どんなヴィランだって
「ほんとうに無理、気持ち悪い、やりたくない」
あぁ、胸を突き刺すこの暴力達もいつかきっと。
だって、そう信じるしか、無いじゃないか。
【来年のプレタ展は芳賀さんの案でいきます】
プレゼンで勝ち抜いた私は、6月に行う展示会の
リーダーを務めることになった。
“人類学の理論を詰め込んだファッションショー”
人類学の持つ「他者への温かい想像力」を醸成
させる服を作っていきたい。
けれど、多数決で決めたものだから、中には
反発する人もぽつぽついて。
反乱分子がいる中でリーダーなんて務まるのか。
あんなに人類学を自信満々に語っていたのに、
入学する前からの目標がやっと叶うはずなのに、
いざスタートラインに立つと、脚が震えてくる。
不安になって落ち込んで、うずくまっていた私に、父がそっと手を差し伸べてくれた。
そうだ。
おとぎ話も、ヒーローものも、日常漫画ですら、
ヴィランが潜んでいて、彼らのおかげで、物語は
最高に輝いていくんだ。
そして最終話で手を取り合うお決まりの展開は、
何度見たって、分かっていたって、感動する。
共に作品を作り上げる半年間、怒ったり泣いたり
ぶつかり合ったりしながら、最後には誰もが納得
する圧倒的に美しい服を作っていきたいな。
大丈夫。
私達はいつだってハッピーエンドなんだから。
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