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クツとクルブシとワタシ/連載エッセイ vol.53

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.55(2009年12月)」掲載(原文ママ)。

突然ではあるが、私の『内踝(うちくるぶし)』は『2つ』ある。

『いゃいゃ、左右の足に合わせて2つあるのは当たり前じゃん!!』と突っ込むのはいかにも早急。
正確に言うと『片足に2つずつある』のだ。

さて、この書き出しを読んだ親愛なる読者の皆様は、恐らく自分の内踝に目を落とし、触れてその数を確認し、そして本来ソコに並んで存在するはずの無いブツがムクムク盛り上がっている様を想像して、若干引かれている事であろう…。

何故こんな事態に陥ってしまっているのか…?
それは我が家系の哀しき物語から紐解かなければならない…。
(無意味に『サスペンス調』。)

私は『外反母趾』である。
(突然のカミングアウトpart2。)

と言っても誤解して欲しくないのは、一般的な所謂『外反母趾』は青年期以降、主に『足底アーチの変位(距骨をはじめとする足根骨の変位)』で発症するのに対し、私の場合は主に10歳前後で発症する『遺伝性』のものなのだ。

その証拠に、我が家系の男性はほぼ全員『外反母趾』であり、しかも決まって『左足』の変位角が大きいのが『チャームポイント』である。

幼少時に大きく曲がった祖父の母趾を不思議に思った私に父が…

『これこそ我が家系、「村長(むらおさ)」の証なのだ!!』

…と語った様は、どこか誇りに溢れていた…。

(そして、そんなヘンチクリンなトコにアイデンティティーを求める地方豪族の末裔って一体…と幼心に感じた事も付け加えておこう…。)

そして件の『第2の内踝』は、その外反母趾が進行するにつれ、本来の内踝の前斜下約3cmの箇所に姿を現した。
打ちつける様な強い刺激が入らない限り、『靴擦れ』さえ気を付ければ悪さをしないものの、やはり気にはなる。

念の為、中学の時に整形外科でレントゲン検査をするも『骨の変形・経過観察(所謂「放置」ね!)』の診断。

当時の自分が他の診断を仰げるハズもなく、様子を見ている内に、徐々に気にしなくなっていった…。

(ただ一度、大学時代に
 泊り込みでスキーへ言ったときの事。
 新品のスキー靴で張り切り飛ばし過ぎた私は
 件の内踝からの反乱を受け撃沈。
 カクテルライトに照らされた夜のゲレンデを
 女子達と楽しく滑走する仲間達の姿を
 ロッジから眺めるという悲劇は…あった…。)

そして今年の秋。

私は北海道への講師出張を控えて少々ご機嫌であった。
何故なら暫く探していた、念願の『青い革靴』を手に入れたからだ。

自称『イタリア系東北人』の私は靴選びにウルサイ。

講師仕事の時は当然スーツを着用するが、何も地元からスーツ姿で出掛ける訳もなく、当然カジュアルな格好で旅立つ。
そうなると、スーツにもカジュアルにも合う靴選びが重要になる訳で、今年に入ってから妙に『青靴』が欲しくなった私は、海外出張時も探したが見つからなかった理想のブツを、やっとの事で雑誌にて発見し、靴屋に注文し…

(ハイ、もちろん地元の店頭には
 そんなハイカラなブツ置いとりません…。)

…その手にしたのであった。
(パンパカパ~ン!!)

