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朝焼けの達観者/連載エッセイ vol.28

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.30(2005年10月)」掲載(原文ママ)。

只今時刻は午前5時半。
吹き出る汗を拭い、乱れた呼吸を鎮めながら私はPCに向かっている…。

などと書き始めると、読者の皆様の様々な憶測を呼びそうであるが、実は何て事はない、朝のジョギングを終えて帰って来た所なのだ。
そう、恥ずかしながらワタクシ1週間程前から走り始めたのである。

理由は簡単。
余りにも生活が不健康だから。

『ナントカの不養生』とはよく言ったもので、この仕事に就いてからの不規則な生活(特に食方面の…)が祟り、体型は激変。
一時は理想の体重を20kg近くオーバーしてしまった。

こりゃイカンと思い、最初に始めたのが食事制限。

仕事を終えてから深夜に摂る夕食を控えた。
当然『アルコホ~ル』も断つ事になる為、『ご褒美』をお預けされた様で少々寂しいものの効果はテキメン。
約2ヶ月で服のサイズが大幅ダウンするまでに至った。

しかしである。
食事制限は『徐々に体が絞れていく楽しみ』こそ有れ、なんだか『引き算的な思考』の様な気がして性格が歪んでいきそうな気もする。
ここらで一丁『攻め』に転じたいなぁ、と考えて選んだのが『早朝ランニング』だった訳だ。

その際、思案したのが時間帯。

あまり遅い時間帯だと近所の目に触れる為、自意識過剰な自分としては抵抗がある。
そこであまり人が出歩かず、自分が起きられる限界の時間設定をした所、この『午前5時台』に白羽の矢を立てたのである。

さすがにこの時間帯の人影は疎ら。
しかしそこが盲点であった。

時間が時間なだけに、不思議キャラと遭遇する確立が高いのである。
つまり私の様に『何らかの理由』でその時間を選択せざるを得ない輩が闊歩しているのだ。

小声で相手を罵り合いながら並んで歩く熟年夫婦(結婚って奥が深いな~)。

やたらタイトなボディスーツを身に纏ったマッチョな男性(きっと『ロッキーのテーマ』が流れてるんだろ~な~)。

何故か後ろ向きで進む老人(すんません。目が合いっぱなしです…)。

そして今朝の出来事。

走る私の前方に、大きな犬を連れたおじいちゃんが佇んでいた。

幼少時にブルドッグに追い掛けられマウントポジションで雄叫びをあげられた経験を持つ私は瞬間的に身構え、危険範囲を測定、かなり大回りをして横を通り抜けようとした。

案の定、犬は私の姿を確認すると猛烈に駆け出してきたが、こちらは首輪に繋がる綱の射程距離は計算済み。
怯む事無く(大きな弧を描いて)突き進んだ。

ところがその犬はこちらの想定範囲を遥かに超えて突進してくる!!

『わっちゃ~!!』

大声を上げながら私は半ベソ状態で犬の追撃をかわし、横目で確認した綱の長さは約10m。
犬に引かれて急激なショックが入るのを防ぐ為であろうが、それじゃあ傍迷惑だよ~、とおじいちゃんを睨みつけると…。

彼は今起きたハプニングにまるで気付く事無く、遠い朝焼けの空を深い笑みを湛えて眺めていたのだった…。

合掌。


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