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アディショナル・タイム⑦
「セツナ、いま君は何をしようとした?」
新谷の前で憤慨しているアト。睥睨する彼女の目は、燃え盛る炎すら凍てつくような、そんな冷たさだった。先ほどまで沙良の部屋にいたはずだが、景色が変わっている。だが、新谷には見覚えのある風景でもあった。そう、ここは初めてアトと出会った、あの空間。遥か彼方まで、純白に包まれた、あの広大な空間だ。
「えっと……。俺は……本当のことを打ち明けようとして……」
「……
アディショナル・タイム⑤
「沙良……?」
そこにいたのは、新谷の幼馴染だった。この場に居るなど予想していなかっただけに、思わず声が上擦ってしまった。
「お前、この前知り合ったばかりなのに呼び捨てかよ」
「あ、ああ……すみません……。ちょっとびっくりしちゃって……」
「いや、全然いいですよ! 気にしないでください」
そう言って沙良はペコペコと頭を下げていた。
「急に呼んで悪かったな、古川。沙良ちゃんから連絡あってさ、お前
アディショナル・タイム②
新谷の遺影の前には、多くの人々の姿があった。
「葬式に集まる人の数で、その人間の価値がわかるそうじゃないか」
アトは新谷に語り掛けるように言った。新谷は言葉にならなかった。
「まあ私にはこの数が多いのかはわからないが」
客観的には参列者は多いとは言えないだろう。だが、新谷にはこの場に赴いてくれた人がいるという事実が何よりも衝撃だった。参列者が順番に線香をあげていく。
「おお、綺麗な女がお前の
アディショナル・タイム①
「死にたい……」
この言葉を呟くのは、もう何回目になるだろうか……。ふと、そんなことを考えた。素朴な疑問だったが、これまでの人生で何枚パンを食べたか? という問いと同じことだと思い至り、彼はそこで考えるのをやめた。
社会人になって、五年目の春。新谷刹那(あらやせつな)の精神は限界を迎えていた。
彼は大きな過ちを犯した。情報漏洩。重大なインシデントだ。彼は昨日、自宅に帰ってから仕事をするため
Whatever you want
「人の金で食う肉は美味いッ!! どうも、蓮野はぎりで〜す!!」
カメラの前で、私は手を振る。その動きに合わせるようにして、3Dのキャラクターが動く。
蓮野はぎりというのは、私が作り出したキャラクターのこと。私はいま"VTuber"として生計を立てている。
私がVTuberとして配信を始めたのは半年前のこと。あっという間に登録者が増えていき、現在は3万人を超えた。
まだまだ大手と比べたら大し
時間を0.1秒だけ止められる男の話
俺には、ある"能力"がある。それは、時間を止める力だ。夢のような能力だと思うだろう。ああ、羨んでくれてもいい。だが、過ぎたる能力というのは、往々にして、それに応じた「代償」がつきものだ。俺の力も例外ではない。時間を止められるのは――たった0.1秒だけ。
しかも、一度時間を止めると、次の日とてつもない筋肉痛に襲われる。それだけ?と思うかもしれないが、これがめちゃくちゃきつい。ギリギリ日常生活は