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自由への闘争/連載エッセイ vol.10

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.12(2002年8月)」掲載(原文ママ)。

先日またひとつ歳を重ねた。
見かけとは裏腹に、戸籍上の年齢は意外に若いわたしであるが、心境は正直複雑なものがある。

十年一昔、とはよく言うが、わたしにとっての十年前とは即ち小学校時代の事であり、放課後の街を駆け回る姿のはずであった。
しかし最近気付いてしまったのである。
わたしにとっての「正確な」十年前とは大学受験を控えた高校時代であることを。
これはかなりショックであった。
なにせ高校時代といえば自分の中ではほんの数年前という認識でしかなく、大学時代は昨日おとといという感覚だったのだから。

いや~、まいったまいった、道理でお腹周りも気になり始めるわけである。思えば前の職より今の職の方が、キャリアが長くなってしまった。
十年恐るべし。

さて十年といえば、今年この岩手県内で創立十周年を迎えた団体が存在する。
その団体が身を置いている業界は浮き沈みと競争が激しく、新団体を立ち上げても数年持ちこたえることは稀である。
そのため十周年を迎えること自体、快挙に近いのだが、加えてその団体は全国区の知名度を持ちながらも拠点を東北、いや「みちのく」から動かしていないのだから更に驚きである。

ここまで書けば、ある程度の人はお気付きだろうか。
わたしの言う団体とは、ザ・グレート・サスケ氏率いる「みちのくプロレス(以下、みちプロ)」のことである。

みちプロやサスケ氏についての詳しい説明は、紙面の都合上ここでは割愛させて頂く。
わたしの高校の先輩ということもあり、デビュー直後から注目していたのだが、その後の氏の動きはまさに驚嘆に値する。
修行で渡ったメキシコで庶民の生活に根ざしたプロレスを目のあたりにし、娯楽の少ない東北での再現を果たすため「みちプロ」を旗揚げ。
有名団体のトーナメントに参加し準優勝、テレビ出演は増えるも、本拠地東北での観客動員は伸び悩み、地元マスコミや行政の冷遇などに見舞われ、本来の目的達成までは未だ道半ばといえる。
それでも氏には諦める気などさらさらないようだ。

先日盛岡で行われた十周年記念興行を見て、わたしは思わず涙を流してしまった。
それは手段は違くとも、同じく世界で認められた本物を、他のどこでもない地元東北に根付かせたいと日夜活動している自分を、氏の姿に重ねているからなのだろうか。

みちプロの行うメキシコ流プロレスを「ルチャ・リブレ」という。
日本語に訳すと“自由への闘争”。
この十年に及ぶ氏の「闘争」に拍手喝采を送りつつ、いつの日か「戦友」として肩を並べるべくわたしも精進しよう。


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