![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145766176/rectangle_large_type_2_86bbcfdb8178aaf40a2ad2170d33b24f.jpeg?width=1200)
「死者のアカウント」・・・更新はだれが。
7月4日より「めざせ100怪!ラジオde怪談」企画の放送が始まります。8月末まで、毎週放送。はたして何本まで行けるのか。
「清原愛のGoing愛Way!」(SKYWAVE FMにて放送中)の番組内で、めざせ100の怪談をということで、どこまでいけるか分からないけど。猛進中です。
今回はその中から、ちょっと分かりにくい話です。すみません。
・・・・・・・・・・・
「死者のアカウント」
「ねえ、絵麻ちゃん。健ちゃんのSNSアカウントが、
まだ生きてるみたいなの」
待ち合わせたカフェに着くなり、めぐみはピンクのスマホを取り出し私に見せた。
『健ちゃん』とは、めぐみの夫で、私の会社の同僚だった飯島健のことだ。
「ほら。これ・・・」
見せられたSNSの画面には、美しい夕陽の写真が映し出されている。
記事の日付は昨日だ。
「四十九日も済んで、課金されるアプリやサブスクなんかを
解約しようと思って、健ちゃんのスマホを立ち上げてみたんだけど、
今も更新されてるみたいなのよね」
「気味の悪いこと言わないでよ」
「だってぇ。今朝も更新されたみたいなの」
めぐみが画面に呼び出した写真を見て私は凍り付いた。
それは、健と北海道に出張した時、ホテルのラウンジで星空を見ながら撮った写真だった。
その夜、飲み過ぎた私は健と初めて関係を持った。一度限りのつもりだったが、以前から互いに仕事や家庭の愚痴を気楽に語り合っていた事もあり、
ずるずるの不倫が、健が亡くなるまで続いていた。
「絵麻ちゃん。もし健ちゃんの幽霊がSNSをしているなら、アタシ、それでも良いんだぁ。これ、チョーラブラブな写真でしょ。だから恥ずかしいけど削除しないで、アカウントも残すことにしたの。ほらほら見て!」
「!」
ピンクのスマホに、健と二人で撮った写真が次々に映し出された。
勿論、めぐみに内緒で行った場所だ。
沖縄のビーチ、京都の神社、夜景の奇麗な六甲山。
時々、自分の手や影が映り込んでいて、背筋が冷たくなったが
めぐみは特に気にすることも無く写真を見せて行った。
「健ちゃん、写真撮るの好きだったからね」
めぐみは、バッグからもう一つのスマホを取り出した。
黒い革のカバーを着けた健のスマホだった。
そう。確かに健は写真を撮るのが趣味だ。
写真マニアと言った方が良いだろう。
それが二人でいると、写真を撮るのにも気を遣わなければならない。
その分、人目の無い所では次第に大胆になっていき、
ついには、ベッドの中で二人の写真を撮るようになっていた。
最初は嫌だと拒んだ私も、気が付けば健に乗せられ
次第に大胆なポーズをとっていった・・・。
「健ちゃんは、きっといろんな人に見て欲しいんだと思うわ。
だから、幽霊になって、SNSに撮った写真をアップさせてるんだわ。
次は何がアップされるかな。絵麻ちゃんも楽しみでしょ」
めぐみは、両頬にえくぼを浮かべて笑った。
スマホの画面では総会員数が十億人を超えた
SNSのアプリが起動し、私たちの写真を待ちかねている。
おわり
#怪談 #短編 #ショート #不思議 #恐怖 #幽霊 #アカウント #女房 #更新 #不倫 #スマホ #SNS #めざせ100怪 !ラジオde怪談 #清原愛のGoing愛Way ! #SKYWAVEFM
ありがとうございます。はげみになります。そしてサポートして頂いたお金は、新作の取材のサポートなどに使わせていただきます。新作をお楽しみにしていてください。よろしくお願いします。