こどもの読み聞かせには「くまのプーさん、プー横丁に立った家」が笑えるのでおすすめ

 こどもが小さいころは色々と本を読み聞かせしていたが、断トツで笑いが起こったのは『くまのプーさん プー横丁に立った家』だった。この本は作者が自分の息子クリストファー・ロビンに、持っている動物の人形たちとクリストファー・ロビン本人が出演する物語を話して聞かせるという内容なので、読み聞かせにぴったりである。とにかくハチミツに取り憑かれている頭の悪いくまプーさんと、その友達の小さなコブタを中心としたドタバタ劇なのだが、これは大人も読んでいていちいちおかしくて笑ってしまう。ちなみに「頭がわるいクマ」というのは本の中で実際にたびたびでてくる表現で、現在の価値観で新規に児童書を作ろうとしたら編集NGがでてもおかしくない気もするが(僕が持っているのは1962年版で古い訳なのでその後改訂されている可能性はある)、実際クマの頭がわるくそれで話はどんどんおもしろくなっていく。クリストファー・ロビンは物語にでてくる唯一の人間であり、とても聡明でみなに尊敬されている。実際に話を聞いているロビンは小さな子供であるが、語り手である父が物語の中で息子を一貫して賢く勇敢で尊敬されるキャラクターとして語っているのも愛があって気持ちがいい。
 基本的に善良で純粋なクマやコブタたちなのだが、なぜか突然カンガルーの子供をさらってコブタをカンガルーのポケットに入れる計画を建て実行したり、川でおぼれるイーヨーを助けようとして何故かプーが橋から大きな石をイーヨーに投げて直撃させたりと、そんなことある!?という話が展開される。かわいそうな灰色の老ロバであるイーヨーは常にかわいそうな目にあうが、英国らしく紳士なアイロニーで返していくのでそこも最高である。
 クマはあまり脈略なく、とつぜんよく歌いだすが、少なくとも日本語訳では韻もなく語数もばらばらなので歌唱難易度は高い。もしかすると真面目な方は読み聞かせ時若干こまるかもしれない。僕は適当な性格なので、適当に歌を作るのはお手のもので、歌うと子供は大体笑うので爆笑ポイントとなる。
 結局のところ「くまのプーさん」の話の面白みというのは、読み聞かせる子供のさらにもう少し小さな頃の純粋で頭がわるくてかわいいことが生みだすおもしろな出来事のエッセンスが詰まっているところなので、それを読み聞かせる大人も聞く子供も自分の体験を通して笑えるのだ。
 「くまのプーさん」を読んでキャラクターに愛着が湧いてから、東京ディズニーランドで『プーさんのハニーハント』に乗ると、イーヨーが強風で家を倒されて「ご丁寧にありがとう」と言っているのを最大の見どころとしてより笑えるようになるのでおすすめである。

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