわふわとふるようなのが目をこらすとやっとみえるのであった。 教室のなかは暖房であつく授業は遅々としてすすまなかった。 かえり道はしんしんと雪がふっていた。 風がないのでそれほど寒くはない。

          遠い山嶺の雪

          フィッシュマンズの歌詞

           海外の音楽を歌詞を十分に理解できずに聴いていたことのほうが多かったのは、日本語の歌詞はあまりにも意味が強く入ってきすぎて、受けいれられない歌詞が多かったからかもしれない。例えば宇多田ヒカルは好きだが、ときに彼女の歌詞はあまりにもつらい。まあ、その他大勢のまったく気に入らない歌詞の歌より全然いいんだけど。一番好きな歌詞を書くのは、フィッシュマンズ佐藤伸治だ。フィッシュマンズは近年欧米で再評価されているそうだが、歌詞はどの程度理解され伝わっているのだろうか?  まず、「四つ階

          フィッシュマンズの歌詞

          Cut Your Hair

           レイモンド・カーヴァーの読んでない短編集があると思って、届いた本をみたら詩集だった。でもカーヴァーの詩はほとんど短編集みたいな詩だった。もともとシンプルなカーヴァーの物語がさらに研ぎ澄まされて、言葉は宙にうくんだけど、それも自然なまま。  詩ってふだん全然読まないなと思ったけど、歌詞ならたくさん読んでいた。昨日ペイブメントが日本でライブをやっていたそうで、10年くらいまえ下北沢インディーファンクラブでシャムキャッツがCut Your Hairをカバーしていたのを思いだした。

          Cut Your Hair

          and I love car

           千葉雅也氏が、『友人と電話していて、モチベーションが上がらないみたいな話をしていたので、車買ったら?と言った』というツイートをしていた。車の試乗レビューをしてるYoutubeは好きでよく見るけど、いまいち文句なしにほしいみたいな車が見つからない。車は、大学生の時、免許をとった後にバイトでためたお金で激安の中古車を買ったきり、今は所有していない。  初めて買った車は、三菱の2ドアクーペでミラージュ・アスティという車だった。ネットでみつけて少し遠くの中古車店にわざわざ買いに行っ

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          会話と文章

           保坂和志の小説を読んでいると登場人物の思考がそのまま漏れ出したように、庭の木を見て昔を思い出して、その思い出したことのなかでそういえばと他の話に移行してゆき、急に猫が飛び出してきて話が終わったりする。たしかに実際の思考はそのように自由にうつろいゆくが、小説の文章としてそれを部分的にであれ再現するのはめずらしい。文章にしてしまうと、整理され必要な言葉だけに取捨選択がおこなわれ、前後の論理的つながりを保とうとする力が否応なくはたらく。その作業により多くの情報は損なわれていくとも

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          庵野秀明と富野由悠季

           エヴァンゲリオンの庵野秀明が1993年に作った伝説の同人誌「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア友の会」が庵野本人により復刻出版されたので早速入手した。これは「逆シャア」をお題にした、庵野によるアニメ関係者との対談インタビューを中心に、文字がぎっちりつまった本だが、同人誌でありながら、押井守、鈴木敏夫、ゆうきまさみ、そして富野由悠季本人へのインタビューなど超豪華メンバーによる93年当時のアニメに対する生々しい制作話が読める貴重な資料となっている。庵野秀明が宮崎駿の弟子であることは

          庵野秀明と富野由悠季

          J2のチームを応援すること

           僕は今住んでる地元のJ2サッカーチーム、ジェフ・ユナイテッドの試合を2014年から基本的には全試合見ている。だいたいはDAZN観戦で、現地観戦は年5,6試合程度、ホームのみ。それまではどちらかといえば特定のクラブを応援するでもなく、なんとなく海外サッカーの面白そうな試合やハイライトなんかを見てる程度だった。ジェフは見はじめた2014年から強いチームではなく、目標であるJ1昇格は見えてこないが、そんなチームのサポーター、あるいはファンを10年近く続けている理由を考えてみる。

          J2のチームを応援すること