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レース業界とその未来を対談で語ってみた!

こんにちは、ドイツレースチームで働く山下です。
先月の10/28にスポーツコミュニケータの西原さんが運営しているnoteサークル"勝ち負けだけじゃないスポーツの勉強会"のゲストとしてお話させて頂きました。社会人になって公の場でお話しする機会を頂いたのは初めてでしたが、楽しくお話させてもらいました。

その中の話題を再度ピックアップし、自分なりに推敲してみました。
いくつか紹介させてください。

(1) レーシングドライバーは自分が得意な運転スタイルよりも、データ解析結果を優先しないといけないのか?

現職であるデータエンジニアの仕事についてお話している際の質問です。

現在は走行データでドライバーの運転操作の99%が明らかになります。しかも他ドライバーと比較されて、優劣が分かります。ドライバーは常に自分の弱点と向き合う必要があり、ある意味非常に酷な時代とも思えます。その中で、自分の得意なドライビングスタイルを保つことが出来るのかというのは非常に難しい点です。

僕のチームの場合は、データ解析で明らかにラップタイムをロスしている箇所は、改善の指摘をします。またチーム側の車両セットアップにもコンセプト (想定した走り方) があります。そのため、ドライビングスタイルをある程度車両に合わせないとタイムが出ないことも多いです。このような状況を考慮すると、ドライバー自身がエンジニアと議論して車両開発する能力が求められている時代だと思います。

一方で、 "立ち上がり重視 vs 突っ込み重視" などドライビングスタイルが違ってもタイムロスしていない場合もあります。この場合は当然ながらドライビングスタイルの変更を頼むことはありません。

(2) レース業界のエンジニアを目指すための準備とは?

こちらもデータエンジニアの仕事を説明していた際に、「こんなの学校では勉強できないよね?」とご指摘頂いたのが起点です。

確かにその通りで、欧州にはモータースポーツ学科、研究室を持つ大学が多数ありますが、国内は東海大学くらいでしょうか・・・?
国内で出来ることを考えると、学生フォーミュラに参加するのはとても良いと思います。走行データを見たり、CFDを使って空力シミュレーションを行う経験が積めます。レース業界には学生フォーミュラ上がりのエンジニアが多いです。

また、レースチームにアポを取り付けて訪問したり、関係者の記事、ブログを読むなどが国内で出来る最初の一歩だと思います。あとは英語も勉強しておいてマイナスにはなりません。

上記は、一般的なレースエンジニア像を前提に書いています。
レース業界のキャリアについては、詳細を別記事で書こうと思います。

(3) モータースポーツの現状と未来について

ここからは最新のレース事情と展望についてのお話です。

(3-1) レース業界に迫る電動化の波

電気自動車のF1と呼ばれるFormula E (FE) は2014-15シーズンに開幕しています。テレビ中継やネットニュースで話題にはなったのですが、実は去年まではローカルイベントでした。そしてシーズン6(2019-20)に世界選手権となり、FIAの基準でF1とついに同格になりました。しかし実は、参戦する自動車メーカに目を移すと、F1 (4社)の倍以上の自動車メーカがFEには参戦しています (9社)。70年以上の歴史がありモータースポーツの頂点に君臨してきたF1が、もはや絶対的な存在では無くなりつつあります。

またドイツのトップカテゴリであるDTM (ドイツツーリングカー選手権)は直近2年でメルセデス、アウディ、アストンマーチンが撤退を表明しました。来季からはBMW1社の状況で存続の危機となり、GT3車両の流用など生き残る方法を模索しています[2]。

この状況は異常です。実は数年前から自動車メーカが集まらずにWTCCが2017年末で消滅するなど兆候はありました。しかし、コロナによって問題が一気に表面化した格好です。歴史ある古典的なレースはその存在価値を見直す時が来ています。F1は2022年からバイオ燃料を使用する事が決まっていますが、EVトレンドの中、特効薬にはならないと思われます (アメリカのIndyはずっと前からバイオ燃料)。

個人的には、ドイツ自動車団体が構想している水素燃料レースの動向が気になります。このレースは動力源に加えてトルクベクタリングという電子制御が組み込まれる事が決まっています。量産開発で電子制御が必須の時代に、殆どのモータースポーツはヒューマンスポーツとして運転アシスト制御機能の導入には消極的です。実現すればこのレースは社会と技術循環を生む事ができるかもしれません。

(3-2) E-sportとモータースポーツ 

世界的な感染症拡大によりレースが開催できなかった期間中に配信されたF1バーチャルレースは配信半日で130万人の再生を達成しました。
国内でも、トヨタを中心にe-motorsportとして活動は広がっています。2020年度のニュルブルクリンク24時間レースは延期されましたが、当初の開催日程に合わせて、Toyota Gazoo Racingとスバルが協力してe-Nurburgring Raceを開催しました[3]。Youtubeでの配信は見応えもあり盛況でした。
これら結果は、e-sportとモータースポーツの相性の良さを証明しています。また、観戦者にとってレース車両が走るフィールド (リアル vs バーチャル) の重要性は高くはないのかもしれません。

(3-3) ドローンレースに見る可能性

自動車レースではありませんが、ドローンレースなどは個人的に興味があります。操縦者はヘッドマウントディスプレイを被り、ドローンに乗った視点で操縦します。ドローンに取り付けたカメラはF1オンボード映像よりも迫力があるように思います。僕はこのイベントで遠隔操作レースの可能性を感じました。

(4) ゲスト対談させて頂いた感想と今後について

西原さんとは2時間ほどお話させて頂いたのですが、フランクに楽しく議論させてもらえました。モータースポーツの未来について一緒に考える仲間が欲しい & 少しでも業界に貢献したいと思いnoteを書き始めました。
そのため今回の機会を頂いたのはとても嬉しく、とても光栄でした。

また対談後に質問内容を改めて反芻して新しく気づいたこともありました。

実は今月もオンラインカンファレンスで、モータースポーツについて発表する機会が貰えるかもしれません。場慣れするためにも挑戦してみようと思います!

スキ、フォロー、コメント頂けると嬉しいです。
今後さらに頑張って書きますのでよろしくお願いします。

[1] https://blog.portf.co/2020/10/11/honda-quits-f1-1/
[2] https://www.as-web.jp/overseas/583518
[3] https://response.jp/article/2020/05/24/334896.html

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