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「ジャズピアノ」 けっち

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初めて買ったCDは観月ありさの「伝説の少女」シングル盤だったことは以前noteに書きました。

ロックバンドでもMr.Childrenでもない「アイドル」から音楽鑑賞がはじまった少年(僕)は8年後、ジャズにどっぷりとはまることになります。どっぷり、どっぷりとジャズという音楽の深みにハマって、以来20年がたちました。でもジャズの魅力は出会ったころと同じくらい、いや、むしろその何倍も大好きです。ずっと好きで、それが大好きにかわって「ああ、ジャズはいいよ!」と誰彼と薦めたくなる。そういう趣味に出会えてよかったな、とこの文章を書きながら思ってます。

好きになるっていいですよ。あらためて強調します。というのは、好きになってしまうと、それが本当に「好き」なレベルになってしまうと、他人の評価を気にしなくなる。

どういうことかというと、僕は楽譜がよめません。ピアノもまったく弾けません。だから20年ジャズを聴いていても、ジャズという音楽が具体的に何なのか説明できない。ジャズの知識だって、スラスラっとジャズのレコードの豆知識を披露することもできません。それに「この曲がオススメです!」とたとえばこの文章でこれから挙げるつもりのジャズ曲も、一般的なジャズマニアからすれば「え? 20年ジャズを聴いてきた人が、こんな誰でも知っている名曲紹介するの? なんだよ、全然ジャズわかってないじゃん」と言われることも承知しています。

でも、僕はジャズが大好きだから別にいいのです。自分が好きなように楽しめばいい、理論も名盤の定義もウンチクもまったくなくてもいい。ジャズが大好きだ! と思える自分にとっての名曲であればそれでいい、と今ではハッキリ書くことができます。

それがジャズを聴きはじめたころは、そうではなかった。

ジャズってなに? 「イパネマの娘」はボサノバって言われているけど、どうしてジャズとしてかかっているの? どうみてもロックにしか聞こえないのもあるし、古いトランペッターが1人で吹いているのも、学校のブラスバンドみたいなのもあるし、それらを全てジャズって言ってもいいの? ……僕はこういう質問にすべて答えることができなければいけないと思っていた時期が長かったです。そしていわゆるジャズの名盤をおおやけの場所で紹介することも恥ずかしがっていました。誰も知らないような秘曲を紹介してこそ、ジャズ好きのアピールができる! と思っていて、みんなの知らないようなウンチクをネットで検索して拾っては「知ってるぞアピール」する。これがジャズ好きの流儀なんだ、と思い込んでいた。

こういう自分の頭でっかちなジャズ観をぶちこわしてくれたのが妻のジャズとの向き合い方でした。僕は妻と出会って付き合ってから現在にいたるまでほとんどの時間、ジャズを部屋や車でながしています。でも妻はまったくジャズの名盤や名曲のウンチクに興味がない。僕が自慢たらたらに「このピアニストはボクシングをやっていてね、それでボクサーあがりなだけあってタッチも無骨だけど地味な味わいがある」などと解説しても「ふーん」と言ってたぶん、まったく興味がない。どれほどマイルズ・デイヴィスが伝説的ミュージシャンだったかを語っても、まったく反応しない。

でも、たとえばバド・パウエルが弾く名曲「ライク・サムワン・イン・ラブ」をかけると、妻は聴きながら無意識に小刻みに肩をゆらせていって口ずさんだりします。


ビル・エヴァンズの「ワルツ・フォー・デヴィー」のアルバムを繰り返しかけていると、この曲を「自分のテーマ曲」と呼んでいたこともありました。でもその演奏が伝説的ピアニストのビル・エヴァンズだったことや、この演奏のベーシストがスコット・ラファロであることなど何度話してもまったく反応しない。


妻の耳はどんな有名な演奏家や世間一般の評価に踊らされることなく、ただ自分が聴いていて首が自然に揺れてきたり鼻歌をうたいたくなる曲を好きになるだけです。こういう聴き方はもしかして頭デッカチでネットで調べたウンチクを得意げに語る僕より「はるかにジャズがわかっている」のではないだろうか? そう思いました。

もし、ジャズを、まずはジャズピアノから聴いてみようと思っている人がいたら、ぜひぜひジャズの専門家が薦める本などまったく参考にせずに、誰がなんといおうが「え、キースジャレットが好き? わかってねえな」と言われようが「ビルエヴァンズなんか、緩いよ」と書かれていようが、自分が好きなものを好きなように聴きつづけてみてください。そしてもしジャズについて書いてみようと思うときは、外野の声より自分の心の声をしっかりうけとめて好きなジャズについて書いてみてください。おっと、これはジャズにかぎりませんね? 今日もありがとうございます。

追伸 最後に僕自身の好きなジャズピアノ曲を1曲紹介させてください。アーマッド・ジャマル「ポインシアナ」。この曲をめぐる自分のストーリー、また機会があれば書きたいです。大好きです。



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