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琥珀色の夕べ/連載エッセイ vol.44

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.46(2008年6月)」掲載(原文ママ)。

数日前の事。
不覚にもまた歳を重ねてしまった。

改めて、自分の実年齢が物語る、客観的な「数字の大きさ」に恐れ慄いてしまう。

月並みな表現ではあるが、子どもの頃に思い描いていたこの年齢の人間って、もっと「大人の印象」だった様な気が…。
という事は、若い世代から見た自分はもう既に立派な「おっさん」な訳で…。
知らぬは本人ばかり也とは正にこの事である。
相も変わらず、どうしてこうも「大人としての落ち着き」が生まれないのか?

仕事面から考えれば、まず私が携わっているカイロプラクティックという仕事は、特にこの日本に於いて、まだまだ発展途上にあり、様々な物事を次々に仕掛けていく必要がある。

その為、まだまだ落ち着いてなんかいられない状況がそうさせているのだろうか?
格好つけた言い方をすれば「成熟よりも成長」重視…。

しかしここまで考えて、それだけではない事に気付く。
仲間内を見渡すと、同年代でも十分に「大人」な連中がいるからだ。
彼等と自分の仕事上での決定的な差異は何か…?

ひとつ思い当たるのは、「患者層の違い」。
つまり、私の経営する院の患者年齢層は、他と比較して非常に高いのである。
これは以前から薄々感じていた事ではあったのだが、今年に入ってそれがデータで実証された。

私が所属する全国展開のカイロプラクティック・クリニック・グループでは、業界のみならず、医療界全体に先駆けて「電子カルテ」を導入しており、本部管理の下、様々なデータを膨大な分母から抽出できる。

(だから皆さんに説明する「施術計画」は、施術担当の個人的経験のみならず、全国津々浦々にて実践された結果を基に、最善のモノを提示してますからね~。ちゃ~んと言う事を聞くように!!)

それによれば、当グループの患者年齢層で飛び抜けて多いのが「30代」。
ところが当院でのトップはダントツで「50代」!!

しかも全国的には「少数集団」に属する「70代」がトップ3に食い込むなど、明らかに他のクリニックとは異なる来院状況が生じているのである!!

これには院の所在地が「郡部」である事が大きく影響していると思われるが、そのような患者さん達に温かく接して頂く機会が多い分、当然、祖父母に可愛がられて育った元来の「末っ子気質」が抜ける訳もなく、結果、いつまでも「大人としての自覚」が生まれないのも当然なのであった!! 

ウヮッハッハ~!! ハ~…。

と、以前までであれば、こんな強引な論法で自分自身をも煙に巻いていたのであるが、先日とある「研修」に参加した事で、今まで目を逸らしていた自分の「足りないトコロ」にも目を向け始めるべき時期なのかなぁ、と考え始めている今日この頃なのである。実は。

恥ずかしながら私は、前の職を辞して、このカイロプラクティックに専念する際、「家族」であれ「友人」であれ、それまでの人間的な繋がりを全て絶ってしまった。

もちろん名前に「公」の付く堅い職業から、当時は今以上に先行きの見えない、ある意味「怪しい」職業に転身した事に理解が出来ず、自分から去っていった知人も少数ではあるが存在した。
しかしそれ以外の殆どは私の方から意識的に疎遠にしてしまったのだ。

当時はただ無我夢中で、何故その様な態度を取ったのかわからなかったし、考えようともしなかった。
しかし、この仕事に専念するようになって10年目に突入した今、振り返って考えると見えてくるものがある。

つまり、強がり嘯いていた本人が、実は誰よりも不安だったのだろう、新しい環境へ突入する事に。
だからこそ何ものにも頼らないよう、頼って意志が挫けないよう、自分を追い込んでいたのだ。

時を経て今、あの頃思い描いていた「理想のカイロプラクター像」にはまだ遥か遠く及ばないものの、様々なものが形となり始め、曲がりなりにも「成長」を自覚できるようになった。
だからこそ、今度は「理想の大人像」にも近づきたいと切に思う。

そんな風に考えるきっかけとなったのが「小児カイロ研修」への参加であった。

研修自体は年3回ある内のまだ第1回目しか修了していないのであるが、そこで扱った「周産期(妊娠や出産の前後期間)の母親や子どもに対するカイロプラクティック」を学ぶに付け思ったのである。

今更ながら自分が今ここに存在しているのは、太古から脈々と連なる人間の営みのお陰なんだなぁ…
ヒトと交わる事で生きていく人間にとって「繋がり」とは何よりも貴重なモノなんだなぁ…
とするとこれまで疎遠にしていた家族や友人のみんな御免よぉ…と。

話は最初に戻って、「2」を掛けるとその頃生きているかどうか、必ずしも断言できない年齢になってしまった。
つまり平均寿命まで生きられるとしても、「折り返し地点」が近づいている事になる。

これまでの10年同様、「理想のカイロプラクター像」を追い掛けるのと同時に、これからは少し心のドアを開いて「格好いい大人像」も追い掛けてみようか…。

数少ない友人から誕生日に貰ったグラスに注いだ琥珀色のコニャックを燻らせながら、地味に決意する夕べなのであった
(明朝の患者さん、お酒臭かったらゴメンナサイ!!)。


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