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解読「羅生門」

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芥川龍之介の「羅生門」を中心に解読しています。
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#方丈記

「羅生門」を読む⑦ 完結編/観点別考察

「羅生門」を読む⑦ 完結編/観点別考察

これで「『羅生門』を読む」シリーズは完結です。だいたい書き尽くしたかなあ。まとめの意味で、観点別に述べてみました。長いので、興味のある項目を読んでいただければいいと思っています。お暇なときにどうぞ。

▢極限状況の創出

日本文学において極限状況下の人間を描く作品は、大岡昇平の「野火」「俘虜記」、武田泰淳の「ひかりごけ」、島尾敏雄「出発は遂に訪れず」、安部公房「砂の女」、中島敦「山月記」あたりが思

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「羅生門」を読む⑥ 精読編3ー主題/「ある勇気」の覚醒

「羅生門」を読む⑥ 精読編3ー主題/「ある勇気」の覚醒

▢前回までの振り返り

〈「羅生門」の場面展開〉

〈下人の位置と変化〉
場面1において、下人はこのままでは飢え死にする状況にあっても盗人になる「勇気」がもてませんでした。それは、平安末期の濁悪世の中にあっても、下人がまだ既成の道徳枠組みの住人であったことを物語っています。

場面2は梯子の中段の下人の描写から始まります。下人は「一人の男」と表現されていますが、楼内という未知の世界に近づくことによ

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