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唯の日常なんて

知らなかった。
自分の誕生日より浮かれる日があるなんて。

「誕生日なんて唯の日常。何もしなくて良いよ」

どこまでもアッサリしている君が呟く。
ううん、君が良くても私が駄目なんだよ。

けれど、一度も恋人の誕生日を祝ったことの無い
私には、知識も、経験も、日数も限られていて。

そうだ。

今の私に出来る最高の料理ラザニアを作ろう。
余ってるチェックの布で、テーブルクロスも。
君が私に似てるって言ってくれた薔薇も飾ろう。

プレゼントは、やっぱり革のキーケースかな。

今は、行ってらっしゃいも、お帰りも、全部
言えないから。私の身代わり。お守りだよ。

毎日、健やかで、嫋やかに、暮らすんだぞ!!

❄︎ ❄︎ ❄︎

「わあ〜ラザニア大好物って言ってたっけ?」
「あれ、このテーブルクロス初デートの時の!」
「いつも鍵財布に入れてるの、よく見てたねぇ」

ふふ。ふふふ。

「こんなに楽しいなら、毎日誕生日でも良いな」

普段あまり顔に出さないはずの君が見せてくれた
緩んだ口、溶ろけた目、火照る頬。

君が隣にいたら、どんな日常も、誕生日みたいに
浮き足立っちゃうんだから。魔法だね。

改めて、お誕生日おめでとう。
これからも、いっぱいお祝いさせてよね。
ダイスキダヨ~~

昨日も練習でラザニア食べたなんて、
あと6皿分は材料あるなんて、
君は笑って許してくれるかな。

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