「だが断る」そして「だから気に入った」

 人生には決断が必要な場面がある。それはいつ起こるかわからないし、判断はすみやかに行わなくてはいけない。まごついていればその時は過ぎ去ってしまう。幸運の女神に後ろ髪はない。つまり決断には直感が必要である。直感を担保しているのは君の人生そのものだ。どのように生きたか、それにより直感は君の信念にそって研ぎ澄まされる。
 漫画ジョジョにおいて最も有名なミームは、岸辺露伴の言い放った「だが断る」というセリフだろう。瀕死の状況で、仲間を呼べば命を助けてくれるのかと、なかば弱気にも見える様子で聞く岸辺露伴。敵が、約束する。呼べ、早く呼べと言ったところに、露伴は「だが断る」と答える。客観的に見れば合理的ではない決断をして、Noをつきつける。だがそれを言い放つ岸辺露伴の目は勝ち誇っている。露伴はそう言うだろうなというムードを漂わせている。
 同じ岸辺露伴のセリフとして「だが断る」と対になる「だから気に入った」がある。シェフの友人がアワビを採るのを手伝ってほしいという。露伴は、自分は漫画家として社会的に少しは有名だし、アワビを育てた漁師の苦労を説く。それに対し友人は真っ直ぐな目で「『密漁』をします」と言い放ち、露伴は即座に「だから気に入った」と話にのる。その後なぜアワビが必要なのかの理由が判明し、それについて露伴は予見していた節はあるものの、その前に決断は直感的に下されている。これは犯罪行為を決断しているわけなので、客観的には不合理な判断である。だが友人が「ベネ(良し)。そうおっしゃっていただけると思っておりました。」と答えたように、露伴はそう答えるだろうと思えるキャラクターである。
 合理的な判断をするのは簡単だ。世界の仕組みを学び、統計を学び、何が合理的か判断できるようになればいい。問題は他人からみれば不合理に見える決断をする場合である。「だが断る」が必要な場合と、「だから気に入った」が必要な場合があるのだ。ただし、その決断を誤ったタイミングで下せば命はない。それを決断できるように、直感を研ぎ澄ませろ。

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