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薄楽詩集

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詩をまとめています。
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#ジャン・ギャバン

【詩】たぶんジブラルタルまで

【詩】たぶんジブラルタルまで

 たぶんジブラルタルまで

俺は共産主義者だが
このトラックを盗んだ
その理由がけっさくだ
つまり、オンボロだったんだ
わかるかい 小僧
廃棄するんだとさ
まだ六十キロは出せるのに
書類に印鑑が押されたんだ だから
俺はこの相棒と一緒に党を辞めたのさ
ことわっておくが
俺は今でも共産主義者だぜ
運転手はそんなことを陽気に言った

夕立があがると彼は窓を開けて
タバコを吸いながら
どこへ行くのかと聞

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【詩】哀歌(エレジー)

【詩】哀歌(エレジー)

やっとひとりになれた夜 おれは波止場の見える安ホテルの一室で 
情交の名残りでもあるかのようにシーツに落ちていた あの時の
一本の縮れた女の陰毛を思い出していた

湖水を染める晩秋の夕焼けはとっくに終焉し
もうじき窓には無影灯のように青白い
女の貧相な乳房が姿を見せるだろう

おれが女をはじめて抱いたのは いや 抱かされたのは どうでもいいような研修会のあとの五階建ての薄汚れたこのホテルだった 初

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