その『青靴』はソール(中敷)に運動靴並みのクッション性を備えたのが特徴で、確かに履いてみると心地良い。
台風一過の青空の下、私はそのクッションに支えられ、足取り軽く北海道行きの飛行機に乗り込んだのだった。
悪魔が足元でほくそ笑んでいるのにも気付かず…。

異変を感じ始めたのは、翌日のセミナーの打合せを終え、千歳空港近くのアウトレットモールを時間潰しに闊歩する、その日の夕暮れ時であった。

『ナンカ…痛い…カモ…』

最初は単なる靴擦れかと思った。
しかし発生箇所が、通常の靴擦れポイントと微妙に異なる…。

『ケッコウ…痛い…ゾ…』

その頃には、痛みの感覚が集約され、次第に発生源が特定されていく…。
決定的な事実を掻き消したい思いとは裏腹に…。
涙で滲んだあのゲレンデの光景が脳裏に蘇る…。

そう、その靴は優れたクッション性を有する為、結果として靴内で足の上下運動が通常以上に発生し、その結果、私の『第2の内踝』が靴の縁に何度も擦り付けられ、激痛を発し始めていたのだぁ!!
ギャ~~!!

その後、人間の自己治癒能力を信じてホテルで就寝するも状況は変わらず、翌日のセミナー中は立ちっぱなし&小走りっぱなしの為、症状悪化。

夕刻、打ち上げに向かう現地の仲間達と別れて、更に翌日の関東でのセミナーへ向かう為、羽田行きの飛行機へ乗り込む。

痛む足を引き摺りながらもナントカ電車を乗り継ぎ、翌日の会場近くのホテルに辿り着いた頃には、時計の針はテッペンを越え、私の体力も限界を超えていた…。

そして翌日のセミナー中、まさに自己との戦いであった。

講義に熱が入ってくれば、ナニかが分泌されるのであろう、痛みは全く気にならない。
しかし、少しでも気を抜くと、足元から体内に響くような重く鋭い痛みがズゥ~ンと這い上がってくる。

講師たるもの、周囲に弱音を見せてはならない。
休憩中も気丈に振舞う私へ、何も知らない仲間達が掛けてくれた『その靴イィねぇ!!』という無邪気なファッションチェックが、ド○小西やピ○コの辛口コメント以上に胸を(正確には足部内側を)エグるのだった…。

『スビバセン…痛いッス…ちょっとみてグダザイ…』

ついに私は最終手段を選択した。
メイン講師として会場入りしていた我が師匠に泣きついたのである。

事情を察した師匠は、嫌な顔一つせず(アリガト~ゴゼ~マスダ!!)、私の足部を手に取り触診し始める。
しかし、どこか様子がおかしい。
いつもなら、その卓越した触診力で瞬時に診断を終える師匠が小首を傾げたまま、更に触診を続けている…。

そして、顔を上げた師匠から発せられた言葉はあまりに意外なものだった。

『コレ…骨の変形じゃナイぞ…。』
『エェェェ~~!!!!』

曰く、過剰骨か、もしくは外反母趾の様に、本来のバランスが崩れた部位に体重や運動の負荷がかかった場合、その負担軽減の為、本来は存在しない箇所に骨の様な組織が発生する事があり、この箇所に発生した例は見た事がないが、恐らくこの『第2内踝』もソレであろう、との事。

『その証拠に…』

…と師匠は私の足根骨(足部を構成するブロック上の骨)の全てを固定した上で、その『第2内踝』を摘まみ、ソレだけを僅かに動かして見せた。

『足根骨の変形であれば
 コレ自体は単独で動かないはず。
 他の骨を固定しているのに
 コレだけが動くのがナニよりの証拠』

…と『解説』してくれた。

『形成され始めならバランスを整えることで
 肥大化を防止したり
 場合によっては引っ込む事もあるんだが…
 ここまで「立派」に育ったなら仕様がないな…。
 とりあえず他の足根骨の可動つけて
 負担軽くしとくぞ…!!』

今回の健康格言。

『自分では諦めてしまっている事でも
 一度専門家にみて貰いましょう!!
 思わぬ発見や
 打開策が見つかる事があるかもよ!!』

そんな訳で、『姿勢と運動機能のスペシャリスト』でお馴染みのJFCP加盟院へ皆おいでやすぅ!!

(誰かの様に手遅れになる前にぃ!!)


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