見出し画像

「うらめし同好会」・・・あっという間に読める、超ショート怪談。

深夜のお寺で行われた怪談会。最も恐怖を盛り上げたのは?


『うらめし同好会』

雨上がりの深夜。
お寺で行われた怪談会はとても好評だった。
語り部たちの話は皆、印象的で、
心を震わせ、背筋がぞっとする話ばかりだった。

だが最も観客を動揺させたのは、
最後に司会者が語った挨拶だった。

「皆さん。本日は足元のお悪い中、
怪談『うらめし同好会』にお越しいただき、ありがとうございます。
さて、最後にこの怪談会で
お守りいただきたいルールをお知らせいたします。
たっぷりと怖がりお楽しみ頂けたと思いますが
たった今聞いた怪談話は、すっかりお忘れください。
決して思い出してはいけません。
特に、夜の墓地では・・・」

会場の本堂から帰る道は、墓地のど真ん中を突っ切っている。

御影石の立ち並ぶ間を
淡い街灯の灯りに照らされながら
引きつった笑いの集団が、通り抜けていく。

しかし、人間ダメと言われるとやりたくなるものである。

行列の中ほどを歩いていた男が
隣を歩いてた女性に、意地悪な質問をなげかけた。

「ねえ。今日の話でどれが一番怖かった?」

「止めてよ。そんなこと聞かないでよ!
思い出しちゃうじゃないの!」

その悲鳴にも似た女性の叫びが、
先ほどの話を連想させたのだろう、
墓地のあちこちから次々と本物の悲鳴が上がっていった。

まさに阿鼻叫喚。
涙を浮かべてパニックになる者までいて
観客たちは我先に寺の境内を駆け抜けていった。

誰もいなくなった墓地に先ほどの司会者と語り部が
集まって来た。

「上手く行きましたね」

司会者が手で顔を拭うと目も鼻も口も一瞬で消え
のっぺらぼうになってしまった。

気が付くと語り部たちも皆、のっぺらぼうである。

「今日の怪談は、お客さんが大人しかったけど、
最後にたっぷりと怖がってもらって良かった。ひひひ」

遠くからまだ聞こえている悲鳴の声を聞きながら、
のっぺらぼうたちは、墓場の真ん中で
不気味な笑い声をあげていた。

                  おわり



#朗読 #怪談 #伝説 #恐怖 #妖怪 #不思議 #小説 #可愛い #ショートショート #秘密 #旅 #怪談会 #女性 #心霊スポット #お寺 #阿鼻叫喚 #意地悪 #スキしてみて #習慣にしている事


この記事が参加している募集

スキしてみて

ありがとうございます。はげみになります。そしてサポートして頂いたお金は、新作の取材のサポートなどに使わせていただきます。新作をお楽しみにしていてください。よろしくお願いします。